第十六話:ラーメンうまうま
「うん!」「ううんっ!」
エルとピアが唸る。
「うううううん!」「……!」
父親は悶絶し、母親は言葉が出ない。
だが数秒の後。
「「「「美味しい……!」」」」
全員の声が揃い、その後はまさに夢中で食べてくれる。
「ピア、ギョーザも食べないと」
「そうだね、エルお兄さん!」
エルとピアはラーメンに夢中になりながらも、餃子を食べるのを忘れない。
この様子を見ていた両親は……。
「ギョーザと一緒にラーメンを食べても美味しかったのだろうか?」
「美味しかったと思いますよ。でも単独でいただいてもどちらも美味しいですわ」
両親の会話を受け、私はすかさず反応する。
「お父様、お母様、よかったらこちらお一つずつどうぞ。ラーメンと一緒に召し上がってみてください」
「! フェリス、よいのか!?」
「フェリス、これはあなたの分よ?」
「また作ればいいだけのことです。召し上がってください!」
もうみんな夢中でラーメンと餃子を食べてくれた。
そしてあっという間に食べ切り、その顔は……。
そう。
その顔はラーメン屋のカウンター席で何度も見かけたことがある顔。
満足し、満腹の合図の顔だ。
つまりこのラーメンと餃子、大成功!
「これまでのつけ麺、冷やし中華、冷やしラーメンとはまた違った味わいで、本当に美味しかったです。何よりこのラーメンはスープもメンもアツアツなので、身も心も温まります……!」
「ギョーザもアツアツでジューシー。ラーメンでもポカポカ。これからさらに寒くなるから、このラーメンは最高だと思う!」
エルとピアは、これまで全種類の屋台提供メニューを制覇している。その上で今回のラーメン。初のとんこつ系スープであるが、気に入ってくれたようだ。さらに餃子も、ラーメンに合うことを分かってくれた。
「ギョーザは実にビールに合う! ラーメンは……スープまで全部飲み干してしまった!」
父親はラーメン好きの鑑。
器を空にしてくれた。
「私はビールもいただいてしまったので、スープが残ってしまったわ。このスープは美味しいから何かできそうよね」
母親の言葉に、私はメイドに合図を送る。
メイドが一人一つずつで、小さな器で提供したもの。それは……。
「! フェリスお姉さん、これ……クスクス!」
「そうよ、ピア。実はこっそり料理人に頼んで、用意してもらったの」
二口ほどの量のクスクスをのせた小鉢をみんなに出してもらうと、私はおもむろに伝える。
「東方では、ラーメンと一緒にライスを頼む人も多い。それは残ったスープを楽しむためです。お父様のように完食される方もいますが、こうやってスープをかけ、リゾット感覚でいただく。とはいえライスは、トレリオン王国では舶来品。市場では手軽に手に入るわけではありません。そこでアルシャイン国から持ち帰っていたクスクスを、ライス代わりにしてみました。スープをかけて召し上がってみてください」
父親のために、小さな器に入った追加のスープも出してもらった。こうして皆、クスクスにスープをかける。
「ではいただいてみましょう」
クスクスにラーメンのスープをかけるのは初めてのこと。合うかどうかと思ったけれど、私の合図で皆、ラーメンのスープをかけたクスクスを口に運ぶ。
「美味しいです、お嬢様!」
「フェリスお姉さん、これ、合うよ!」
エルとピアが瞬時に反応する。
「まあ、不思議。満腹と思いましたけど、この量ならペロリといけてしまいます。……もう少し食べたいぐらいだわ」
「これはこれで一品料理にできそうなぐらい、美味しいぞ!」
両親も大満足!
とんこつ系のスープの旨味を瞬時に吸い込んだクスクスは、文句なしで美味しかった。〆のライスならぬ、〆のクスクスはいけそうだ!
「フェリス! ラーメン、ギョーザ、クスクス! 全て成功だ。アラン国王陛下が召し上がって問題ないだろう。私は今日、宮殿に用事がある。侍従長に手紙を渡そうではないか。アラン国王陛下にラーメンとギョーザを食べてもらおう!」
婚約についてはお断りをするが、ラーメンを食べさせる約束は、既にしているもの。ならばここはそのまま約束を遂行し、そしてその後にお断りという流れにしよう。
心配そうに私を見るエルとピアにはウィンクで「大丈夫よ」と伝える。
こうしてこの日。
父親は宮殿へ行き、侍従長に手紙を託した。夕方にはアランから返事が来て、五日後の夜、我が家へやって来ると言う。
そこで父親は、「〆のクスクスではなく、本場の〆のライスを実現しよう」と宣言。ヘッドバトラーに頼み、ライスを手配する。もし手に入ったらと私は醤油と乾燥唐辛子をリクエスト。この二つが手に入ったら、ペペロンオイルを作り、餃子のたれにしようと思ったのだ。ペペロンオイルは乾燥唐辛子、ニンニク、オリーブオイルがあれば簡単にできる。
父親は「よし。それも手配しよう」と言ってくれたが、確認すると乾燥唐辛子は厨房にあることが判明!
ならばと夕食後、ピアが入浴をしている間にペペロンオイルを作ってしまった。
ご満悦で部屋に戻ることにして、厨房の明かりを消そうとした時。
厨房が面する中庭の方で、物音が聞こえた気がした。
「何かしら?」と気になり、通用口の扉を開き、中庭の方へと出る。
すると、突然目の前が真っ暗になった。
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