第二十六話:ピアと王都観光
餃子とラーメン、そしてパティシエ特製の大判焼きをいただき、その後、アラン、クラウスと話すことになった夕食会は無事終わった。エントランスで王宮へ戻るアラン、自国の大使館の敷地にある離れが滞在先のクラウスを見送ると……。両親に話があると言われ、応接室へ向かうことになった。そこで父親から言われたこと。それは――。
「フェリス。父さんが間違っていたことがあり、フェリスに謝りたいんだ」
対面のソファに座る父親からそう切り出された時。間違いなくクラウスが言っていた件だと思った。
「アラン国王陛下との婚約の件。少し強引に進め過ぎた気がする。フェリスは……初夏に婚約破棄をされたんだ。まだ一年も経っていない。しかも言われもない出来事で断罪され、国外追放され、ようやく免罪であると分かり、帰国できたんだ。そんなにすぐに次の婚約者を探すような気持ちにはなれないだろう? そのことを……クラウス王太子殿下が気づかせてくれた」
やはり予想通りだった。
「アラン国王陛下の件は一度忘れてもらって構わない。何と言うか、父親でありながら、娘の気持ちをおざなりにしてすまなかった」
「お父様は私の幸せを願い、良かれと思い、行動されただけです。それにお父様には沢山心配をおかけしたので、これからはちゃんと親孝行をしたいと思っています。ただクラウス王太子殿下の指摘通りで、気持ちの整理はつけたいので……」
「ありがとう、フェリス。その気持ちだけで十分だよ。焦る必要はない。何かあれば父さんが全力でフェリスを守る。今は無理をせず、気持ちを楽にして過ごすといい」
父親がこんな風に言ってくれたのは、まさにクラウスのおかげ。
彼の気遣いに再び胸がジーンとしてしまう。
そこでしみじみ思うことになる。
やっぱり私、クラウスが好きなんだ……。
この気持ちは一週間後、クラウスにちゃんと伝えようと決意。そして舞踏会までの日々は――ピアと王都観光をすることになった。
◇
アルシャイン国の首都アール。
ストリートごとに特色があり、とても巨大な街だった。それに比べると、トレリオン王国の王都は……小さい! 東部の宿場町ぐらいしかない気がする。
それでもピアは、初めて訪れる海外。
雑貨屋、スイーツ屋、本屋、画材屋……etc.
市場、広場の屋台、古着屋……etc.
美術館、劇場、コンサートホール、博物館……etc.
アルシャイン国にもいくらでもあり、かつここより豪華で壮麗なものがありそうだが、連れて行くとピアは目を輝かせ、喜んでくれる。その姿がとても健気に思え、可能な限りいろいろな所へ連れて行ってあげたくなってしまう。
「エル。ピアを案内するとしたら、後はどこがいいかしら?」
「アルシャイン国の首都アールを知ってしまうと、王都がこぢんまりとした街に思えてしまいます。実際、ほぼ見所は回った気がしますが……」
確かに王都のめぼしい場所は見てしまった。細々としたお店もまだあるし、オペラは観ていないが……。オペラは子供向けではない。何せ上映時間が長いから。
どうするかと思っていたタイミングでクラウスから手紙が届く。
『親愛なるフェリスへ
舞踏会まであと三日だね。君とまたダンスをできること、楽しみにしているよ。
ところで今はピアに観光案内をしているところかな? 僕は連日、トレリオン王国の様々な貴族との昼食会やら歓迎行事に追われているよ。でも明日、まとまったフリーの時間をとれることになった。
王都郊外に紅葉の名所があると聞いた。
十一月に入り、きっと美しいことだろう。
転移魔法で簡単に行ける距離だ。
よかったら僕と一緒に、ピアやエルを連れ、紅葉を見に行かないかい? ゼノビアもいるから、ピアも喜ぶと思う。
永遠に君の味方クラウスより』
この手紙はまさに朗報!
どこに行くか、何をするのか。
アルシャイン国の首都アールではそんな悩みを持てないぐらい、いろいろあったが、ここは違う。悩んでいる時に救いのように届いたクラウスの手紙。
何よりピアに「ゼノビア伯爵に会いたい?」と尋ねると、その答えは「会いたいよ、フェリスお姉さん!」だったのだ。ならばここは答えは一択。
『行きたいです!』だ。
こうして明日、朝一で集合し、クラウス、ピア、エル、ゼノビア、私の五人で、王都の郊外にあるデンヌの森を目指すことになった。
当日は日の出と共に起きて、動きやすいワンピースへ着替える。
ピアはココア色にピンクのリボンのワンピース。私は明るいグレーにピンクのレースのついたワンピース。
「ピア、もう冷えるからこのフード付きのロングケープを被って」
「はーい!」
「お嬢様、ピア、ルナ、用意はよろしいですか?」
「「OKよ!」」「みゃん!」
エルはいつもの軽装備に厚手のアンティークグリーンのマントを羽織っている。
こうして我が家のエントランスホールで待機していると、クラウスはゼノビアとカモフラージュ用の上級魔法の使い手を連れ、転移魔法で現れた。
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