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夜明け

池に落ちて、目覚めたらそこにはジュンにそっくりの世子様が。

夢か現実かわからないままのハナ。

ワン!ワン!ワン!


庭のベンチに座り、遠くの山の景色を眺めていた時、背後から犬の鳴き声が聞こえた。

振り向くと、そこにはふさふさの毛をした真っ白な犬がしっぽを振っていた。


ジュンとユミの家で飼っているサモエドのクルムだった。


「クルム、おいで!」

ジュンが手を広げると大きな愛らしい黒い瞳の顔をジュンの両手に乗せる。

「お利口さん」

ハナが頭を撫でた。


人懐っこいクルムは、ハナにじゃれようと前足を上げた。


大きな体でハナにもたれかかってきた。


ポチャン・・・・・


その時、ハナのポケットから何か落ちる音がした。


「あっ!!」


スカートのポケットに入れていたスマホが水の中へと消えていく・・・・

振り向く間もなく、バランスを崩したハナも背中から池に落ちた。


水の中で、スマホに付いていた青いトンボ玉が、青い光の渦を作っている

ハナは水中に沈みながら、青い光がまるで宇宙のようで、魂が離れていくような感じがした。






どれくらい時がたったのだろう。

遠くから呼ぶ声が聞こえる。


「大丈夫ですか?」


ゆっくりと目を開けるといくつもの覗き込む顔が見えた。


『ジュン君?』

「今、医者を呼んでいるのでそのままで」


ジュンに似ているが何かが違う。

青い韓服を着た青年がハナに話しかけた。


ハナは目だけを動かして周囲を確かめた。

緑の韓服を着た少し年のいった男性や整列している女性たちが見えた。


ハナは飛び起きた。


『何?何?どういうこと!?』


目の前には大きな蓮池と赤い東屋があった。


「池に落ちたのですね。大丈夫ですか?」

『あ、あの、時代劇の撮影ですか?』

『ここはどこですか?』


慌てているハナを不思議そうに見ながらその青年が言った。

「ここは王宮の裏庭です。あなたが池の横に倒れていたので今、御医を呼びました。」


話しかけてきた青年が着ているのは、青い韓服に銀糸の龍が刺繍されていた。

時代劇ドラマをよく見ていたハナは一目で、この目の前の男性が世子様だと理解した。


『撮影スタッフはどこにいるのですか?』

ハナは尋ねた。


「撮影?すたっふ?何のことでしょう?」


その時、少し小走りに慌てた御医が現れ

「世子様、どうなされたのです?」

と尋ねると

「この方がここに倒れていました。少し記憶が曖昧なようです。」


「わかりました。私が診察いたしますので世子様はお戻りください」

そう言って御医が深々と頭を下げた。


世子が歩き出した時、ハナは世子の右の腕を掴んだ。

今はジュンに似たこの青年だけが、頼りなのだと直感した。


袖を掴んだつもりだったのに・・・


ハナが掴んだのは韓服の紐、オッコルムだった。


紐が解けた・・・・


世子の服が乱れた。


辺りは一瞬、空気が止まった。

ハナも止まった。

自分が大変なことをしてしまったのは分かった。


「おい、なんて無礼な!」

宦官がハナを跪かせた。


すぐに、お付きの尚宮が服を直した。

『世子様、申し訳ございません。今は自分がわかりません。私を助けて頂けないでしょうか?』

ハナは本当に申し訳ない気持ちと、状況が理解できなく、不安な気持ちでいっぱいだった。



世子は優しく手を差し伸べて

「お困りの様だから、私と一緒に行きましょう」


と、ハナを立たせてくれた。


ハナは世子の後をついて王宮内を歩いた。

道中、ここは読書をするところ、ここでは音楽を演奏するところ、など説明をしてくれたのだが、今、ハナはそれどころではない。


『どう見ても、王宮。

朝鮮時代?

目の前にいるのはジュン君に似た世子様。

一体、どうしちゃったんだろう?』

頭の中がグルグルと回り、状況を理解するに必死だ。



すると、前から女性の王族らしき人の列が歩いてきた。

ハナは尚宮の列に隠れるように後ろに下がった。


「世子様、どちらへいらしていたのですか?」

とても透き通る声で世子に話しかけた。

「裏庭を散歩しておりました。皇后さまはどちらへ行かれるのですか?」

「ハスの花を見に行こうかと思って、世子様をお誘いしようと思っていたのですよ」

ずっとうつ向いていたハナは恐る恐る顔を上げ、世子の話し相手を見た。


『あ!!』

ハナの鼓動が大きくなるのを感じた。

ジュンに似た世子と話している皇后と呼ばれる女性がユミにそっくりなのである。


『え~~!!

え~~!!

ちょっと、待って。皇后様ってことは、世子様のお母様ってこと???』


ユミによく似た女性が皇后様だときいて、ハナは夢の国をさまよっているのではないかと思っていた。



















目覚めたら朝鮮時代だったハナ。

ジュンに似た世子様と、憧れの上司ユミに似た皇后。

ハナは元いた現代に戻れるのか。

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