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悪役令嬢は異世界でラーメン屋台を始めることにした  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
【第二部】

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第二十八話:泳がせ過ぎでは……?

 クラウスは……ゼノビアと共に、隣国から来た悪女と言われる私を追っていた。


 その事実を知った瞬間、ソファから立ち上がった私は本能で逃げようとする。


「待って、フェリス!」


 待つなんて無理!

 相手は特級魔法の使い手なのだ。

 勝機があるとしたら、先手必勝だけだろう。


 部屋を飛び出し、裏口から家の外へ出ると、すぐに転移魔法を行使。


 転移した先はサン・マリーナ!


 トロピカル感溢れるフルーツがお店の軒先に並び、ブーゲンビリアが咲き、陽気なリズムの音楽が聞こえてくる。


 白い歯が輝かしく、筋肉美に溢れるクリスと出会った場所! さらには彼が命懸けでピアと私を守ってくれた海が広がる地でもある。


 あの時、助けたのは隣国の悪女の使い道を思いあぐねていたから……?


「フェリス!」

「!」


 やはり特級魔法の使い手!

 追いつかれてしまう。


 慌てて転移した先は……南部の海に面した港町、ニーチェ。


 この町で不思議なオーラを持つ、人智を超えた雰囲気のシャインに出会った。


 新参者に手厳しい町の人に困惑したところを助けてくれたのがシャイン。彼が飲む初めてのお酒。お酒により、新参者を警戒する町の人達と打ち解けた。そこまでした理由は……。


「待って、フェリス!」


 次に転移した先で見えるのは、アルシャイン国の南部でよく見られる建物。白壁に鮮やかなオレンジの屋根。窓辺を飾るのは、ブーゲンビリアの花々――ポアラン男爵の領地だ。


 ここに戻るのは危険だった。

 何せこの地で私は攫われたのだ。


 ポアラン男爵がゼノビアからどれだけきつ~いお仕置きを受けたのかは分からない。それでも領地の自治は領主に一任されている。いくらゼノビアが国王陛下の命を受けているにしても、ポアラン男爵への干渉は限定的なはず。変わらずここはポアラン男爵の領地であり、彼が目の前に現れてもおかしくない。


 そんな場所にあえて転移した理由は一つ。ここに私が転移するとは、さしものクラウスでも想像できないはず。それに私は……これ以上の遠方への転移はできない。本当に近場への転移で、あとは魔力の温存が必要だ。


 何せ身一つでここまで転移してしまった。ピアとエルに連絡するにしても、魔法を使うことになるだろう。


 建物の影に隠れながら、通りの様子を確認する。


 ビタミンカラーの装いをした半袖の町の住人が、楽しそうに行き交っていた。そこに混じる、日焼けを意識した長袖の装いの旅人。帽子を被った軽装の男性は、その多くが旅の商人たちだ。


 ガラガラと走っていく馬車。

 とまった荷馬車から荷物を下ろす人々。


 いない。

 クラウスの姿はない!

 巻くことができたんだわ……!


 安堵し、でもこれからどうするかと考えることになる。


 少し頭を整理したいので、路地に沿って進んでいくと――。


 小ぶりの噴水がある小さな広場に到着した。ブーゲンビリアの花が咲き誇るパーゴラがあり、その下にベンチもある。


 トコトコとそこへ向かい、腰を下ろした。


 こんこんと清流を噴き上げる小ぶりの噴水を眺めながら、改めてクラウスのことを考える。彼は、私との出会いは、バーベキューとローストの発祥の地ローストヴィルになるはずだったと話した。そして私が忽然と姿を消したことを知っていたのだ。


 つまり。


 あの日。


 エルと私は美味しく鴨肉のローストを食べ、デザートを楽しもうとしていた。そこに突然現れた隣国の悪女を探すアルシャイン国の追っ手。その追っ手は……ゼノビアだったのだ。そして彼女を護衛するクラウスも当然その場にいた。


 当時は今より、先手必勝で動けたと思う。しかも土地勘もないから、行き当たりばったりで転移したのだ。さしものゼノビアとクラウスも行き先を掴めず、すぐには私達の前に現れることはなかった。


 でも。


 休憩所で酔っ払いに絡まれている時。ゼノビアは助けてくれたのだ。追っ手であるはずなのに。


 その理由は……理解できない。ジョーンズ教授としてクラウスを動かし、私と接触させたのも、どんな意図があってのことだったのか。


 すぐには捕えず、この国で私が何をしようとしているのか把握するため、泳がせたの……?


 泳がせた。


 泳がせ過ぎでは……?


 そこで噴水に、一羽の純白の鳩が舞い降りる。あんな真っ白な鳩を、自然で見かけるのは珍しい。


 そんなふうに他のことに意識をとられていたから。


 突然、全身が重たく感じたが、もう手遅れだった。


「フェリス。ごめん。君にこんな魔法を使いたくなかった。でも君は上級魔法の使い手。転移魔法ですぐに姿を消してしまうから……」


 背後から聞こえる耳通りのいい爽やかな声。

 ……クラウス!


 今、私にかけられている魔法。

 これは……多分、重力を高める特級魔法だ。

 しかも局地的なもの。私の周囲だけ、重力が……。


 全身に感じる圧で身動きは勿論、声も出せない。


「頼む。フェリス。僕の話を聞いて欲しい」

お読みいただき、ありがとうございます!

次話から視点がクラウスに変わります~!

いろいろな謎が解かれていきます♪

ということで続きは12時頃公開予定です~

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