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妄想31 血の噴水

よく分からなかった。


アサミさんは話しかけてくれている。


返事はしてたろう。


俺の思考は真っ白だった。


魚を食べたのか、果物を食べたのか、それすらも分からなかった。


どうやって地下に作っていたところから出たのかも覚えていない。


俺は何をしたんだろうか。


調子に乗りすぎたのだろうか。


なぜ夢と現実を理解できなかったのだろうか。


今となっては後の祭りだ。


終わった。


俺はなんてことをしでかしたんだろうか。


自責と後悔、そして懊悩。


それらが頭をぐるぐる回っている。



「た、タロウくん、あれ⋯もしかして⋯」


「あぁ⋯」


『ガウガウッ!ヴゥゥゥゥゥ!』



何かあったんだろうか。


何も分からない。



「やっと見つかったな」


「やっぱりいい女だな」


「おいおい、お前ら落ち着けよ」



なんか男の声がするな。



「どうしようタロウくん⋯近づいてくるよ⋯」


「あぁ⋯」


「君たち、やっぱりまだこの森にいたんだな。俺達も街に戻るから一緒に行かないか?」


「あぁ⋯」


「え?タロウくん?本気?」


「あぁ⋯」



何が起こってるんだ?


よく分からない。



「へっへっへっ女はこっちに乗りな」


「おいおい、乱暴にするなよ?」


「なーに、少し楽しむだけだろ?そんくらい許せよ」


「使い物にならなくするなよ?」


「当たり前だろ、みんなで楽しんでから、だろ?」


「はは、わかってるならいいさ。さぁ、君は中に。男の君は⋯」


「きゃああああああっタロウくん!タロウくんんんんん!」



なんだ?


殴られたのか?


はは、今の俺は殴られるくらいじゃ許されないだろ。


やるならどんどんやってくれ。


それこそ死ぬほどにな。



「いや、いやぁぁぁぁ!タロウくん!助けてタロウくん!」


「へっへっへっ大人しくしろや」


「ははは、いいなこの女」



なんだ?


アサミさんが助けを?



「男はいらないからここで死んどけ」



なんだ?


何が起きてる?


視界が急にクリアになった。


目の前にはにやけ面で剣を振り下ろそうとしているガイナムの姿がある。


なんだこいつ、なんで剣を?


そしてその後ろでは羽交い締めにされているアサミさんが見えた。


泣いている。


アサミさんが泣いている。


俺が泣かせた?


俺か?


いや、違う。


そうじゃない!



「はっはっは⋯は?」



俺は腕を振った。


射線上に3人が並んでいた。


アサミさんが赤く染まる。


羽交い締めにしてる男の首から血が吹きでている。


ハイドロスラッシュで3人まとめて首を切り落とした。


血の噴水が3個だ。


汚ぇな。


アサミさんに駆け寄る。


すぐにクリーンをかける。



「ごめんアサミさん⋯⋯⋯」


「うっうっ⋯」


「ごめん⋯⋯⋯」



アサミさんの震えて泣いている。


俺は優しく抱きしめた。



「怖いよな⋯」


「ううん⋯もう怖くない⋯助けてくれてありがとう⋯」


「そうじゃない⋯人殺しになってしまった⋯抱きしめる資格なんてないのに⋯」


「そんなことない!タロウくんは私を助けてくれてんだもんっ!」


「でも⋯」


「いいの!タロウくんは悪くないよ!」


「それでも俺は⋯それにさっきもアサミさんに酷いことした⋯」


「酷いこと?さっき?」


「あぁ、地下の部屋で⋯さっきもだし、夜も⋯」


「あれは、嬉しかった⋯⋯よ?」


「⋯⋯⋯⋯え?」


「私がしたかったの⋯タロウくんと⋯」


「え?」


「い、いきなりだったから驚いたけど⋯」


「ま、待って、ほ、本当に?」


「⋯⋯⋯うん」



えっと⋯⋯⋯⋯解決ってことでいいか?


アサミさんに嫌われてないなら良かった。



「タロウくん、あの、ここから離れない?」


「そう⋯⋯⋯だな。まだ頭が混乱してるけど、人殺しになっちゃったな」


「う、うん⋯⋯ごめんねタロウくん⋯」


「アサミさんのせいじゃないよ。俺がしっかりしてなかったから⋯」



実際そうだ。


昨日の夜からおかしなことになっていた。


緊張の糸が切れてしまってたのかもしれない。


結局アサミさんを危険に晒してしまった。



「助けてくれたよ?今だけじゃない。ずっとタロウくんは私のこと助けてくれてるよ?」


「うん⋯⋯⋯⋯」


「タロウくんこそ私のせいでこんな⋯」


「いや、それは違⋯⋯⋯」


「違くない!タロウくんが最初から私のこと追いかけてこなければタロウくんはずっと日本に居れたんだよ?悪いのは全部私なの!こんな風になってるのも、タロウくんが人を⋯⋯⋯全部、全部私のせいで!」


「アサミさんは悪くない!俺がしたいからしてるんだ!」


「ごめんなさいタロウくん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい⋯うっうっ⋯」



なんでこうなったんだ。


やっぱり俺がしっかりアサミさんを守らなかったから⋯


くそっ!


アサミさんを守ると誓ったろう!


この子の身の安全だけじゃなく、心まで守らなかったらダメなんだ。



「アサミさん⋯守るよ。これからもずっと。アサミさんを傷つけないように⋯絶対守るから⋯⋯⋯⋯」


「なんで?なんでなの!なんでタロウくんはそんなに優しいの!関係ないのに⋯⋯こんなダメな女になんでそんなに優しくするの!やめて⋯⋯⋯⋯苦しいよ⋯⋯優しすぎて苦しいよ⋯⋯⋯⋯」


「分からない。なんで守りたいのか。でも守りたいんだ。だってそうじゃなかったら勢いだとしても追いかけない。俺だってダメダメだ。アサミさんを泣かして困らせて。自分の性欲の捌け口にして⋯あんなことして⋯ごめんアサミさん」


「なんでタロウくんが謝るの⋯わかんない⋯わかんないよ!うっうっ⋯ひぐっ⋯」



どうしたらいいんだろう⋯


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