第二十三話:のりのり
「順番に出すので並んでください〜。お代は入りません! この村を訪問した記念の、皆さんへの贈り物です!」
声を張り上げ、伝えると、早速、一人目の冷やしラーメンを準備する。
何とか夕食時に合わせ、冷やしラーメンを用意出来た。村人はみんなどんな東方料理を作るのかと、興味津々で、仕込みの時から見守ってくれている。
「仕込み、完成しました!」とピアが告げると、拍手喝采だった。
冷やしラーメンの提供がスタートする前から、みんなとの一体感が半端ない! しかも麺を茹でた後の、湯切りパフォーマンスでは、掛け声をかけてくれるのだ。気分が乗った私は、つい前世で知るラーメン屋さんのノリで「はいっ、冷やしラーメン、出まーすっ!」と元気よく言ってしまう。すると乗っているのはエルもピアも同じなのか「「はいっ、冷やしラーメン出まーすっ!」」と唱和してくれるのだ。
ラーメン屋台を始めてこんなに盛り上がったことがあるだろうか!?という盛り上がりの中、村人全員に冷やしラーメンを提供できた。
今、村の広場には、沢山のテーブルと椅子が並べられ、そこに座り、みんな冷やしラーメンを楽しんでいる。そして初めて食べた冷やしラーメンに対する感想は……。
「美味しかったわよ、フェリスさん! このメンの歯応えもとってもいいわ。スープの味も奥深いのだけど、さっぱりしていて。今の季節に丁度いいわよね。私も作りたくなるけど、スープを作るだけでも大変! これは食べさせてもらうのが一番ね」
そう言ってマーガレットおばあちゃんが笑えば、マークは……。
「今日あったいろいろなことを忘れる美味しさですよ。なんて旨さだろう。これはきっとゲンさんもシノブさんも。アントニーさんも食べたかっただろうな」
厳密にこの時代では、東方で蕎麦やうどんはあっても、ラーメンはない。もしゲンさんやシノブさんが食べたら……どんな感想を口にしたのか。それは聞いてみたくもあった。それがエリオンドのせいで……トレリオン王国のせいで叶わなくなったのは……本当に残念であるし、悔しい事態だった。
「お嬢様、どうされましたか?」
しみじみそんなことを思い、自分の分の冷やしラーメンを食べる手が止まっていた。
「実はね、ヨクアンのことが気になっていて」
ラーメンは今の東方には存在しないこと。それを話したらエルは仰天してしまうだろう。そこで話題を変えるため、ヨクアンのことを持ち出してみた。
「あぁ、ヨクアンですか。マーガレットさんに聞いてみますか?」
「ええ。片付けが終わったら、聞いてみるわ」
ということで冷やしラーメンを食べ終え、さあ片付けだと思ったら……。
「「「手伝いますよ!」」」
既に冷やしラーメンを食べ終えていた村人が、手伝いを申し出てくれたのだ。するともう、あっという間で片付けは終わる。
そうなるとピアはエルに読み書き計算を見てもらうことになるが、それは村の子供達も参加することになった。村の広場は即席の寺子屋状態で、先生はエルだ。
「よーし、みんな、まずは計算からやるぞー!」
元気に声を出すエルは、ちゃんと先生っぽく見える。
私はというと、マーガレットおばあちゃんのところへ行き、早速ヨクアンについて聞いてみることにした。
「マーガレットさん、ヨクアンのことを聞きたいんです」
「ええ、いいわよ。でもね、残念ながら作り方は分からないの。シノブさんの一件があってから、ゲンさんがヨクアンを作るのをやめてしまって、レシピも破棄しちゃったのよね。このヨクアンが原因でこの島に、この村にいることが悪党にバレちゃったからって」
「そうなんですね。でもその悪党も捕まり、もうこの村に悪い奴らが現れることはないと思うんです。ゲンさんの幻のヨクアン、復活できないかと思ったのですが……その前に確認させてください。ヨクアンは黄色で、食べるとポリポリしますよね? 多分、ゲンさんはヨクアンではなく、たくあんと言っていませんでしたか?」
私の話を聞いたマーガレットおばあちゃんはキョトンとしている。
「黄色……? 黄色ではなかったわ」
そこで気付く。前世で見慣れていたたくあんは黄色かったが、あれは着色していたのでは?と。
「あ、では黄色ではなく、白っぽかったですか? 少し茶色がかった白というか……」
「いいえ。綺麗な透明な色をしていて、しっとりした食感だったわ。そのポリポリという食感はなんだか軽快な感じよね。それとは違うと思うわ。あとたっぷりの砂糖と蜂蜜を使っていたから、とっても甘かったの。船乗りは重労働から、この甘さが受けたみたいね」
そしてマーガレットおばあちゃんは、こう付け加えた。
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次話は18時頃公開予定です~























































