第四話:思いがけず大人気
ピアの大声が聞こえ、どうしたのかと思ったら……。
「見て、見て! 咲いたよ!」
その手には植木鉢があり、そこに見事に咲いていたのは……アサガオ。
濃い青の花色は、目にも鮮やかで実に美しい!
「まあ、ピア! それはアサガオね。とても珍しいわ」
「驚きました、お嬢様。こんなに大輪で鮮明な青色の花は、見たことがありません。まるでサファイアが花になったかのようです……!」
エルが感動しているがその気持ちはよく分かる。確かにとても美しいのだ。
だが同時に思う。アサガオはこの大陸ではとても珍しい花。少なくともトレリオン王国の貴族の庭園では、滅多に見かけない。
だがアルシャイン国ではよく見かける花だったりするのかしら?
そう思い、ピアに尋ねると……。
「分かんない。でもお母ちゃんは『ここでは珍しい花だよ』って言っていた。……本当はね、珍しい花だから、あまり人に見せちゃダメって言われていたの。でもこの花、すぐにしぼんじゃうから……。お母ちゃんとお父ちゃんが死んだ後、咲いても見るのは私だけ。でもここならいいよね? フェリスお姉さんとエルお兄さんだけだもん」
「なるほど。そうね。私達しかいないから、大丈夫。でも確かに珍しい花だから、盗もうとする人もいるかもしれない。そこは気をつけた方がいいかもしれないわね……」
そう言いながら、頭の中ではいろいろ考えることになる。もしかしてピアの両親は貴族だったの……?と。
そうでもなければアサガオが庭で咲いているなんて、ないと思うのだ。
「もしかしてピアのお父さんとお母さんは、貴族だったのかしら?」
「違うよ! お父ちゃんは工場で働いて、お母ちゃんはお針子をしていた!」
「そうなのね……」
それで一体どうやってアサガオを手に入れたのか……気になるが、それを知ったところで私の好奇心が満たされるだけだ。詮索するのはやめておこう。
こうして綺麗に咲いたアサガオを眺めながら休憩をして、再び村を目指して移動になる。
目指す村は山奥だが、今は街道沿いにいた。次の宿場町で冷やしラーメンの営業をしてみることにしたところ。
仕込みが終わり、美味しそうなスープの香りが漂い始めると、興味津々でみんなが寄って来る。
「東方の料理!」「懐かしい!」「食べたい」
これはかなりの好反応。
どうやらヨクアン以外にも、東方の料理がこの宿場町にも伝わっていたようだ。聞くと煮物、潮汁などが食べられていたという。
「お嬢様、もう麺が残り五食分しかありません!」
「! そうなのね。ピア、あと五人で終了よ!」
「はーいっ!」
この宿場町では声を張り上げ売り込みをしなくても、冷やしラーメンは飛ぶように売れ、あっという間に完売だった。
「箸を使える方も多くて驚きましたね、お嬢様」
「さすが東方人が住んでいた島だけあるわ」
「フェリスお姉さん、エルお兄さん。みんな美味しいって感動していたよ!」
予想より早い店仕舞いとなり、片付けをしていると……。
「先ほどは本当に美味しい冷やしラーメンをありがとうございました。東方の料理を食べたのは久々です」
柔らかいブロンドに青い瞳の優しそうな年配の女性が声を掛けてくれた。
「ところでどうしてまたこのイースト島に? もしやこの先の山奥にある村に住んでいた、東方人の知り合いの方なんですか?」
尋ねられ、つい私は答えてしまう。
「その方とは特に知り合いというわけではありません。アルシャイン国は様々な国とも交易が盛んですし、移民も多い。ですが東方の出身者に会ったことはありません。でもその奥地にある村には、東方出身の方がいたと聞きました。ヨクアンのことも聞き、その東方人の住んでいた村に興味を持ったんです。そして偶然にもこちらの島へ渡る方と知り合ったんです。お客さんとして冷やしラーメンを食べ、気に入ってくださって。そのご厚意で船に乗せてもらい、今日、島に着きました」
「そうだったのですね。冷やしラーメンを始めたのも、ヨクアンやその東方人の話を聞き、興味をお持ちになったからかしら……?」
ここは料理本でたまたま東方の食べ物について知り、関心を持つようになったと打ち明けることになる。さらにせっかくイースト島に来たのだから、東方人が住んでいた村を尋ねてみようとしていること。こんな機会はまたとないと思い、冷やしラーメンの販売をしてみたことを話すと……。
「なるほど。では東方人が住んでいた村へ向かうつもりなのですか?」
そこで「はい」と私が即答すると、年配のその女性は、思いがけないことを話し出す。
「尋ねようとしている村は、元々いろいろな事情があり、逃れてきた人が隠れて暮らすような場所でした。うんと昔はその村と港の町の人達は、交流することもなかったそうですよ。ですが次第に村と港の町との間で交流も生まれ、そこへ東方出身者が住み着くようになったのですが……。ある事件をきっかけに、村は再び閉鎖的になってしまいました。この島の港町の人間であれば、まだ会ってくれると思います。ですが島外から来たとなると……会ってくれないかもしれませんね」
お読みいただきありがとうございます!
挿絵の画像は雨上がりに撮影したもので
とっても鮮やかな青色で綺麗でした~
読者様に共有したくて挿絵にしてみました☆彡
次話は12時頃公開予定です~




















