妄想10 1人の夜
タロウくんに頭を撫でられてたら、私はすぐに眠ってしまった。
何時間寝たんだろう。
スマホはあったけど、確認することも無かったので時間は分からない。
目を覚ますと、タロウくんは私を見ながら頭を撫でてくれている。
ずっと?
本当に?
私が寝てる間、ずっとしてくれてたの?
嬉しい。
またこのまま眠ってしまいそうになる。
でも起きないと。
タロウくんも寝かせてあげないとだから。
でもあと少し、こうさせて欲しくて彼を見る。
うっすらと開けている目で見ても、彼の顔はよく見えた。
彼の目が表情が、とても優しかった。
それを見て、頭を撫でられていたら、私はまた眠ってしまった。
「アサミさん、そろそろ起きれる?」
「う、うーん⋯⋯⋯」
すっかり私は寝入っていたのね。
「私ってどのくらい寝てた?」
「4時間くらいかな」
「そんなに?ありがとうタロウくん。今度はタロウくんが寝ないとね」
「うん、もうそろそろ限界で⋯」
「本当にありがとう、ゆっくり寝てね」
「ありがとう⋯」
本当に限界だったんだ。
タロウくんは倒れるように横になる。
私はそれを懸命に支えた。
ありがとうタロウくん。
タロウくんの頭を私の太腿の上に乗せる。
仰向けで寝かし、タロウくんの寝顔を見つめ、頭を撫でる。
初めてした。
これが膝枕。
異性にされるのもするのも初めて。
頭を撫でられるのだって膝枕だって親以外にされたことない。
今日の私は変だ。
普段の私じゃないみたい。
こんな元気なキャラじゃないのに。
大学でだって未だに友達も出来ないぼっちで、高校だってそうだった。
喋るのも得意なほうじゃないのに。
なんでだろう。
この世界が自分のいた世界ではないから?
それともタロウくんだから?
なんでこの人は私を助けてくれるのだろう。
なんでこの人は助けに来てくれたのだろう。
自分でもよく分からない。
ファーストネームで男の人を呼んだり、手を握ったり、腕を組んだり。
それに⋯抱きついたよね私って⋯
今日の出来事をひとつずつ思い返す度に顔が体が熱くなる。
なんてはしたないことをしたのだろう。
ああ、そうだ。
私はタロウくんの裸まで⋯
全部見ちゃった。
⋯は大きかった。
タロウくんは背も高い。
手も大きい。
おしりも可愛かったな。
私とは全然違う。
ドキドキしてるのを隠すように必死にはしゃいでたような気がする。
ずっと無我夢中だった。
私に出来ることないかずっと探してた。
全部タロウくんが解決してくれる。
自分のことをキモくて陰キャって言ってるけど、どこがだろう。
こんなにカッコよくて頼りになって優しい人⋯
私⋯⋯初めてだよ。
知らない世界でタロウくんが寝ている。
今は私1人。
それなのに不安な気持ちにならないのはなぜ?
あなたがそこにいるから?
あなたを見て、あなたを撫でて、そばいるだけで安心する。
焚き火と星空の明かりしかない。
魔物がいつ来るかもわからない。
それなのに安心感に包まれている。
不思議。
このまま帰れないのかな。
タロウくんは生きて帰ろうって言ってくれた。
でもタロウくんとなら、ずっと2人でもいいかも。
そう思っちゃったんだ。
ありがとうタロウくん。
私もタロウくんのこと支えるからね。
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