第六十五話:トロピカルなムードが満点
シャインから加護をもらったからだろうか?
その後の旅はすこぶる順調だった。
これまでの旅では、酔っ払いに絡まれたり、ポアラン男爵に執着されたりと、少なからずハプニングがあった。だが立ち寄る休憩所は規模が小さいこともあり、なんだかアットホームに冷やし中華の販売が出来たのだ。
こうして二か所の休憩所を経て、いよいよ南部で二番目の都市であり、宿場町としては最大規模のサン・マリーナに到着した。
町に入ると同時に、トロピカルなムードが満点。
「レモン、オレンジ、ピーチ、アプリコット……道沿いにある屋台のフルーツは、どれも鮮やかな色どり。これは気分が盛り上がりますね、お嬢様!」
「それに街中のあちこちでブーゲンビリアが咲いているでしょう」
「はい。それに音楽を演奏している人が多いですよね。初めて見る楽器も多く、何だか陽気なリズムです」
エルが言っているその楽器。ウクレレやコンガドラムに似ている。コンガドラムは前世ではカリブ海などのラテン音楽に欠かせない打楽器。見た目は、細長い円筒形をしており、手で叩いて音を奏でる。
「メロディに合わせるように聞こえる鳥の鳴き声も、この南部の都市のイメージにピッタリよね」
「はい、お嬢様。鳥の姿は見えませんが、きっとトレリオン王国では見たことがない鳥がいそうです」
「そうね。きっとカラフルな鳥がいる気がする。町を行き交う人の装いも、完全に南の都市よね」
ターコイズやイエロー、白やミントグリーンと目にも爽やかな服の人が多い。
子供たちは、ブーゲンビリアの花のような、鮮やかなピンクや赤のワンピースで元気に走り回っている。
「きっとピアが同じようなワンピースを欲しがるかもしれませんね」
「そうね。ピアとお揃いのワンピース、手に入れようかしら」
「いいと思います! 絶対に似合うと思いますよ、お嬢様!」
町娘が着ている服は、半袖のブラウスにロングスカート。白にブーゲンビリアの花色のスカートというシンプルな装いであるが、それがとても映える。街中でもグリーンが多く、白壁が多いからだろうか。
一旦、人馬共に休める休憩スペースに入り、そこで馬を休ませていると……。
エルとピアが情報収集してくれた。
「最大の広場は、町の中心部にある時計塔広場だそうです。やはり時計塔はどこの町でも中心的な存在。ですがこぢんまりとした広場は、灯台のある岬の近くの浜辺にも、沢山あるそうですよ」
そうエルが報告すると、ピアがさらにこんなことを教えてくれる。
「浜辺には木製の遊歩道があるんだって、フェリスお姉さん! 日傘を片手に散歩する人や犬の散歩をして、バカンスシーズンを楽しむ観光客も多いって言っていたよ!」
「まあ、そうなのね。もしかしてその遊歩道に沿う形で沢山のお店があり、ちょっとした広場もあったりするのかしら?」
私が尋ねるとピアは「正解~!」と教えてくれる。
「いくつもある広場に、スタンドショップや屋台が出店しているんだって。その広場にはベンチやテーブルもあるから、お店で買ったものをみんな思い思いに食べるらしいよ」
「そうなのね。海を眺めながら料理できるのは楽しそうね。時計塔の広場より小規模だろうけど、せっかく海辺の町に来たのだもの。そこの広場で、昼営業をしてみましょうか?」
これにはエルもピアも大賛成!
そこで売店でエルは、白シャツにターコイズブルーのズボンを、ピアと私はターコイズ色のロングスカート、上は白のフリルブラウスを購入。こうやって三人でお揃いカラーのコーデをすると、同じお店の店員らしくなる。
生成りのエプロンをつけ、荷車で調理道具を運び、広場の空いているスペースでお店の準備を始めると……。
「こんにちは~。隣でソフトドリンクやアルコールを販売しています。よろしくね~」
「親子三人でお店をやっているの? うちは隣でジェラートを売るのよ。味見しない?」
周辺の屋台の人が、気さくに声を掛けてくれる。ビールやワインを売るお店、ジェラートを販売するお店と、売り物が被らないところもポイントだ。
南国のようなこの町らしいフレンドリーさで、すぐに広場の人々と打ち解けることができた。
するとそこへフラリとやって来たのは、一人の長身の男性。
思わず見てしまうのは、その見事な胸筋と腹筋! 上腕の筋肉も見事に引き締まっているが、背筋も実に素晴らしい。無駄を削ぎ落した見事な筋肉美を披露する、上半身裸の男性が現れたのだ……!
「エルお兄さんもすごいけど、あの人もなんかすごい! 騎士さんなのかな?」
「そうね。あれだけスリムで筋肉質なのは、きっと騎士なのだと思うわ」
ピアと私がひそひそ話をしていると、その青年が気付いて、こちらを見て微笑む。
透明度の高い海のような碧い瞳。髪は輝くようなシルバーブロンド。
鼻梁が通り、スッキリとした顔立ちで、微笑んだ口元には白い歯がのぞく。
ピアが見惚れているが、エルまでその筋肉美に目が釘付けになっていた。
周辺の屋台の女性店員は、軒並みノックアウト状態。
ドリンクを販売するスタンドショップは夫婦経営だが、奥さんが旦那さんに「おい!」とツッコミをいれられている。
「やあ、こんにちは。僕はクルスだ。大道芸をやっていてね。今朝、この町についた。君のお店は随分と香ばしい匂いを漂わさせているね。東方の料理か。オリエンタルだね」
そう言うとクルスは、映画俳優のようなパーフェクトスマイルを見せ、手を差し出した。
お読みいただきありがとうございます!
お知らせの件ですがごめんなさい!
活動報告やxの準備が追いつかず。
そちら用意出来たら告知します☆彡
次話は18時頃公開予定です~
























































