妄想42 チートで無双
俺達はE級に上がった。
もうダンジョンも20階層まで上がっている。
ダンジョンからギルドに戻り、ランク昇格をメイリーさんから告げられたのだ。
「タロウさんたちは凄いですね、あっという間にE級ですから!この調子で頑張ってくださいね!」
「ありがとうございます」
俺はなるべく会話を少なくするべく、深々とお辞儀をし、その場を後にする。
お辞儀をする時は目線は俺の俺を見ながらだ。
「タロウくんさ、今日の冒険者ギルドでさ、メイリーさんのどこ見てた?」
ある日の夜のことだ。
相変わらず切れてる俺の俺を握りながら、アサミさんは俺に言った。
「谷間⋯⋯見てた?」
誤解すぎてビックリだ。
見てるわけない。
しかもシャツのボタンは閉じられているんだ。
だから俺は弁解した。
「シャツがしっかり閉じられているから見えるわけないじゃないか」
これが失敗だった。
誘導尋問だった。
アサミさんの方が夜の戦いは1枚も2枚も上手だ。
「ふーーーん、やっぱり胸元見てるんだ」
胸元なんか見なくてもその辺は視界に入るだろう、そう弁明したかった。
だがそれは叶わない。
なぜなら俺の俺が人質ならぬナニ質にされているからだ。
ガッチリ握られている。
こうなったら俺は逆らえない。
むしろご褒美、そう思えるように俺もなりない。
「タロウくんが他の女の子の胸元見ちゃうからだよ?」
見ちゃうから、毎晩俺は負けている。
そう言いたいのだろうか。
異世界と言ったらチートで無双の話が普通なんじゃないんだろうか。
無双してるのはアサミさんだ。
俺も夜に無双したい。
もしやアサミさんは夜の無双チート能力を異世界転移することで獲得したのか?
なんでその能力が俺に与えられなかったのか。
魔法より俺も夜の無双チートを欲しかった。
「そんなに胸が好きなの?男の人って胸が好きって言うもんね。やっぱりタロウくんも⋯⋯⋯好き?」
アサミさんのが大好きです。
そう叫びたかった。
叫ぶ前に俺の目の前には谷と谷の間があった。
首元の服を指でずらし、自分の胸元を見せつけてきたのだ。
「私だってあるもん⋯⋯⋯」
知ってます、知ってるんです。
毎日押し当てられてれば、ある程度大きさは分かってるんです。
服の隙間から見せつけられる谷間。
そして負かされる俺の俺。
毎日俺は完敗です。
ふぅ、これを幸せって呼ぶのかな。
リア充ってこれのことを言うのかな。
お父さんお母さん、俺は今日も異世界で幸せです。
「おはようアサミさん」
「おはようタロウくん」
『ガウッ』
「クゥちゃんもおはよっ」
アサミさんもクゥちゃんも朝からバリ三で可愛いな。
うちの両親が言っていた。
バリ三とは、ガラケー時代に電波が三本バッチリ受信してる時のことを言うそうだ。
バリバリ3本受信か。
俺も朝からバリ三だ。
夜にあれだけされてるのに、本当に元気だ。
「今日もダンジョンに行く?」
「そろそろお金も貯まってきたし、装備を買いに行かないか?」
「うんうんっ、私の鞭買いに行こっ」
⋯⋯⋯⋯⋯鞭は確定事項なんでしょうか。
「他には何があるかなぁ、行ってからの楽しみだねっ」
現代日本じゃなくて本当に良かった。
日本に居たとしよう。
アサミさんと今の関係のまま居たとしよう。
アサミさんと会う、そしてそういう雰囲気になる。
日毎に大人のオモチャが増えていくのだ。
「今日はこれだよっ安かったのっ」
さぁて、今日の夜はどんな風にいじめられるのかなぁ、ウキウキワクワク!
こんな思考回路になる男っているのだろうか。
女の子でもMの子がいるのは知っているが、こんな風になる子はいるのか?
「見て見てタロウくんっ、欲しかったのやっと買えたんだぁ、バイト頑張ったんだからっ」
なんて言われそうだ。
そんなこと言われたら使わざるを得ないだろう。
日本では回復魔法なんか使えないからな。
連日されたら俺の俺は血塗れになってるんじゃなかろうか。
毎回破瓜してんの俺じゃん⋯
「それじゃあギルドの隣にある武器屋を見に行こう」
クゥちゃんも一緒にみんなで武器屋へ向かう。
リードなんか必要ないから、やっぱりクゥちゃんは賢すぎる。
また少し大きくなってきたな。
犬と言うより狼?
なんにせよ可愛らしい。
武器屋に入ると、種類ごとに武器が陳列されている。
入口付近には値段の安い剣や槍などが樽に入って売られている。
駆け出し冒険者用の武器なんだろうか。
「色んなのがあるねっ!でも鞭は置いてないのかなぁ」
一択なんだ。
アサミさんの欲しい武器は鞭。
それ以外には興味すら示さない。
「タロウくんは何か買う?」
「何かいいのあるかな、でも俺は武器はつかえないからなぁ」
そんなふうに物色していると背後から店員の人が話しかけてくれる。
「いらっしゃい、うちの武器はどうだい?欲しいのが見つからないなら見繕ってやろうか?」
俺とアサミさんは振り返る。
見るんじゃなかった。
俺は今日の夜もめくりめくる快楽と痛みのメビウスに陥ることが確定した。
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