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夢のあと

ハナの残した本を頼りに、未来のために様々な活動を行う皇后さまと世子様。

一方ハナも二人の功績を知り、自分が出来ることが何かを模索し始めた。


ジュンは釜山でのコンサートを終え、済州島へ向かった。


済州島のコンサート会場までレンタカーでドライブした。

エメラルドグリーンの海が美しかった。


働く人々に丘に咲くみかんの白い花がもうすぐ終わり、夏には木に沢山の実をつけると聞いた。

ジュンは、なぜだかとても充実した気分になった。


済州島の名物のタチウオや黒豚など観光客や地元の人に愛されるグルメも満喫した。

お腹の満たされたジュンはお店の人たちの笑顔になぜだか勇気づけられた。




退院したハナはリハビリに励んでいた。

病院の帰りには図書館によって、色々な本を読んだ。


『私がいなくなった後、皇后さまと世子様、ハヌルたちはどうしたかな?』


詳しく歴史が書いてある本をいくつも読んだ。

王様がお元気になられて、いくつもの善政をされたという事が書かれていた。

皇后さまの事も書かれていた。

内助の功で王様をお支えした徳のある王妃だと書かれていた。

児童養護施設や保育の基礎を作られたと記されていた。

そして王女様がお一人生まれたことが書いてあった。


『皇后さま、お子様が生まれたんですね。本当に良かった』

ハナはとても嬉しかった。


王様や世子様が行った全国への農業改革や産業改革の事も書かれていた。

改革は世子様が王様になられた後も続いていて、民の暮らしが随分と改善されたと書いてあった。


『世子様も立派にお役目を果たされたのですね。ありがとうございました。』


懐かしく愛おしく世子様を想った。






王宮に調査人が続々と戻ってきた。

いちばん最初に戻ってきたのは、利川へ行っていたグループだ。


調査人の話では利川はお米作りと陶磁器作りが適しているということなので、田んぼの整備や窯元への支援を始めることとした。

地下水を吸い上げ田んぼに使えるようにする設備も考えた。


元気になられた王様と世子様を中心とした政策が次々と行われていった。

争っていた大臣たちもそれぞれの得意分野を分業し、国策へ尽力した。

しかし、裏では自分たちの利権を手放すことはなかった。



王様の体調が良くなったことで、ハナが作ったクリームを王様は毎日愛用していた。

尚宮や女官、兵士たちにモニターになってもらったおかげで、安全に使うことが出来た。

お肌の調子が良くなったと評判になり、欲しがる人が多かったため、皇后さまは、クリームや化粧水などを作る専門の部署を設けた。

皇后さまはハナが残したハーブティーの袋を大切にしまっていた。


児童養護施設を設置するにあたり、保育を任せる人材を集め、教育を行った。

主に子育て中の女性たちが多かったが、若い人から高齢の男女まで広く全国で行うことにした。




ハナは図書館で本を読んで自分も二人の意志を引き継ぎたいと考えた。

まずは保育士の資格を取ることにした。

そして健康のための知識をもっと知りたいと思った。



勉強をしながら、児童養護施設へのボランティア活動も行き始めた。

ハナはユミ社長に会いに行き、一緒に参加してほしいと伝えた。

「以前からずっと興味があったの。忙しくて中々行かれなかったけど、ぜひ一緒に行きましょう」

ユミ社長は二つ返事でオッケーしてくれた。


児童養護施設では、子どもたちと一緒に遊んだり、洗濯をしたり、食事の配膳をした。

子どもたちはすぐに懐いたが、中には輪に入れず一人ぼっちでいる子どももいた。

そういう子にもユミ社長とハナはいつも笑顔で接した。

幼い子どもたちの眼は希望できらきらと輝いていた。

ユミ社長の笑顔は慈愛に溢れていた。



何度目かのボランティアの帰り、ユミ社長は会社で本格的に児童養護の分野へも取り組みたいと言った。

『私にできることがあれば、お手伝いさせて下さい』

ハナはユミ社長と一緒にやれば必ず良い結果になると確信していた。



ジュンが全国ツアーを終えてソウルに戻ってきた。

「ハナさん、お土産話が沢山あるから一度お会いしましょう」

ジュンからメッセージが来た。

『私も話したいことが沢山あるんです。』

ジュンとハナはソウルのカフェで会うことにした。



「ハナさん、これ、お土産」

ジュンは大き目の紙袋をハナに渡した。

『こんな大きな袋を?』

ハナは袋の中を見た。


ジュンは全国を回りながら、特産物や伝統工芸品などや小物雑貨など様々な物を買っていた。


「行く先々で、ハナさんを想いながら買いました。現地の人たちの人情に触れてとても心が豊かな気持ちになりました」

『ジュン君、こんなにいっぱいありがとう。全国を旅してどうだった?』

ハナはジュンに尋ねた。

「うん、どの地域もそれぞれの特徴があって、土地の風土を生かした生産物や産業が栄えてて面白かった。どの地域へ行っても、みんな、人々が親切で一生懸命暮らしている姿が素敵だった」

そう話すジュンの顔をみながら、世子様を思い出した。


『世子様、あなたが行った政策が実を結んでいます。今、ジュン君がその軌跡を歩いています』

ハナは心の中でそうつぶやいた。


袋の中に金色の豚の貯金箱があった。

『これは?』

ハナが尋ねると

「ああ、これは釜山に行ったとき海東龍宮寺で買ったんだ。願い事が叶うと言われているお寺だよ」

『ジュン君は何をお願いしたの?』

「欲しい物とかはないから、世界平和をお願いしたんだ」

『わたしも欲しい物はないから、お願いごとをするときはいつも世界中が平和に暮らせますようにってお祈りするの』


二人は見つめあって笑った。





























皇后さまの意志をついで、児童養護施設にとりくむユミ社長とハナ。

世子様の軌跡を辿るジュン。

未来へ一歩ずつ進んでいく。

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