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悪役令嬢は異世界でラーメン屋台を始めることにした  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
【第一部】

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第十三話:ラーメンとは何でしょうか

「ラーメン、ですか?」


「そう。ラーメン」


 エルはホワイトブロンドの髪をサラッと揺らし、紺碧色の瞳を細め、大変真剣な表情になる。その上で、「ラーメン、ラーメン、ラーメン……」と呟く。


 その様子は何とも愛らしい。


「ラーメンとは何でしょうか、お嬢様?」


 そこで私はラーメンについて説明することになる。

 ラーメンを語れるのは、学生時代、ラーメン激戦区に住んでいたからだ。

 サークルの仲間と『ラーメン部』を結成し、ラーメンを食べ歩き、ラーメンに関する知識を蓄積、ラーメン作りにも挑戦した。その時の記憶は、転生後も残っていたのだ……!


 ということで熱く語ると長くなりそうなので、重要な点だけ押さえ、一通りラーメンについてエルに話して聞かせた。それを聞き終えたエルは「なるほど」と頷く。


「異国の、東方の島国で発展した食べ物なのですね。元は大陸に存在した料理が独自進化を遂げた。小麦で作ったメンというものを、鶏などで作ったスープに入れ、一緒にいただくのですね」


「そうなの。でもこれから暑くなるから、つけ麺を出すつもりよ。つけ麺というのは、スープと麺を別々に用意するの。そしてそのスープに麺をつけながら食べるのだけど、その場合、麺は水でしめるから冷たい。でもスープは熱い。口の中で丁度いい温度になって、夏でも食べやすいと思うわ」


「夏の暑さの中、アツアツのスープでメンを食べるのは、食べにくいということですね」


 私は頷き、こう続ける。


「エルもまずは一度つけ麺を食べてみないと、どんな食べ物か想像できないと思うの。何より屋台はエルと一緒に営業するのよ。エルも美味しいと思うものを作れないとダメよね」


 これを聞いたエルは瞳をまたもうるうるさせる。


「今日はこの休憩所にこのまま泊まりましょう。私が魔法でエルが寝られるように……」


「大丈夫です、お嬢様! こういう休憩所は寝具も扱っています。掛け布は買い取りですが、羽毛布団などはレンタルできるんです。といっても今は初夏ですから、掛け布と枕を買います。それだけあれば十分です」


「分かったわ。じゃあ、他にも欲しいものがあるから、売店へ行きましょうか」


 こういった街道沿いにある休憩所は、そのまま馬車を止め、宿泊もできた。大きな規模だと宿泊施設もあるが、たいがいは野宿となる。野宿が前提なのは、長距離移動は基本、男性がするものと考えられていたからだ。


 何はともあれ、売店で必要なものを手に入れることはできた。


「お嬢様、いろいろ購入されましたが、それは……?」


「全部、ラーメンを作るのに必要な道具と材料よ。といってもこれから魔法で道具は作りだすわ」


「早速、ラーメン作りをされるのですね! それはもう今日いただけるのですか!?」


 エルが瞳をキラキラ輝かせるので、ここは「そうよ」と答えたくなるが……。


 残念ながら、そうはならない。


「スープも麺も一晩寝かせる必要があるの。だから晩御飯は売店で買うことになるわ。たた煮卵なら、今日食べられる。味見だけ、してみる?」


 「はい!」とエルは頷き、そこからは私の準備を手伝ってくれる。


 まずはアイロンで使うおもし(鋳鉄)を魔法で、寸胴鍋に変えた。さらには雪平鍋もどきの鍋も魔法で用意。


 この休憩所には井戸もあるので、そこでお水は調達できる。


「エル、この鍋にお水を用意してもらえる?」

「お任せください!」


 エルが水を準備してくれている間に、麺を茹でる鍋やざる、包丁やまな板、お玉などの調理器具、ラーメンを入れる丼ぶり、レンゲなども用意した。


「! お嬢様、これ、全部魔法で!?」


「そうね。元になる金属や陶器を魔法で変形させた感じよ」


 そう言いながら、魔法を使いレンガで簡易竈を作り、まずはそこに水を入れた寸胴鍋を置いてもらう。鍋を置いたエルは興味深そうに私が用意した道具などを眺める。


「これは何ですか、お嬢様? スプーン……ですか?」


「それはレンゲと呼ばれていて、スープを飲むのに使うのよ」


「なるほど。これは???」


「それは湯切りのざるね。茹でた麺の湯をきる時に使うの」


 道具の説明をしながら、手に入れた玉ねぎをザクザクと四つ切にする。


「お嬢様、その作業、自分がやります!」

「助かるわ、お願いね」


 エルが玉ねぎを切ってくれている間に、にんにくをつぶし、乾燥アンチョビを寸胴鍋に投入。つぶしたニンニクも投入し、エルが切ってくれた玉ねぎも加える。


「お嬢様、これは何をしているのですか……?」


「アンチョビから旨味成分をじわじわ引き出すのよ」


「魚介のスープを作るんですね!」


 つけ麺と言えば濃厚とんこつか魚介系。


 でもとんこつのあの匂いに抵抗感をもたられる可能性もある。そこで今回、魚介系のスープを試しに作ることにしたが、昆布や煮干しはこの世界に存在しない。


 さすがにそれらは魔法でも用意できないので、アンチョビで代用することにしたのだ。


 つまり乾燥アンチョビは煮干しの代用で使っている。そしてアンチョビは貴族の食卓にもちょいちょい登場するので、その匂いと味に抵抗感はないはず。


「同時進行で煮卵とかん水を用意するわ」


 そこで鍋を火に掛け半熟卵作りつつ、かん水を重曹を使い、準備することにした。


「カンスイとは何ですか、お嬢様?」


「かん水は、麺に独自の風味、色合い、弾力なんかを出すために必要なの。『コシ』を出し、『黄金色』の麺にするには欠かさないもので、アルカリ性の水よ。重曹を焼くことで、その成分を取り出せる。確か、200度~250度で一時間程焼くのだけど……そこまですると大変だから、重曹を水に溶かし、かん水として使うの」

お読みいただきありがとうございます!

本日もよろしくお願いいたします☆彡

次話は12時頃公開予定です~

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