第十三話:ラーメンを
両親はアランのことを数日かけ、じっくり考えるといいと言ってくれた。だがエルとピアのアドバイスで、私の中での答えは出てしまう。
しかしすぐに伝えると、「もう少しちゃんと考えてみては!?」と言われそうな気がした。何せお断りするのだから。
「ここ数日かけ、考えに考えたのですが」でお断りを伝えた方が、両親が納得してくれそうな気がする――そう思ったので、翌日、特に両親には何も言わないでいた。
代わりに伝えたのは――。
「ピアはいずれ生まれ故郷に戻ります。そしてその故郷で私の後を継ぎ、ラーメンの屋台を続けることになっているんです。ただ、肝心のラーメンをまだ一度も作っていません。今日からはピアのために、ラーメンのレシピを考え、試作品に取り組みたいと思います」
この提案に両親は「ピアちゃんのために必要なことなら、するしかないのでは? ねえ、あなた?」「ああ、勿論。厨房も使えるように手配しよう」と言ってもらえた。
こうして料理人が朝食の後片付けが終わり、昼食の用意をするまでの時間。そして午後の夕食の準備が始まるまでの時間で、厨房を使えることになった。
早速厨房には、料理人から借りた白の調理服を着たエルとピア。私も同じく白の調理服を着て、首には赤のスカーフ。エルは青、ピアは黄色のスカーフをつけている。
私達三人の様子を見学しているのは、この厨房の主である料理人の皆さん。つけ麺を食べ、興味を持ち、ラーメン作りをぜひ見たいとなったのだ。
見学する人々がいるので、私の口調もレクチャーをしているようになる。
「つけ麵では魚介系、冷やしラーメンは塩系のスープを考案しました。そして今回、ラーメンを作るにあたり、臭いを気にしていた、とんこつ系にチャレンジしてみることにしたのです」
そこで厨房の作業台に用意した材料の説明を始める。
「とんこつ系スープというのは、豚骨で作るスープです。ですからこちらの豚骨がメインです。玉ねぎは旨味と甘みを引き出すために使用します。そしてローリエとタイム。スープ作りでお馴染みですね。ローリエとタイムの持つ香りをスープに溶け込ませ、肉や骨から生じる重たい香りを軽やかなものに中和させます。そしてにんにく。他の材料との相性もよく、甘みや旨味を引き立てる役割を果たします。豚骨スープの風味の引き締め役です。さらにこちらのポルチーニなどの数種類のキノコ。このキノコにより、自然な旨味と深みを加えます。さらに肉由来の脂っこさや濃厚な臭いを抑制するのに役立ちます」
料理人達は熱心にメモを取り、ピアは真剣な表情で情報を脳へインプットしている。ピアはまだ若く、ずば抜けて記憶力もいい。なにせ一度見れば、全て覚えられるのだから……。本当に地頭がいい子だと思う。
「調味料として使うのは、赤ワイン、ワインビネガー、塩、黒胡椒です。これらの調味料でスープの味を整えつつ、酸味とワインで、豚骨由来の臭いを抑え、バランスの取れた仕上がりにします」
「お嬢様。今回のトンコツスープ。まろやかであり、キノコの旨味により、深みのある味わいになるのですね?」
エルの質問には「まさにその通りです!」と答える。
「独特の匂いを押さえ、豊かな風味を感じられる、とんこつスープに仕上げます」
そこで一呼吸おき、「続けて麺です」と伝える。
これはいつも通りの小麦粉……強力粉、かん水、塩。かん水について、料理人に向け説明した後、つけ麺の麺との違いを話す。
「皆さんが昨日食べたつけ麺。つけ麺のスープは濃い目であり、このスープをきちんと麺にまとわせるため、歯応えのある麺づくりを行っています。具体的には、ラーメンより少ない水分で作っているのです」
皆、昨日食べたことを思い出し、ふむふむと頷いている。
「つけ麺の麺は一晩寝かせ、余分な水分を飛ばし、麺の弾力とコシを強めるようにしています。ですがラーメンで使う麺は、つけ麺の麺ほどのコシはなくていいので、一晩寝かせる必要はありません。三十分から一時間程度で大丈夫です」
「ということはフェリスお姉さん。ラーメンのメンは、ツケメンほど太くなくていいの?」
ピアが好奇心旺盛な表情で私に尋ねる。
この前のめりな姿勢を見るにつけ、ピアが後継者で良かったと嬉しくなってしまう。
「正解よ、ピア。ラーメンの麺の方が、つけ麺の麺より細い。そして当然だけど、ラーメンの麺の方が、茹で時間が短くなるわ」
「ツケメンより、メンが細くて、スープに入れて提供する。だからラーメンは、ツケメンのメンより茹で時間を短くして、メンが必要以上に柔らかくなるのを防いでいるんだ!」
「その通り! このように同じ麺を使う料理ですが、つけ麺とラーメンでは麺の性質に違いがあり、茹で時間や太さも変わります。このこだわりにより、つけ麺、ラーメン、それぞれの美味しさが保たれているのです」
料理人達は「「「なるほど」」」」と頷く。
「ということで麺についての説明はここまでで、今日はスープ作りを行います。麺づくりは明日の午前中です。そしてお昼に試食会となります!」
そこで早速、豚骨の下処理からスタートだ。
たっぷりの水の中に豚骨を入れ、中火で沸騰。沸騰後に出てくるアクを取り除く。
この作業を三十分ぐらいかけて行い、その後は取り出した豚骨を洗って下処理は完了。しっかり行う下処理が、匂いを押さえることにもつながる。
「ではいよいよスープの仕込み開始です!」
お読みいただきありがとうございます!
本日もよろしくお願いいたします☆彡
ついにとん骨系ラーメンですよ~
お腹すく~お昼はラーメン、ラーメン♪
次話は18時頃公開予定です~























































