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投げ捨てられた花

王宮で皇后さまのお手伝いをすることになったハナ。

化粧品会社にいたスキルが活かされるのか?

なんの手がかりも見つからないままハナは池を後にした。

『世子様、折角お連れ頂いたのにすみませんでした』

「いいえ、きっと何か見つかるかもしれませんよ。また探してみましょう」

世子様は優しく微笑んだ。


自室でくつろいでいると、何やら外がざわついていた。


ドン ドン ドン 

扉を叩く音がした。

「女人よ、出てきなさい!」


扉を開けると怖そうな兵士たちがいた。

「王様がお呼びだ。ついてこい」


ハナは兵士の後をついて行った。

王宮では不審な女人が歩き回っているという噂が広がっていた。


大きな建物の前に着いた。

「王様、女人をお連れいたしました~」

門を守っている兵士が大声で言った。


扉が開かれると、そこには大勢の大臣たちが勢ぞろいしていた。

緑、青、赤と韓服を着た男性が並んでいた。


その奥に王座があり、王様が座っていた。

ハナは大臣たちの間を歩かされ、王様の前に座らされた。


大臣たちは、物珍しい物を見るようにジロジロとハナを見た。

そして一人の大臣がハナに

「お前は、どこから来たのだ。なぜ、この王宮内をうろうろしている」

威圧的な言葉でハナを責めた。

ハナは泣きそうな気持ちになりながらも

『王様、私はチ・ハナと申します。気が付いたらこの王宮にいて、どうしてここにいるのかわたしにもわかりません』

とか細い声で答えた。


「王妃から話は聞いています。事情が分かるまで王宮内にいてよいでしょう。ただ、勝手に動き回ることは出来ないので、気を付けるように。王妃のそばで、話し相手になっておくれ」


王様は優しい声で言った。


「王様、なりません!こんな素性の分からない娘を王宮内に置くなんて!」

「どうぞお考え直しください」

大臣たちは一斉に声を荒げて口々に言った。


「王妃からのお願いなのだ。暫くの間この娘を皇室が預かることとする」

王様が言った。


大臣たちも王妃様のお願いと言われると反論できなかった。

王様は幼少の頃からあまり丈夫ではなく、今も病と闘っている。

そんな王様を支え、王様の具合の悪い時は皇后様が垂簾政治を行っていた。





ハナは皇后さまの部屋に呼ばれた。

「王様や大臣たちに呼ばれて、驚いたでしょう。私が王様にお願いしたので、安心してお過ごしなさい」

皇后さまが優しくそう言った。

『ありがとうございます。私にできることがありましたら何でもお申し付けください。』

ハナは皇后さまがユミ社長に見えていた。


「貴方のいた世界には、皮膚病を治す薬はあるのかしら?」

少し沈黙の後、皇后がハナに尋ねた。

『はい、色々な薬があります。飲み薬や塗り薬、貼り薬など症状によって薬が変わります』


「その薬を作る事は出来るかしら?」

『作るのは・・・ちょっと難しいかもしれませんが、薬草はわかります』


ハナは化粧品会社で商品開発の時に、様々な薬草を調べたことがあった。


「ハナさん、私と一緒にその薬草を使った薬を作りましょう」

王様はひどい皮膚病に侵されていて、煎じた漢方薬を飲んでいたがあまりよくなってはいなかった。

皇后はそのことをとても心配していた。


『はい、皇后さま。薬草でクリーム・・・あ、軟膏が出来るか試してみましょう』


ハナは早速、部屋に戻り、いただいた紙と筆で必要なものを書いた。


ヨモギ

サクラ

ドクダミ

クロモジ

スギナ

ツユクサ

ゲンノショウコ

ナンテン

カミツレ

ヘクソカズラ


精油

蜜蝋

オイル


思い出せる名前は全部書いてみた。

『この時代にもいくつかはきっとあると思う。お肌のことは、化粧品会社にいた私の得意な分野だけど、医療の事まではわからないなぁ。どこまで出来るかしら』



書いた紙を持って王宮の裏庭に行った。

王宮の庭はたくさんの草花が生えている。ハナのいた時代より緑が濃いような気がした。


『今の時期にあるのは・・・』

裏庭にはヨモギやドクダミ、ツユクサなど色々な草花があった。

ハナは何種類かを摘み、かごに入れて持ち帰った。


作業のためにと用意された部屋で草花の選別をしているところへ、皇后さまが入ってきた。

「こんなに色々と集めてくれたのね」

皇后さまは机に並べられた花を見て関心していた。


「この花は!!!」


急に皇后さまの顔色が変わり、机の上にあった白い花を地面に投げ捨てた。


ハナは急変した皇后さまに驚き


『皇后さま、この花が何か?』

と尋ねた。


「これはカミツレね。これは捨てなさい」

こわばった顔になった。


カミツレはカモミールの別名で、ハナのいた現代では穏やかな香りとリラックス効果のあるハーブティーとして飲まれていた。

ただ、カモミールティーは妊娠中には注意が必要な飲み物である。

早産を引き起こす可能性があるため、妊娠中は摂取を控えた方が良いと言われている。



皇后さまはまだお子様がいない。

お世継ぎを生むことが一番の使命なのだが、以前、一度流産し、その後も中々授からずにいた。



宮中の噂で、カミツレのお茶を飲んでいたことがその原因だったのではと言われていた。






薬草を摘んだハナは、皮膚病のためのクリームを作ることになった。

果たして効能はあるのだろうか?

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