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正義のヒーローは魔法幼女と共に異世界転生を目指して悪事を働く  作者: へるきち


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011. 正義の秘密結社

 持ち家を買った。


 不動産なんて不安定な資産を持つのは主義じゃないんだが。

 自然災害の多発する昨今。土地や建物は当然、車一台だって自分で所有するのはリスクだ。

 台風や豪雨の度に、「家の屋根飛んじゃわない?」「車が水没しちゃわない?」なんて、ビクビクするのはストレスでしかない。

 持たざるモノの強みというのもあるのだ。

 しかし、いっそ突き抜けてしまえば、話はかわって来る。


 ビルまるごと一本買った。


 上京した初日、六本木ヒルズで、「ここから見えるビルの一本くらいは、いつかは我が手中に!」なんて野望を抱いたのは遠い過去の事。すっかり忘れ去っていた夢か幻。

 まさか、実現する日が訪れようとは … 。

 俺と魔女共で出資金を出し合い、会社を興したのだ。表向きは、オフィスビルの経営。

 しかしてその実態は! 正義を執行する秘密結社である。


 向ヶ丘遊園駅の北口に、新築のビルがひとつ浮いていたのだ。

 オーナーが、爆破テロで帰らぬ人になったのだけど。遺産を相続する家族も居らず、黒い金で建てたものだそうで、どこも手を出せず。

 魔女共の戸籍をどうにかしてくれた脱法弁護士の伝手でその道のエキスパートを集め、この世の魔法である法的手続きを駆使し、俺達のものにしたのだ。ついでに、魔女共が溜め込んでいた、真っ黒な現金もロンダリングした。

 ビルには、そのプロジェクトに参画してくれた、弁護士、司法書士、行政書士、会計士、税理士、宅地建物取引士、といったあらゆる士業のオフィスに入居して貰った。あとついでに、美容師にも。

 このビルは、現代社会における正義の暴力の塊なのである。


 ビルの屋上にあるペントハウス。それが、俺達の家だ。

 これで、どんな異世界エージェントがやって来ても大丈夫。大型犬だって飼えるぞ。

 魔女共が、ユニコーンやケルベロスを捕獲して来ても大丈夫だ。

 実際に飼ってるのはフェニックス弐号機って名のニワトリだけど。

 この辺は、オフィス街だから、早朝に鳴いても問題ない。俺は、どうせ起きてるし。


 ちょうどいいタイミングで、というか。

 俺の派遣契約は、9月末で終了する事になったので、夏休みを延長して、きっちり有給休暇を消化してやる事にした。「アパートが爆破テロで吹き飛んだ」って言ったら、さすがに正社員も文句を言わなかったよ。ついでに無給休暇(単なる欠勤だな)も駆使して、9月末まで夏休みだ。

 10月からの派遣先は、まだ決まっていない。


「どうにかして次の派遣先を新宿に出来ないもんかな?」


  魔法でなんとかならんの?

 魔女共に相談してみる。新宿が勤務地ならば、ここからは小田急線で一本だ。

 浜松町辺りになってしまっても、まあなんとか通えるけども。

 片道1時間は必要だ。昼休憩も含めれば、毎日3時間を無駄に持っていかれる。

 とんでもない、人生の損失。


「うーん。そうだなー、新宿区以外の22区を焦土と化す?」

「大規模なインフラ需要が発生して仕事が忙しくなりそうだな?」


 はっはっは、大胆な発想の転換ってやつだな?

 実現困難な要件の案件を引き受ける時には、そういう発想の転換が大事だね。

 システムエンジニアも、魔女も一緒だねー。

 俺は、突っ込まないからな?


「それは、さすがに冗談だよ? 無理だからね」

「可能ならやんの … ?」


 こういう時こそ、発想の転換だよな。

 通勤したくないのだからー。

 働かない! 違うな。


「ジャスティス・ポイントって、換金できないの?」


 チャットで、異世界エージェントの方のフェニックスに聞いてみる。


「君は、神聖なるジャスティス・ポイントを何だと思っているんだい!?」


 なんか怒れられたわー。


「たぬぽんポイントになら交換できるよ」


 なんでだよ。ジャスティス・ポイントは、神聖なんじゃないのか?

 どこのローカル商店街のポイントだよ、それ。

 

「1万ジャスティスを、1たぬぽんに交換できるよ。1たぬぽんは、0.2円相当の価値かなー」


 安っすい! 俺の、ジャスティス・ポイント安っすい!

 いや? ジャスティス・ポイントがジンバブエドル並のインフレという事も?


「俺のジャスティス・ポイントって、今いくらあんの?」

「321だよ」


 ジャスティス・ポイントの価値が分からねえよ … 。


「何を騒いでいるの? うるさいわよ」

「働きたくないんだよ … 」

「あんた、私達の親でしょ? クズは困るんだけど。労働は国民の義務でしょ?」


 そういえばそうだった。俺、こいつらの親だった。そんな設定もあったわー。忘れてたわー。

 忘れてたといえば、もう9月だった。小学生の夏休み終わってるんじゃん。


「お前らこそ、義務教育はどうした」


 義務教育というのは、教育を受ける義務じゃなくて、受けさせる義務だ。

 親としての、義務を果たさなければ! 俺自身が夏休み状態だから、完全に忘れてた。


「は? 通ってるワケないでしょ? 戸籍が無かったんだから」

「え? あ、そうか。あれ? お前らランドセル背負って何してたの? コスプレ?」

「小学校じゃないところへ通ってたのよ。世間の目を欺くために、小学生に変装してたの」


 どこへ通ってたの? まさか、魔法学校とか? 謎の0番線ホームから行くの?

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