妄想34 地下から
「身分証明か⋯」
「そんなの持ってないもんね」
俺達は門から外壁に沿って歩いている。
この後どうしたらいいのか悩んでいる。
侵入するにもこの壁と門のおかげで無理としか思えない。
そして侵入してもバレるリスクがある。
着ている服も明らかに異質だ。
すぐに怪しまれる。
これはもう八方塞がりなんではなかろうか。
運良く誰かが助けてくれるなんてことはないだろう。
最初に会った冒険者なんて俺を殺そうとし、アサミさんに酷いことをしようとしていたんだ。
安易にこの世界の人を信用できない。
「私達、森に戻るしかないのかな⋯」
「それしかないのか⋯」
途方に暮れながら歩いている。
なにか名案がないものか。
都合のいい偶然なんか起こるわけない。
自分達で何とかしないといけない。
「各種ギルドで貰えるらしいけど、まずは街の中に入らないとだ」
「その中に入るのが難しいんだもんね」
結局、街に入らなければ解決しない。
まずは安定した暮らしをして、そこから帰る方法を模索しなくてはならないんだ。
「それに俺たちはこの世界のお金も持ってない」
「うん⋯何をするにしてもお金が無いとね⋯⋯⋯」
日が暮れ始めたので、外壁の傍で地下空間を作り、その中で今日は休むことにする。
「結局何も思いつかなかったな」
「そうだね。何か私にできることあったら⋯⋯」
「この地下で暮らすしかないのか⋯⋯」
「そしたらまた川に行ってお魚取らないとだね」
地下か。
ん?
侵入することなら地下から可能なんじゃないか?
真夜中にギルドの場所を確認して、誰かに見つかる前に登録すれば、身分証明を獲得出来るかもしれない。
これは行けるんじゃないか?
さっそく俺はアサミさんに説明をする。
「いい考え!でも結局タロウくん任せになっちゃう⋯⋯⋯⋯」
「それは気にしないで。アサミさんの為にやれることはやりたいんだ」
「タロウくん⋯⋯⋯」
2人で本音をぶつけ合ってからさらに距離感が近くなった。
今も俺の名前を呼びながらしなだれかかってくる。
まだまだ慣れないが、俺もアサミさんの肩を抱いている。
あれから何度もアサミさんにしてもらっている。
でもまだキスもしてないんだ。
付き合ってすらいない。
口約束の恋人同士にもなっていないのに、この関係はいかがなものなのだろうか。
「そうと決まったらここから街に向かって地下空間を広げていこう」
「秘密の通路だね!私は応援することしか出来ないから、たくさん応援するねっ」
「アサミさんの応援があればなんだって出来ちゃうよ!ありがとう!」
「ガンバレガンバレタロウ!」
カメラ!誰かカメラを持ってこい!
くっそ、撮りてぇ、撮りてぇよこの可愛い生き物を!
俺はアサミさんの応援で2人が通っても問題ない通路を街の方へ向けて伸ばしていく。
アサミさんの応援があると、より出力が上がる気がするんだよな。
本当に百人力だ。
何メートル進んだかは分からないが、勾配をつけて上に進んでいく。
民家や建物の真下に出ないとも限らない。
何度も試して人気のない場所を探すことにした。
3日ほど試し、人気のない場所を見つけた。
「アサミさん、ここなら誰にも見つからなそうだ」
「やったねタロウくん!」
ここからギルドを探さなければならない。
各種ギルドと言っていたが、どんなギルドがあるのかは分かっていない。
森で冒険者と名乗る3人組が居たんだ。
冒険者ギルドは存在するだろう。
分からなければ危険だが人に聞くしかない。
人が少なくなる日暮れ頃に俺は街に行き、通行人に冒険者ギルドの場所を聞き出すことに成功した。
優しそうなお姉さんが居てよかった。
「ふーーーん、そんなに綺麗な人だったんだ!なんで男の人じゃなくて女の人に話しかけたのかな~?」
なんて1時間ほど正座で問い詰められたのは割愛しておく。
アサミさんはヤキモチ妬きなのかもしれない。
その日の夜はいつもより激しかった。
「タロウくんが他の人に目移りしないように頑張らないとっ」
そんなに真下に引っ張ったら、少し⋯⋯⋯いや、結構痛いんですが⋯⋯
「まだまだできるよねっ、たくさんしないとっ」
アサミさんの手は最高でした。
「私もしたい⋯⋯⋯⋯」
下着越しで擦れ合わせるのも気に入ったようで、手でした後はそれをしている。
俺の上に跨り自分で腰を振るようになっている。
「これすごいのっっっっ」
アサミさんも気持ちいいのだろうか、終わる頃にはいつも身体を痙攣させるように小刻みに震えている。
「はぁはぁはぁはぁ⋯⋯⋯⋯」
5回戦はきつい。
でも幸せだから抱きしめてそのまま寝た。
もう普通に最後までしてもいいんじゃなかろうか。
そんなことを考えながら眠りにつく毎日だ。
だが今じゃない。
しっかり暮らせるようになって、アサミさんと恋人になりたい。
その時にちゃんと告白しよう。
この数日でわかった。
俺はアサミさんのことが大好きだ。
日本に帰れなくてもいい。
アサミさんと一緒なら⋯⋯⋯⋯
振られたらどうしよう!
面白いと一欠片でも思って頂けたなら、お手数ですがブクマと星評価をよろしくお願いいたします。
特に星評価をもらえると最高に喜びます。




