第三十話:クスクス
初めて来た首都アール。
その人の多さに驚かされ、王太子の施策に感動したが、そのすごさはまだまだ序の口だった。
時計塔広場だけでもかなり広大だったが、この規模の広場が首都の中に数十箇所あるというのだ。そしてそこはどこもここと同じぐらい栄えている。
広場同様にスケールがすごいことになっているのが、市場! その市場も大きいが、併設されている汽車の駅舎も広大で、そこにはレストランや土産物屋も充実し、イメージとしては前世の東京駅のようだった。
さらに首都の北部には工場地帯が集中しているが、青空が見えるようにと、操業時間を調整し、緑化にも積極的に取り組んでいると言う。トレリオン王国では煙突の煙で空が見えないことも多々あったが、ここはそうではないようだ。
大国でありながら、いろいろと考えられた国作りが行われており、改めてすごい国だと思ってしまった。
「ここがあのおばあさんが教えてくれたレストランが多く立ち並ぶ通りですが……本当にレストランばかりですね。店頭販売をしているレストランもあり、一見普通のお店があるように思えます。ですが左右に並ぶお店、すべて飲食店です……!」
時計塔広場から移動し、昼食を摂るお店に向かうことにしたのだけど……。
言われた通りは一キロほどの距離に渡り、レストランがズラリ。これにはエルが仰天しているが、それはピアと私も同じ。ただ三人ともビックリしているが、それは嬉しい悲鳴のような状態。
とりあえず歩いてみようと通りを進むが……。
どれもこれも美味しそうなお店ばかり。そしてこのまま一キロを歩いても、入るお店は決まらない気がした。
そこで私は提案する。
「せっかくだからこれまで食べたことがない料理のお店に入るのはどうかしら?」
「いいと思います! 東方料理以外の異国料理を食べることで、いろいろな味についての勉強になると思うので!」
「うん、いいと思う。そうしないと私、選べないと思うもん」
ルナも「みやぁ!」と応じてくれる。そこでテラス席もある異国料理のお店を探した結果。
「クスクス?」
「クスクスって何? 笑いながら食べる料理!?」
エルとピアが首を傾げ、ルナも「みやぁ?」と不思議そうな顔をしている。
「クスクスは小麦から出来ているパスタの一種よ。まさかアルシャイン国にクスクスのお店があるなんて」
「お嬢様はクスクスをご存知なんですか?」
「そうね。美味しいわよ。サラダで食べることが多いけど、煮込み料理と一緒にライスのようにして食べられるから、入ってみましょう」
こうしてまずは私がお店に入り、テラス席への案内が可能か確認すると「はい。空いています! 膝掛けもご用意しますね」と応じてくれる。朝夕は冷え込むが、今日は陽射しもあり、まさに快適な秋晴れ。テラス席でも寒いわけではないが、気遣いはとても嬉しい!
こうして案内されたテラス席に座ると、店員さんはメニューブックを渡しながら、ルナに気が付く。
「まあ、可愛い猫ちゃんですね」
「ルナって言うの! お姉さん、ルナにもご飯あげたいんだ」
「ふふ。店主は大の猫好きなんですよ。ご用意しますね」
人にも猫にも気遣いができるお店!
なんて素晴らしいのだろう。
「お待たせしました! クスクスの野菜サラダ、鶏肉とトマトのクスクス煮込み、魚介のクスクス・ブイヤベースです! そしてこちらはルナちゃんにどうぞ」
なんとルナのために、餌に加え、お水まで用意してくれたのだ! これはもうお会計時に「お釣りは結構ですよ」で、感謝を示すしかないだろう!
さらに出された料理を三人でシェアして食べ始めたが……。
「ビーツとカボチャに合うよ、このクスクス!」
「本当ですね。これは野菜が苦手な子供でも、つい食べてしまうのではないですか? 食感も見た目よりも柔らかく食べやすいです!」
早速サラダから食べたエルとピアは、初めてのクスクスをすぐに気に入る。そして鶏肉とトマトのクスクス煮込みを食べると……。
「これは美味しいですね! 食べ応えもありますし、パクパクといけます! クスクスはどんな料理も合うんですね」
「鶏肉とトマトは普通に美味しいでしょう。そこにクスクス! これで十分お腹がいっぱいになると思う」
「うみゃぁ」
ピアに続き、ルナがお店が用意してくれたご飯に満足し、まるで「うまい!」と言っているかのように鳴くので、みんなで笑ってしまう。そしてこの後に食べた魚介のクスクス・ブイヤベースは、まずはスープが文句なしで美味しい! そのスープにじっくり浸かったクスクスは、たっぷりその旨味を吸収。それにかぶりついたら、絶品であることは保証されているようなもの。「うまい」「おいしい」「最高」を三人で繰り返しながら食べることになった。
「お味は満足いただけましたか?」
「「「満足です!」」」
「それは良かったです。きっと満腹でデザートはいらないと思うのですが、一口デザートをサービスで出しているので、もし食べられそうでしたら。秋の味覚、マロンのアイスですよ」
最後の最後まで、最高のサービスのお店だった!























































