第三話:やっぱりあれには仰天
仕込みが終わり、夕食までの僅かな時間を使い、着替えは手早く終え、アランへ手紙を書いた。
一つは例のエリオンドがどうなったのかを尋ね、さらに明日のお昼、つけ麵を皆に振る舞うことになったと書き記す。つけ麵のことなどアランは知らないだろうから、簡単になぜそれを作ることになったのかも書いておいた。
私が料理を作ると知り、きっと驚くだろう。
本当はアランも顔を出さないかと書きたいところだが、相手は国王。言うまでもなく多忙であり、前日の連絡で、あっさり都合がつくはずがない。
『せっかくのお誘いだが、予定があって……』と、アランが申し訳ない気持ちになる必要はなかった。もし時間の都合がつき、興味があれば『よかったら自分も顔を出していいだろうか?』という返信が来るはず。
もしその返信が来て、アランが顔を出してくれたら……。
告白に対する返信をするつもりだった。
期待を高めるわけにはいかない。
お断りするなら早い方がいいと思ったのだ。
とはいえ。アランが多忙なら仕方ない。きちんとアポをとり、会いに行き、そこで伝えるまでだ。
「ではこれをアラン国王陛下に届けてください」
「かしこまりました」
ヘッドバトラーに手紙を預け、ダイニングルームへ向かった。
夕食会の席は、両親、エル、ピア、エルの母親が揃い、スタートとなる。
今度は私の積もる話から一転。両親から私がいない間のトレリオン王国の話を聞くことになる。既に知っていたが、ロスとヒロインの破局の件などだ。ヒロインはいろいろなほとぼりが冷めるまで、両親と共に地方領に滞在しているという。
そんなトレリオン王国の話を聞き、夕食会は無事終了。エルは母親と一緒に屋敷へ戻り、そこで父親と再会だ。
一方、ピアのために両親は立派な客間を用意してくれたが……。
「いつも通りでフェリスお姉さんとルナと一緒がいいな」「みゃん!」
ピアとは遅かれ早かれ、再出発となる。
一生会えないわけではなく、私は何度だって会いに行くつもりでいた。ただこれまでのように、ピアと一緒に寝ることはなくなる。
「そうね。私もピアと一緒がいいわ。お父様、お母様、せっかくピアのために部屋を用意してくださったのですが……。ピアとルナは私と一緒に休みますね」
「それは勿論、構わない。ところでフェリス、幌馬車に棺があったが……」
心配そうに尋ねる父親に、棺の用途を明かすことになる。積もる話をしていた時は、棺のことまで話していなかった。棺以上に話すことが多かったからだ。
ということでここにて明かすことになると……。
「何!? 棺がベッド代わり???」
「何てことでしょう! 棺がベッドだなんて……」
両親が仰天するのは無理はない。
でも意外と快適であることを伝えると……。
「棺が快適だなんて、ダメよ!」
「そうだ、フェリス! とはいえ、あの棺が思い出の品だと言うのなら……。仕方ない。我が家の宝物庫に格納しておこう」
寝る直前にばたつくことになったが、それもひと段落。
ベッドに入ると……。
いつもならしばらくピアとおしゃべりを楽しむ。
だが今日は、大きな移動があったわけではないが、いろいろなことがあった。それになんだかんだで仕込みだってしたのだ。おしゃべりタイムもなく、すぐにピアと私も、そしてルナも。
眠りに落ちることになった。
◇
明けて翌朝。
朝から秋晴れで天気はいいが、空気はひんやり!
間もなく十一月。空気は冬の寒さだ。
そこで私は大変なことに気付く。
メイドに空色のデイドレスを着せてもらいながら、重要なことに思い至ったのだ。
ラーメンが食べたい!ということで始めたラーメン屋台だった。しかし思い立ったのは初夏。いきなりアツアツのラーメンは、クーラーのないこの世界ではどうなのかと思い、つけ麵に変更した。その後は夏本番となり、冷やし中華を作り、冷やしラーメンも作った。
だがしかし。
肝心のラーメンをまだ作っていない……!
つまりピアにラーメンの作り方を伝授できていなかった。
これは由々しき事態である。
「ピア、おはよう。大切な話があるの」
目覚めて身支度を整え、明るいオレンジのデイドレスを着せてもらったピアに、先程の気づきを話す。
「そっか。そうなんだ! ラーメンという冬向けのレシピがあるんだね!」
「そうなのよ。ピアならすぐに覚えられると思うけど、つけ麵ともまた、作り方が異なるの。レシピを考案して、試作品を作り、ピアもやり方を覚えて……となると、イースト島へ戻るのは少し時間がかかるわ」
「大丈夫だよ! おばあちゃんにそのことは手紙を書いて知らせればいいし。ちゃんとラーメンの作り方を覚えて、村のみんなに美味しいものを食べさたい。フェリスお姉さん、教えて!」
それはもう「喜んで!」ということだが、まずは今日はお昼のつけ麺だ。
こうして朝食の後は、昼に向けた準備となる。
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