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水のほとりで

ソウルで再会したハナとジュン。

自宅でのパーティーに招待されたハナとソラはケンという日本人に会う。



ガラス張りの大きな窓から外を眺めているソラ。

「なんだろう、ハナの言ってたビッグニュースって!?」


アイスコーヒーを飲みながら、スマホの中の写真を見ていた。


カフェのドアが開き、ハナが駆け込んできた。

「ねぇねぇ、びっくりするようなことが起きたんだよ!」

ソラの前に座りながら、少し高揚しているハナ。


「何?昇進でもしたの?」

『違うよ、会ったの。』

「誰と?」

『彼、ジュン君!』

「えっ?ジュン君、日本で会った?」

ソラは目を丸くして言った。


『そう。あのジュン君。しかも、なんとユミ社長の弟さんだったんだよ!』

「え~~!!そんな偶然ってある?」

二度驚いて、飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになっているソラ。


ハナは社長の誕生日パーティーの事、ジュンがピアニストだったこと、今度食事をしようと誘われたことなど、矢継ぎ早にソラに報告した。


「ユミ社長と、ソラさんも一緒に食事しましょうだって。」

ハナはテーブルに届けられた赤い五味子茶を飲みながら言った。


「いいね!いつにしようか?今週末はどう?」

ソラも前のめりでかなり乗り気になっている。

『今、連絡してみようか?』

一人の時だとちょっと気後れしてしまうので、ソラと一緒の方が心強いと思っていた。


ティンティン ルルル~


クラシックの呼び出し音が耳に心地よい。


「はい、もしもし」

少し低めの柔らかい物腰の声が聞こえた。

『あ、あの、私ハナです。今、お電話大丈夫ですか?』

ハナは緊張しながら挨拶をした。

「ああ、ハナさん。こんにちは。僕もお電話しようと思っていたところでした」


「もしもし、こんにちは。私はソラです。お元気ですか?」

隣で聞いていたソラがスマホを取り上げ話し始めた。


「ソラさん、こんにちは。今度良かったらみんなで一緒にお食事をしませんか?」

「はい、喜んで!いつにしましょうか?今週末はいかがですか?」

「今週末、うちでパーティーをするので良かったらいらっしゃいませんか?」

ハナとソラは顔を見合わせ、頷いた。


「はい、ぜひお邪魔させてください。」

ハナがそう言うと、

「良かった。お待ちしています。住所はメールしますね。」

「楽しみにしています。それでは、週末に!」


電話を切って、ハナとソラはソワソワ、落ち着かない感じだ。

ハナにとっては憧れのユミ社長のご自宅に呼ばれたのだ。

ソラもまた、あの素敵な男性にまた会えると思って浮かれていた。



数日後・・・・


鏡の前で何度も服を着替えるソラ。

迎えに来ていたハナは少し呆れながらも一番かわいく見える服をアドバイスしていた。


「これで、いいかな?」

『うん、可愛いよ。黄色いお花みたい』


ソラは淡い黄色のワンピース、ハナは白いブラウスにグリーンのスカートを穿いて行った。



ジュンとユミの家は、ソウルの北側、大きな住宅が立ち並ぶ坂の途中にあった。

大きな門があり、昔ながらの韓屋をリノベーションした豪邸だ。


『ねえ、呼び鈴押してよ』

ちょっと気後れしたソラがハナの背中を押す。

『う、うん』

ハナは少し指を震わせながら、呼び鈴を押した。


ピンポーン


「は~い!どうぞ入って」

ユミ社長の通る声が聞こえてきた。


二人は、キョロキョロ周りを見回しながら、石の階段を上って行った。


「うわ~!凄い豪邸!!」

『うん、すっごく素敵な家だね!』

二人はワクワクしながら歩いた。


芝生の生えた庭に、様々な樹木が植わっている。

白い花や黄色い花が咲いていた。


母屋の前で二人を手招きしているジュンが立っている。


『今日は、お招きありがとうございます。』

ハナが持っていたお花を手渡した。

「あ、ありがとう。ソラさんもお久しぶりです」

ジュンが軽く会釈をすると

「ジュン君、また会えて嬉しいわ。」

ソラも持っていたワインを手渡した。


二人は室内へ通された。

そこにはユミ社長の他にも数名座ってくつろいでいた。


奥のキッチンでは、お手伝いさんたちが忙しそうに準備をしていた。


『ユミ社長、今日はお招きありがとうございます。こちらは、友人のソラです』

ハナはソラを紹介して、深々と頭を下げた。

「ユミさん、いらっしゃい。ソラさんもゆっくりくつろいでいってね。」



「良かったら、家を案内しましょうか?」

ジュンが二人に話しかけた。

「はい、ぜひ」

二人はジュンの後に続いて、部屋を見て回った。

どの部屋も、センスの良い調度品に溢れていた。

一つ一つが洗練されていて、高級品なのが分かる。


「ここは、姉の部屋です。」

素敵なベッドに机、壁には螺鈿細工の家具が置かれていた。


大きな窓から見える庭には池があり、噴水もあった。


ハナはふと、置いてあった鏡に目が留まった。

『あ、先日渡したノリゲが飾ってある』

ユミ社長が大切にしてくれているのが嬉しかった。


リビングに戻った3人は、みんなで食事をした。

「二人に、紹介するのを忘れてた。」と言ってジュンは一人の若い男性を呼んだ。


「この前、話した二人組だよ」ジュンがその男性に日本語で話しかけている。

「こんにちは。私はケンです。日本人です」

少しおぼつかない韓国語で話しかけてきた。

「ケンは日本に留学していた時の友達なんだ。あの日、二人と別れてからケンに会って、二人の事を話していたんだ。」

ジュンはケンの肩を抱きながら、言った。

ケンは背が高く少しやせ気味で、眼鏡姿が知的な感じを醸し出している。


「こんにちは。初めまして私はハナです」ハナは日本語で話しかけた。

「こんにちは、私はソラと申します」ソラも覚えたての日本語で挨拶をした。


4人はソファに座り、乾杯をした。

日本での出来事を話したり、スマホの写真を見せ合ったりした。


パーティーの途中で、ジュンがピアノを弾いた。

ケンはバイオリン専攻で、二人の演奏をみんなに披露していた。


「二人とも、カッコイイね!」ソラはすっかり二人のファンになったようだ。

ハナは二人が奏でる音楽が綺麗で少し儚げで聴き入っていた。


「庭に出てみませんか?」ジュンが二人に話しかけた。

『はい、素敵なお庭ですね。』

4人は庭へ行き、咲いている花や樹木を見た。

庭には、ジャスミンやバラなど色とりどり花が咲いている。

ジュンはとても良く植物の事を知っていた。


池の周りにある白いベンチに座ってお喋りをした。

夕日が遠くの山の稜線を赤く染め、それはそれは綺麗な景色だった。
















ジュンの自宅を訪れたハナとソラ。二人に運命の出来事が待っていた。

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