第二十二話:食後のデザート
餃子とラーメンは大成功だった。
締めのライス&スープも喜んでくれている。
では食後のデザートはどうなるのか。
「食後のデザートとしてご用意しましたのは、大判焼きというものです。小麦を使った生地の中に、カスタードクリームを入れております。東方のスイーツでございますが、中にはあずきという物を本来はいれるそうです。ですがあずきは入手が困難。そこで今回はクリームを入れた次第です」
ヘッドバトラーが説明している間に、銀のお皿に花びらで飾られた大判焼きが登場。一緒に出されたのは、紅茶ではなく緑茶!
餃子とラーメンが東方由来であることから、パティシエは東方料理について書かれた本を読み、大判焼きを作ったようなのだけど……。
まさかこの世界で大判焼きをいただけるなんて!
王道のあずきではなく、カスタードクリームではあるが、文句などない。前世でもカスタードクリーム味の大判焼きはお気に入りだった。さらにカスタードクリームなら、あずきよりこの世界の王侯貴族も気に入ると思うのだ。何せシュークリームは既に存在しているし、大判焼きはそれに近しい。
きっとアランもクラウスも喜んでくれるはず。
ということで大判焼きを作ろうと決め、カスタードクリームを選んだパティシエに拍手を送りたくなる。
「では陛下、殿下。大判焼きとグリーンティーをお楽しみください」
皆が一斉に大判焼きをパクッと頬張る。
その味わいは前世の大判焼きそっくり!
つまり「美味しい!」と感じられた。
「わあ、甘い!」
子供らしく、初めて食べる甘くて美味しいものには即反応してしまう。すなわち第一声を発したのはピアだ。
「ほう。これが東方のスイーツか。美味しいではないか!」
続いてアランが喜ぶ。
「外はカリッとして、中はとろりとしたカスタードクリーム。東方のスイーツとは思えないですね。この大陸でも人気間違いなしでは!? 何より手でこう持って食べられるところがいい。屋台でも販売できそうなスイーツかと」
クラウスも笑顔で感想を口にする。
「我が家のパティシエは実に優秀。旨いぞ、これは!」
「本当に。ラーメンと餃子でお腹いっぱいのはずなのに、ついいただくことができてしまいますわ」
両親も嬉しそうに大判焼きを食べている。
「これは私が文献で見たことがある大判焼きを、見事に再現していると思います。無理にあずきを中にいれずとも、これはこれで良いかと。とても美味しいです!」
こうして夕食会は食後のデザートまで含め、大成功だった。
この後、男性、女性に別れ、飲み物片手に隣室でおしゃべり――が通常の流れ。
だがクラウスがこんな提案をする。
「せっかく久々でフェリス嬢と会えました。二人で話をしたいのですが」
「私もアイゼンバーグ公爵令嬢と話したい!」
アランも追随するので、父親はこう応じるしかない。
「分かりました。では順番にということで……まずはアラン国王陛下からで、どうでしょう?」
これにクラウスが異論を唱えることはなく、アランと私は二人で応接室へ移動となる。
ピアはこの後、入浴をして寝る準備。メイドに連れられ、部屋へと戻る。だがピアの目がキラキラと輝いている理由は――。
「もしかして王様と王子様、二人ともフェリスお姉さんが好きなのでは!? お姉さん、どっちを選ぶの??」と思っているに違いない。そしてそれは……まさかの正解なのだから、困ってしまう!
「アイゼンバーグ公爵令嬢。エスコートしよう」
「! はい」
アランは私が椅子から立つのを手伝い、慣れた手つきでエスコートを始めた。
ヘッドバトラーが先導し、応接室へと案内してくれる。
「その着物は履物も変わっているのだな。歩きにくくはないか?」
ドレスも慣れないと最初は歩きにくい。そしてドレスの歩き方に慣れてしまうと、着物の独特の歩幅には戸惑うだろう。だが私は前世で着物を着ていたこともあるし、そいうものという理解がある。よって久しぶりということもあり、こなれた感はないが、歩けている。
もし前世記憶がなく、ドレスからいきなり着物を着て歩くとなると、戸惑うはずだ。そこを踏まえ、私は答える。
「そうですね。この草履自体が履き慣れていませんし、歩幅も制限されるので、歩き慣れていない気はします。ですが陛下のエスコートであれば、問題なく歩けていますよ」
「そうか。このペースで良いということだな」
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
こうして応接室へ到着すると、対面になる形でソファに座った。そこへ今度は紅茶が運ばれる。
「改めてアイゼンバーグ公爵令嬢。ラーメンとギョーザ、とても美味しかった。手伝いをしているピアとエルにも、私が喜んでいたと伝えてほしい」
「ありがとうございます。ピアとエルにも伝えおきます。二人とも、とても喜ぶかと」
「少しは落ち着いたか」
アランは紅茶を口に運びながら尋ねた。
この質問には少しドキッとすることになる。
私が落ち着いたら、告白の返事を欲しいと言われているのだ。もしや今宵その件を言及されるのだろうか。
言及されるなら、断ると決めているのだ。
そこは言うしかないだろう。
深呼吸をして、ありのままを伝えることにした。
お読みいただきありがとうございます!
そういえば最近大判焼きを食べていないです。
久しぶり食べたくなりますねー!
次話は明日の12時頃公開予定です~
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