幼馴染という関係②
今回は4000です。
少し短いかもですが僕にしては頑張れた方なので是非読んでみてください!
「どうしたんだ皆勢揃いで。」
「そ、それより何で悠華が紫陽と一緒にいるの?」
乃亜がそう聞くと紫陽は目を逸らした。
「あー、まー色々とあってね。ちょっと仲良くさせてもらってるんだ。」
「ほほーん。」
ニヤっと笑う乃亜に紫陽は明らかに嫌そうな顔をする。
乃亜、何だかいたずら好きなんだよな。普段誰より大人なくせしてこういう時は子供っぽい。
紫陽は諦めたように僕の方を向いた。
「それで、お前らはどうしたんだ?帰る方向こっちじゃないだろ?」
うわー。1番されたくなかった質問を、それを馬鹿にされたもんだからつい露骨に肩を震わせてしまった。
いや、やめてくれよ。それも何で僕なんだよ。こういう時嘘つかないタイプなんだよ。本当のこと言うって言ってもめっちゃ答えづらいんだから。困ったもんだと思って乃亜の方に助けを求めようとするが、案の定乃亜はニヤニヤと笑っている。
「えっと、最近ここら辺に美味しいパンケーキ屋さんができたらしくて。」
そこで僕らの間に救世主和希が割って入った。
ナイスフォロー和希。その横で乃亜はつまらなそうに眉を顰める。とにかく助かって本当に良かった。
しかし、紫陽は案外すんなりと信じてはいなかった。
「ふーん、珍しいこともあるもんだな。」
げっ。と僕はそこで気づいた。乃亜はまだしも僕と和希は放課後わざわざ家と違う方向に行ってまでパンケーキを食べようとすると言うのは、昔から一緒にいる紫陽としては物珍しく疑わしいことなのではないかと。質問をどうにかしのげればいいと思っていたが甘い考えだった。どうしよ。
にっこり乃亜さんを横目に僕らが黙りこくっていると、紫陽は一度首を傾げ「それじゃーまたな。」とあっさり引き下がり、悠華に合図したので、僕らは恐怖は失せ、代わりに物凄く好奇心が昂った。学校ではほぼ接点がない彼らが放課後、2人で集まって何をするのか。それも2人となかなか関係のある僕らにとっては元々その状況が面白すぎたぐらいにして、それがこれから動こうするというので好奇心が恐ろしいほどに湧いてきたのである。
「ねー。ちょっと待ちなよ紫陽。これから何すんの?暇なら私達と一緒にパンケーキ食べよ?まー、どうしてもいけない理由があるって言うのならしょうがないけど。」
やはり乃亜はこんな時すぐに行動に移す。本当楽しそうにこんなことをよくやるな、僕もワクワクしてるけど。
紫陽は振り向きすぐ近くまで乃亜が近づいてきていることに気づき驚く。乃亜、やっぱ悪知恵の働く恐ろしいやつだ。質問の仕方も行動も明らかに逃す気がない。
紫陽はいつも通り乃亜にたじたじしている。それを見兼ねた悠華が口を出す。
「行きたくないから行けない。それだけ、それで良いでしょう?」
乃亜はそんなのに負けるようなやつじゃない。またいつも通りニコッと笑うと
「悠華ちゃんはしょうがないなぁ。でも紫陽は、さ。今まで色々借りがあるわけじゃん?何も理由なしに断られるってのも腑に落ちないなって。」
高圧的にそんなことを言う。
本当に悪知恵の働くやつだ。これでは悠華はもう口出しはできない。乃亜のやつ今日はいつもに増してキレが良いな。
「うーん。」
乃亜と悠華から選択を迫られた紫陽は1つ唸ると次に乃亜、悠華、乃亜、悠華と交互に見て、そして、溜息をついた。
「ごめんだけれど、秘密だ。皆には伝えたいところだけれど、僕にもちょっと譲れないものだってあるからね。それじゃまた学校でな。」
紫陽と悠華は東2出口の階段を上がっていく。
その姿が見えなくなるまで、紫陽らしくない態度に首を傾げながら僕らはその背中を見送った。
本当にどうしたんだか。そんなに秘密にしなければならない話があるんだか。それとも、
「あの2人付き合ってる?とかね。」
乃亜がそんなことを呟く。
そうだよな。そう思ってしまうよな。
悠華も珍しく静かだったし。
僕らは少し固まって、数分。やっと現実に引き戻された。
ぽわわーんとした頭のまま。僕らは何故だかパンケーキを食べて帰ろうと言う結論に至り、歩いた。いつのまにか「newopen」と書かれた旗が目の前に、そしておしゃれな店がそこにあった。
吸い込まれるようにそこに入り、僕らは席に座った。
「何だか、珍しいこともあるもんだね。」
乃亜はストローで砂糖をたくさんに入れたコーヒーを飲みながら僕らに話を振る。
「うーん。悠華ちゃんにしては静かだったよね。いっつもはわちゃわちゃ話すタイプなのに。」
「やっぱり紫陽がいるからじゃないか?可愛いとこを見せたい、みたいな。」
「悠華はそんなタイプかな〜。だとしたら可愛いけど。」
止まらない話に久しぶりの楽しさを思い出す。こんなこと、昔にもあったな〜と。
僕と、女の子2人。よく公園で遊んだ。
2人、2人。それは乃亜と出会うよりもっと前の思い出な気がして、何だか不思議な感じがする。
「壱龍?どうしたの?」
「考え込むなんてらしくないよね。」
僕の顔を覗き込む2人。そんな彼女らに僕はつい、顔を赤くして目を逸らすのだった。
生徒会にて。
今日は自由活動の土曜日。最近サボってしまったし今日はちゃんとやろうと決心し、乃亜と和希を誘い残った仕事をやることになった。
