第十四話:スープの仕込み完了
「エル、豚骨は寸胴鍋に入れて」
「了解です、お嬢様!」
「ピア、鍋にお水を」
「任せて!」
お水を入れた後に、玉ねぎ、ローリエ、タイム、ニンニクを加え、弱火~中火でじっくり煮込む。火力は魔法で調整し、3時間。じっくりコトコト煮込むことになるので、この時間を使い、煮卵とチャーシュー作りを行う。
さらに途中で休憩で、料理人のみんなとクッキーとミルクティーを楽しむ。
その後、キノコを投入するが、料理人のみんなは夕食の準備が始まる。
既に下処理をしっかりして、ローリエとタイムも投入済。そこへキノコが加わり、二時間程煮込むことになるが、普通に美味しそうな香りがしていた。料理人のみんなも夕食の準備をしながら、寸胴鍋の様子を確認し「いい感じですね」と褒めてくれる。
順調なので、ここはピアとエルにはいつもの読み書き計算をしてもらい、私が煮込みの番人だ。
チラリと見ると、料理人のみんなは手際よく野菜や肉を切り、どんどん調理を進めている。
その様子を見ているのは、何だか気持ちがいい!
次々と料理人が料理を仕上げて行く中、スープの方は、いい感じに仕上がりつつある。
ここで赤ワインとワインビネガーを加えるので、エルとピアを呼び、作業を行ってもらう。
「塩・胡椒も加えて、ここからさらに一時間煮込むの。また私が様子を見ておくから、二人は勉強を続けていいわよ」
それから一時間後。
ラーメンのスープが完成する。
ここで布を使い、こす作業を行う。
「できたわ! 一晩置くことになるけど、ひとまずは完成よ」
「濁りは少しありますが、透明で綺麗な色をしていますね」
「本当だ~! 狐の毛の色みたい!」
エルとピアがまずはその見た目に驚く。
「しっかりアク抜きをして、濾過もしたでしょう。だから透明感があるの。少しの濁りは骨髄やキノコから溶け出した旨味成分よ」
「香りに癖もないし、とっても美味しそうだよ」
「お嬢様、味見をしてもいいですか?」
ピアとエルに「勿論よ。はい」とスプーンを渡し、出来立てのスープの味を確認してもらう。
「濃厚な旨味を感じるのですが、全体的に柔らかさがあり、でもこくがありますね……! これは麺に合うと思います!」
「風味がよくて、芳醇な香りが口の中から鼻に抜けて行く感じがする~! しっかり味わいがあるのに、スープが透明なところのギャップもいい!」
エルとピアはかなり気に入ったようで、絶賛してくれる。
これには嬉しくなり、そこで視線に気が付く。
料理人のみんなが、こちらに注目している!
「皆さんも味見されますか?」
「「「ぜひ!」」」
こうしてプロの料理人である彼らに味わってもらうと、それはもう大変高評価。
「手間暇かけ、作られただけありますね。とても美味しかったです」
「これを一晩寝かせ、明日にはどうなっているのか。楽しみでなりません!」
確かに豚骨、玉ねぎ、キノコから出た旨味は、一晩置くことで、十分に馴染むだろう。味わいが深まっているはずだ。
「「「明日、ぜひまた味見をさせていただけないでしょうか!」」」
料理人のみんなが口々にそう言うが、それは「勿論!」だった。
「明日のお昼に、試作品として皆さんに食べていただけるようにするので、スープだけと言わず、麺と一緒に味わってみてください」
そう伝えると料理人のみんなは大喜びしてくれる。
「お嬢様はそろそろ夕食に向け、着替えをされた方がいいのでは?」
エルに言われ「そうね! ピアも、着替えましょう!」と急いで部屋に戻る。
その際、ピアにラーメンのスープ作りで分からなかったところはないか、確認すると――。
「作業工程としてやっていることは、つけ麺も冷やしラーメンも今回のラーメンも同じでしょ。だから大丈夫かな。明日の麺作りで、ラーメン用の麺の作り方をしっかり覚えたいかな」
さすがピア! 大変優秀。そしてちゃんとスープ作りの工程が頭に入っている!
「そうね。明日は麺を実際に作るから、手で混ぜ、捏ねた時の肌感覚でも覚えるといいと思うわ」
「うん! そうする!」
そこで部屋に到着し、その後はメイドに大急ぎでドレスを着せてもらう。
ずっと部屋でお留守番をしていたルナは、着替えをするピアと私の周りをウロウロして、甘えたい気満々。ドレスはフリルもあるので、ここで甘えられると大変!
そこで猫じゃらしに似た草を与え、ルナには一人で遊んでもらう。
そうしている間に、着替えが完了した。
ピアはパステルピンクのフリルの可愛いらしいドレス。私はモーブ色の銀糸の刺繍が美しいドレスだ。
今日は昨晩と違い、親族一同がいるわけではない。
だからエルも同席で、私の両親と夕食を摂ることになる。ルナも連れて行き、みんなと同じ部屋で夕食だ。メイドがルナを抱っこして後を追うことになっていた。
「じゃあ、ピア、ダイニングルームへ行きましょう!」
「はーい!」
夕食の席ではラーメンのスープ作りについて両親に尋ねられ、ピアが元気に応えている。
「試作品が成功したら、殿下にご連絡しないと」
さりげなく父親が口にする言葉に、エルとピアが私をチラッと見る。私は「大丈夫よ」と二人に目で合図を返す。
そんなこんなで夕食を終え、自室へ戻ることになった。
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