第二十一話:最高の相性
ダイニングルームに到着し、中へ入ると……。
オールバックにしたダークブラウンの髪。強い意志を感じさせる眉の下には、ロスより明るいグリーンの瞳。がっちりした体格を、針葉樹のような深みのあるグリーンのテールコートに包み、ゴールドの装飾があしらわれたベージュのマントを羽織り、悠然とした表情をしているのは……アラン!
その髪型は初めてみるものであり、かつ王族の夜の正装と言えば、黒のテールコートがまさに王道だったので、今日の装いは実に斬新。
一瞬、言葉を失ってしまうが、急いでカーテシーと共に挨拶を行う。といっても着物を着ているので、スカートをつまんでいる風の動作になる。
「アラン国王陛下。本日は夕食会にお越しくださり、ありがとうございます。今日のお料理は東方のラーメン、餃子、そして当家のパティシエが腕を振るうスイーツを用意しております。どうぞ心行くまでお楽しみください」
「ありがとう、アイゼンバーグ公爵令嬢。着物という東方の衣装で登場すると聞いていたが……。よく似合っているではないか」
「! そう言っていただけると大変嬉しいです。アルシャイン国で東方に詳しい女性が手作りした物。クラウス王太子殿下経由で届けていただきました」
そこでチラリとクラウスを見ると、彼はその宝石のような碧眼を細め、笑顔で頷く。
どうやら彼もこの着物姿を見て、喜んでくれているようだ。「早速、着てくれたんだね。届けて良かったよ」と言ってくれているように思える。
「今日をとても楽しみにしていた」
アランの声に視線を彼に戻す。
「君の新しい料理のことを聞きつけ、クラウス王太子殿下もわざわざ駆けつけた。期待している」
アランの言葉に「ご期待に沿うよう、頑張ります」と私が頭を下げ、続けてピアがカーテシーで挨拶をすると、父親が着席を促す。
今日の夕食会は、あくまで私的なもの。ゆえに平民であり、まだ子供のピアの同席も許されていた。そして丸テーブルが用意されており、アランを中心に右隣にクラウス、父親、母親、ピア、そして私が着席している。ピアがアランの隣になるのは、さすがに緊張するだろうと、私がアランの左隣になる配置で落ち着いた。
ピアと私が席についたところで、給仕をするメイドとバトラーが一斉に動く。
「これはこれからお出しする、ギョーザのタレとなっています。こちらにおつけになってお召し上がりください。東方から取り寄せたショーユ、ペペロンオイルを加えたものです。ピア様はショーユのみとなっております」
ヘッドバトラーが説明する中、銀食器でタレが出された。まだ十二歳のピアは辛いものを避け、ペペロンオイルはなしだ。
「ギョーザ、焼きあがりました」
すぐに黄金の飾りがついたお皿に載せられ、焼き立ての餃子も到着する。勿論、毒見済。
「アラン国王陛下、クラウス王太子殿下、ぜひ娘が考案した料理、お召し上がりください」
父親の声を合図に夕食会がスタートした。
餃子を確認すると、焦げはなく、でもしっかり底の部分はパリッとしている。形もしっかりしており、崩れもない。ペペロンオイル入りの醤油につけ、口へと運ぶと――。
前世のラー油感覚でペペロンオイルを使ったが、これは大正解! ペペロンオイルがいいアクセントになり、実に美味しい!
主賓となるアランをチラリと見ると……。
「うん! これは美味なり。舶来品のソースであるショーユ。それにペペロンオイルが、ギョーザによく合う!」
大変満足そうで、パクパクと食べ進めている。
一皿に六個しかないので、もう食べ終わる勢いだ。
一方のクラウスは……。
「全体は柔らかい食感なのに、底の焼き目がパリッとして、歯触りもいい。そしてアラン国王陛下が言う通り、タレが秀逸だね。食べる手が止まらないな。さらにアイゼンバーグ公爵にすすめられ、ビールと共にいただいたが……。これは抜群の相性だ」
クラウスは上品に餃子を口に運んでいるが、こちらもお皿が空になりかけている。
「よろしければもう一皿、お持ちしますか?」
父親の問いにアランとクラウスは「「ぜひ!」」と応じた。私を見て、頷き、父親はすぐにメイドへおかわりを命じる。
アランもクラウスも。この後、ラーメンがあるのに、すっかり餃子の虜になっている!
ということで父親を含めた男性陣三人は餃子を二皿平らげ、満を持し、名器に盛られたラーメンが登場。
「これはなんて食欲をそそる香り……!」
「この香りは……豚骨。でもスープの濁りが少なく、透明感がある。これは念入りな下処理をされたのでは?」
アランは目をつぶり、香りを堪能。
クラウスは調理法に興味を持つ。
私はクラウスの問いにしっかり行った下処理について簡潔に伝えた。その説明が終わったタイミングで父親が声を掛ける。
「どうぞラーメンもお召し上がりください」
アランはまず、レンゲでスープの味を確認する。クラウスも私から下処理や匂い消しの工程を聞いていたので、まずはスープを味わう。
「これは絶品だ! 旨い!」
「コクのある濃い味わいで、深みがある。スープ単独でも楽しめる逸品」
アランとクラウスはそれぞれ感想を口にして、麺を口に運ぶ。
私も同時で麺を食べ、「エル、完璧よ!」と心の中で満足する。一方のアランとクラウスは……。
「うん。最高だ。絶品のスープをメンがまとっているのだから、美味しくないわけがない!」
「ツケメンの時より細いメンで、弾力を変えている。スープに入れることを前提に、メンを最適化した……。素晴らしいね。考え尽くされている。わざわざ足を運んだ甲斐があるというもの。ありがとう、フェリス嬢」
アランは豪快にラーメンをすすり、クラウスはその碧眼をキラキラさせ、私への感謝の言葉を口にする。
この様子を見た両親は、国王と隣国の王太子を満足させることができたと、安堵の表情になった。
お読みいただきありがとうございます!
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