「和希〜、そっちの資料取って。」
「分かった。あのさ壱龍、何こっそりサボってるの?」
机を囲むように配置された椅子。三者三様に活動する。ように見せかけた僕はこっそりサボっていたのだが釘を刺されてしまった。
「あ〜、本当だ。今日はちゃんと活動するんじゃなかったの?」
「いや、まあな。ちょっと外の景色を見てただけだ。」
2人からの冷たい視線から顔を逸らしながら青空を眺めていると急に
バンっ
とドアが開いた。
僕らは入口の方を向く、そこには苦しそうに肩を上下させている雫先輩がいた。
「3人!良かった〜。ごめん!今日外の予定が急に入ったんだけど参加できる?ちなみにもしかして、日向や壮助は、いない感じ?」
「あー。いないですね。いつも通り心愛先輩はいないですし、ついでに悠華もいません。」
僕の言葉に悠華先輩は何故か凍りついた。そして彼女は汗をだらだらと垂らしながら僕らに恐る恐るまた尋ねた。
「悠華ちゃんもいないの?いないの?」
「あ、はい。まあ。悠華がどうかしたんですか?」
「いや悠華ちゃんがどうとかではないのだけれど今日の用事は5人必要でさ。ちょっと困ったな〜って。」
雫先輩は珍しく焦った様子だ。
「それは、どんなイベントなんですか?」
誰も手を動かすことはできないような緊張感が生徒会室に走る。誰かが唾を飲み込む音がはっきりと聞こえた。
「今日は。地域の祭りの運営があるの。」
トーンの低い雫先輩の声。その声には確かに怖さがあったのだがあまりの『なんだよ。そんなことか」感に皆リアクション取れなかった。
「そ、そうなんですね〜。それはどうしても5人じゃなきゃ足らないんですか?」
「まー、そうだね。アクション劇をやるみたいな話だから役的にどうしても5人必要なんだよね。」
急にふと来た安心感から、また緊張感に包まれる室内。今日ということにやっと実感が生まれてきて僕らにも少しずつ焦りが生まれてきた。
「あの、その、生徒会の人じゃなくても良いんですよね。」
勇者和希はこういう時は意外に落ち着いていて頼りになるタイプで、打開策を提案してくれそうな雰囲気がある。このメンバーなら大丈夫そう。という思いが戻ってきてまた生徒会室は安心感に包まれた。
「そうだね。誰でも良いらしいけれど、誰か頼りになる人なんているかな?」
「この学校に壱龍くんのお兄ちゃんがいるんですよね。」
あ、え。まじで?
乃亜も唖然としている。
誰か呼ぶという方向に動くということは分かったのだがあまりにまさかの展開だったのだ。
僕の兄を呼ぶ、それはとてもお勧めできないようなことだったからだ。
松川虎生牙。僕の実の兄にしてこの高校の野球部エースの高校2年生である。
しっかり野球部に入って、それもリーダーをやっているというんだから、なかなかな優等生に思えるのだが、一切そんなことはない。
ボサボサとした髪、濃ゆい髭、メガネをカチャッとやる癖があるくせして目立つ頭の悪さ。
悪いことこそしないがこの高校の変人を順位通り上から数えていくとすると、5本指のうちには収まってしまうようなそんなやつなのだ。それもコミュ症で地位的にはモテそうなくせして彼女いない歴を更新し続けている。とっても変なやつなのだ。
そんな奴を誘うなんて。僕らは知り合いだからこそ良いものの雫先輩からしたらよく噂に聞くヤバいやつと出会ってすぐに一緒に劇をしなければならないのだ。そんなの先輩はいいと思うのだろうか。
「虎生牙くん。ね。来てくれるならいいと思うわ、忙しそうなイメージがあるけれど、今は猫の手も借りたいところだから正直誰でもいいわ。」
うーん。なんだ。あまり乗り気ではないようだ。まあそうだろうな、兄は明らかいつも不審者みたいな感じだし、僕とよく比べられて優等生とやばいやつ兄弟、みたいに言われてるし。
「じゃあそうしましょう。」
断ればいいような気もしたがそれはやめた。なんだかお兄ちゃんが改心するいい機会になりそうな気がしたからだ。それこそこれだけ美人と一緒に活動できると聞けばいくら面倒くさがりな兄でもくるだろうし、皆からの嫌なイメージを変えることに繋がるかもしれない。なんだかんだ僕も結構、兄を心配してるんだよな。生徒会に迷惑はかかるかもだけれど3人は知り合いだし、大丈夫だろう。
「それじゃ、用意しましょう。」
僕が悩む中結論はあっさり決まった。
「お兄さんに連絡入れといて。」と頼まれたので連絡すると、10秒立たず「待ってろ!すぐ行くからな。」
なんて返事が来た。雫先輩パワーすげーな。あの面倒臭がりな兄がこんなにすぐ決断するなんて。僕が何とも心配してなかった祭りのアクション劇。そこであんなことが起きるだなんて僕は想像さえもしていなかった。
この作品を書くにあたってツンデレキャラいるかな?ヤンデレ?それとも何だろうテンプレ幼馴染とか、そんなのもいいのかな?いやテンプレって何だ?なんて考えもしたんですけど結果ヒロインは皆現実味を持たせようみたいな結論に至りました。現実でも声とか話し方とか確かな個性はあるんですけど僕は現実にツンデレいたらどんな感じだろうって想像できなかったので想像力が脆弱なんでしょう( ; ; )まあそれが自分色だとも思っているので、是非これからも読み続けてもらえるとすごく嬉しく思います。