祈り
ユミ社長が児童養護施設をオープンさせハナはそこのセンター長になった。
王宮の世子様や皇后さまは未来に繋ぐ花壇を作る。
ユミ社長は会社を興すとき、両親に大反対されていた。
「化粧品会社なんて!折角医大で勉強したのにもったいない!」
病院の跡継ぎにと考えていた母親に猛反対されていたため、自分の力で会社を始めたのだった。
今では会社も大きくなり、祖父のグループ会社として立派に成長した。
児童養護の分野へ乗り出すことは、病院長をしている母親も応援することになった。
祖父や父親も全面的に協力してくれた。
ハナは無事に保育士の資格に合格した。
勉強中も会社へ行きながら児童養護施設のボランティアや保育園でボランティア活動をしていた。
ソラはイラストレーターの仕事をしながら、一緒にボランティア活動に参加し、休日には子供たちに絵を教えたりしていた。
ジュンも一緒に行ったときには、ピアノを弾いてあげたり、子どもたちに教えたりしていた。
ジュンが子供たちに優しくピアノを教えている姿を見て、ハナはジュンの事が益々好きになった。
「ハナさんは本当に子どもたちが大好きですね」
『はい、私、子どもたちが笑っている姿が大好きなんです。瞳がキラキラと輝いて希望にあふれた笑顔でいっぱいにしたいんです。』
ジュンはそう言うハナのキラキラした瞳を見ていた。
ジュンもまたハナが子どもたちと接する姿を見てハナが愛おしかった。
王宮では、世子様は王妃様が生んだ王女を本当の妹の様に可愛がっていた。
世子様は以前ガラス工房で作ったガラスの輪をノリゲにした。
「皇后さま、これは以前私が瑠璃工房で作ったものです。ノリゲにしましたので皇后さまどうぞお使いください」
緑のガラスの輪に水色から深い青のグラデーションの糸が結ばれているノリゲを皇后にプレゼントした。
「まぁこんなすてきなノリゲをありがとう。一生大切にするわ」
皇后さまはノリゲを受け取り、仲の良い世子様と王女様をみて微笑んだ。
「貴方たちの事は私が生んだ実の兄妹だと思っていますよ」
皇后さまは心の中でつぶやいた。
「裏庭の花壇を一緒に手入れしましょう」
皇后さまは世子様と一緒に裏庭に行った。
裏庭はハナが草花を植え花壇を作ったところだ。
ハナのいなくなった後、二人は良くここへきてお花のお手入れをしていた。
「季節が順に巡るように、春夏秋冬にお花が咲くようにしましょう」
「そうですね。いつ来ても咲いている花があるのは良いですね」
化粧品を扱う部署にいたハヌルも良く花壇に来てはお花の手入れをしながらハナの事を思い出していた。
「ハナさん、元気でやっているかな?」
世子様のお付きの兵士はハヌルが時々さみしそうにしている姿を見て、とても気になっていた。
「ハヌルさん、これ」
照れ隠しでぶっきらぼうに手を差し出した。
握られた手の中に卵のような形をした丸いガラスの球があった。
「以前、世子様と一緒に瑠璃工房で作ったんです。ハヌルさんに差し上げます。文鎮にでもしてください」
いつかハヌルに渡そうと思っていて中々渡すチャンスがなかったのだが、勇気をだして渡した。
「私に!?あ、ありがとうございます」
ハヌルは少し驚いて、はにかんで笑った。
児童養護施設のオープンの日。
大勢の人がお祝いに駆け付けた。
「今日からここで新しい施設がオープンします。一人でも多くの子どもたちが幸せになるようにぜひ皆様もお力添えをお願いします。」
ユミ社長が挨拶をした。
ハナは施設のセンター長を任された。
『まだまだ未熟ではございますが、先人の方々の意志を次いで一生懸命務めさせていただきます』
ハナが挨拶をした。
オープン記念イベントが終わって、ハナとジュンは王宮の横の石畳の道を歩いてた。
「ハナさん、これまで色々な事があったけど、これからも一緒に歩んでいきましょう」
並んで歩いていたジュンとハナは自然と手を繋いだ。
『ジュン君の未来も、ずっと隣にいたいです』
ハナも答えた。
ジュンはピアニストとして世界中を回ることが決まっていた。
「僕はいつも帰ってくる場所が出来たことが嬉しいんだ。ハナさんがいつも子供たちと笑顔で過ごしてくれていれば世界中どこにいたって幸せだよ」
『うん。一生懸命、子どもたちを幸せに出来るように頑張るね。ここでジュン君の帰りを待ってるね。』
「王宮の裏庭が綺麗らしいよ。行ってみよう」
ジュンが言った。
ハナは自分が植えた草花はどうなったかな?と思っていたが日々が忙しく訪れることはなかった。
王宮の裏庭に着いた。ハナはとても懐かしかった。
通いなれた建物の脇を抜けると、石の道があり、その両脇には小さな花が道を作っていた。
道をたどるとそこには花壇があり一面、草花が植えられていてとても美しく整備されていた。
『わぁ、綺麗!』
ハナは感動していた。
自分たちが植えた草花があった。
世子様と一緒に植えた樹木も大きな木になっていた。
『きっと、世子様や皇后さま、ハヌル達がここを大切にしてくださってたんだわ』
みんなの息吹が感じられた。
ハナは自然と涙があふれた。
「ハナさん、どうして泣いているの?」
ジュンがびっくりして問いかけた。
『嬉しいの。ここがこんなに綺麗でみんなに愛されている場所だと思ったの』
ハナは王宮の日々を懐かしんだ。
過去と現代に確かな繋がりを感じていた。
いつまでもこんな風に綺麗な場所であり続けますように。
ハナは心の中で祈った。
==完==
自分が植えた花壇を大切にしていてくれたことが嬉しかったハナ。
過去から未来へ受け継がれていくものの大切さを知った。