妄想19 寂しくなんてないんだからねっ
「お名前は何にしようかな~カッコイイお名前?可愛いお名前?何かな~」
拾った魔物とじゃれ合いながら進む。
そのため俺の左腕にはしがみつかれていない。
「お前はどんな名前をつけて欲しい?カッコイイ名前か?」
『クゥーーン?』
「違うのか?可愛い名前か?」
『クゥーーン?』
「これも違うのか⋯普通の名前か?」
『クゥーーン?』
「なんだろうか。そもそも性別はあるのか?」
「タロウくん!この子ついてないよっ」
んなっ!
なんてことをしているのか。
ついてないのはわかった。
何を見ようとしたのかも理解した。
あんな風に俺も確認されたい⋯
いや、されなくてもいいか。
⋯⋯⋯待てよ、よく考えろ。
仰向けで犬のように服従のポーズをしよう。
ご主人様、確認してください。
ああ、大きくしてごめんなさいいいい!
みたいな感じか?
⋯⋯⋯⋯なし寄りのアリか?
危ないな、アサミさんといると新たな境地を何個も開きそうになる。
ノーマルすら経験ないのに、アブノーマルに目覚めたらどうするんだ。
危ないとこだぜ異世界。
「女の子なのか?魔物に性別あるのかちょっとわからないな」
「こんなに可愛いから女の子だよっ!タロウくんは女の子を助けるヒーローだもんねっ」
「助けたことあるのなんてアサミさんだけだなぁ。でもその子も助けた事になるのか」
「女の子に囲まれるなんて、タロウくんはモテモテだねっ」
「は、ははは⋯人生で初めてのこと過ぎて戸惑いしかないよ⋯」
モテモテか。
憧れたことはあるけどなぁ。
俺には縁のない話だ。
夢のまた夢、妄想の中だけの出来事だ。
ハーレムの妄想したりしたなぁ。
「名前って考えるの難しいよね」
「名付けなんて俺もしたこないからなぁ」
「私もないよ~」
「女の子なんだし、アサミさんと姉妹って感じにして、アケミなんてどうかな?」
言ったけどダメだろ。
どこの場末のスナックのキャストの名前だ?
アケミちゃーん3番テーブルおねがーい
ってね!
いや、そんなこと言ったら全国のアケミさんに失礼だな。
高橋先生の昔の漫画の影響力やべーな。
親が持ってたから読んだことあるが、あれは名作ラブコメだった。
「アケミちゃんか~うーん⋯」
「あんまりセンス良くないよな。白い毛並みだから、シロ?」
「それじゃあ男の子っぽい!」
「ダメか~俺にはセンス無さそうだからアサミさんに任せる!」
「私も自信ないよ~。うーん⋯」
『クゥーーン⋯』
2人と1匹で悩みながら歩く。
あの魔物を倒したおかげか、重苦しい雰囲気はなくなっている。
アサミさんとペットになった魔物がじゃれ合ってるからだろうか。
なんにせよ危険な感じがなくなってよかった。
「クゥちゃん!君は今日からクゥちゃんだよっ」
いいんじゃないか?
「クゥちゃんなんて可愛いし、素敵だな。やっぱりアサミさんにお願いして良かった」
「ふふ、ありがとうっ君も気に入ってくれたかな?」
その子は俺とアサミさんを何度か首を回し見てきて、
『ガウッ!』
と嬉しそうに鳴いた。
「なんだか喜んでそうだな。よし、今日からお前はクゥちゃんだ。皆で仲良くしような」
「うんうん、クゥちゃんよろしくねっ」
『ガウガウッ』
仲良くなれそうで良かったが、魔物を連れて街に入れるのだろうか⋯
この世界にテイマーとか存在するのかすら分からないからな。
魔物と仲良くしてる危険人物と思われたら迫害されるかもしれん。
最悪は討伐対象だ。
そうなったら迷うことなくクゥちゃんを捨て⋯
なんで見てる俺をクゥちゃんよ。
いいか、俺とアサミさんの安全のためにはそうするしか⋯
瞳をウルウルさせるんじゃない。
ここは見知らぬ異世界なんだ、俺とアサミさんが生きてくには障害が多い。
だから残念だけどクゥちゃんは⋯
待て、なんでアサミさんまでウルウルして見てくるんだ?
どうあってもアサミさん優先なんだ。
アサミさんを危険に晒すわけには⋯
『クゥーーン⋯』
「クゥーーン⋯」
ぐはっっっっ!Wクゥーーン頂きました!
捨てません!見捨てません!何度でも拾います!クゥちゃんも助けます!世界が敵に回ってもアサミさんとクゥちゃんは俺が助けます!
はぁはぁ、なんなんだこの子達は。
2人して俺の心が読めるのか?
つーかなんだよアサミさんのは。
殺しにかかっきてるとしか思えない。
アサミさんとクゥちゃんで顔を寄せあって、瞳をウルウルさせ、上目遣いからのクゥーーンって⋯
これをあざといと言うのか?
それともぶりっ子?
どっちとも接点がなかったから分からないぜ!
モテ男くん教えてくれ。
「ふふ、楽しいねタロウくんっ」
「そうだな。クゥちゃんが増えただけで、癒されるな」
「うんうんっ!タロウくんの魔法のおかげだねっ」
「アサミさんが助けようって言ってくれたからだな」
『ガウガウッ』
楽しく話しながら俺たちは進んでいる。
アサミさんはクゥちゃんと戯れまくりだ。
それを見て俺は癒されまくりだ。
でもあの感触が左腕にないのが⋯
くっ、寂しくなんてないんだからねっ
面白いと一欠片でも思って頂けたなら、お手数ですがブクマと星評価をよろしくお願いいたします。
特に星評価をもらえると最高に喜びます。




