第二十一話:三人組の罪
こうして五人で食事をするのは初めてのこと。
話題に事欠くかと思ったが、そんなことはない!
教育ママ風リディアン、信楽焼のタヌキみたいなセファン、ピザは絶品だったが悪党だったマイア氏の三人の件を、ゼノビアが話してくれたのだ。
「向こうも開き直って、ありったけのお金を払い、有能な弁護士を雇おうと躍起になったのよ。でも王家が絡む一件。だれも弁護なんてしたくない。それでも裁判があるから、国選弁護人がつくけれど……証言者もいるし、犯行は悪質でしょう。極刑を求めれば死刑も可能だけど」
これにはさすがにたじろぐ。
ルナを穀物庫に閉じ込め、ネズミ番にしたことは許し難いが、死をもって償えは、この世界のこの時代ならではと思える。そこまでは……と思うが、この世界の価値観にどっぷりのエルとピアは「「それでもいいと思う!」」とルナ命モード。そのルナはというと、用意したご飯を平らげ、荷車の上で丸くなっていた。ちゃんとみんなの視界の入る場所にいる。
「あの三人組の罪は重いと思いますが、小麦畑を成功させる商才はあったのだと思います。それにマイア氏の料理の腕は確かかと。アルシャイン国にはいくつか同盟国があり、そこと独占的な貿易契約を結んでいますよね? ただとても遠い島国だったりで、現地の民族の文化なども独特。そういった地への流刑として、現地で労働に従事させるのはどうでしょうか?」
前世で言うなら植民地のような国をアルシャイン国はいくつか持っているが、そこは従属を強制している関係とは違う。同盟国という扱いであり、不当な取引を強制しているわけではなかった。ただ本当に。大陸から離れた島なので、現地に赴任したがる人は少なかったはず。
流刑という形ではあるが、リディアンとセファンは現地の産業の発展に、マイア氏は現地の食堂でも働けばいいのではと思ったわけだ。
「あら。フェリスさんはアルシャイン国に詳しいのね。そして流刑でいいなんて。優しいわね」
「ですが文化も言葉も違うので、苦労すると思いますし、原因不明の熱病も定期的に起きると聞いています。決して三人は優しい刑と思わないでしょう。むしろ戦々恐々で現地へ向かい、必死に生きることになると思います。悪知恵を働かせるのは無理でしょう」
「なるほど。分かったわ。ではその方向で調整しましょう。そしてその恩情に報いるように、損害賠償を請求し、罰金を課しておくわ。つけ麵屋の営業が一週間近くできなくなったのだから。それに流刑になるのに、財産を持って行くなんてできないから、半分は国が押さえ、半分は三人に渡るようにするわね」
これには「「「えええええっ!」」」とエルとピアで驚くことになる。
「迷惑料みたいなものよ。気にしないで」
「それは有難いのですが、きっと三人の元で働いていた人が沢山いると思うのです。彼らが路頭に迷うと困るので、そちらへ当ててください。私達は店を営業できなかった一週間分の補填で十分ですよ」
私がそう言うとエルが耳打ちする。「でもお嬢様、少しぐらい財産の一部を受け取ってもいいのではないですか!? いろいろと支度に入用ですよね!?」と。
これにはすぐにハッとする。
舞踏会に必要なドレスや宝飾品、靴の購入に当てればよいのでは?ということだろう。
だがしかし。
それで三人の下で働いている人が路頭に迷っては困る。ゆえにここは「いいのよ、エル。彼らの下で働いてた人達に罪はないのだから」と伝えることになった。
エルは「お嬢様」と瞳をうるうるさせ「なんてお優しいのでしょうか」と感動している。
「フェリスさんって……まるで聖母様みたいね。分かったわ。三人が流刑になっても、彼らの下で働いていた人たちが困らないよう、手配するわね」
ゼノビアもそう言ってくれたことに安堵し、食事を終了。
待望のスイーツタイムになった。
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