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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第三章:俺と恋しよう?(第14代目六連星始動)
60/112

60.誰かのヒーロー


 樺山さんから情報を得た日の昼休み。

 私は覚悟を決めて、光輝くんを校舎裏に呼び出した。


 待ち合わせ場所に向かうと、光輝くんはすでにそこにいた。

 天を仰ぎながら、壁にもたれて、ため息をついている。

 

 普段は明るいムードメーカーな彼の辛そうな様子に、胸が締め付けられる。

 

「光輝くん⋯⋯」


 少し離れたところから声をかけると、彼はこちらに向かって走って来た。

 正面から、がばりと抱きしめられる。


「小春ちゃん⋯⋯誕生日の日はごめん。しかも俺、その後のフォローも出来ずに。ごめん。ごめん」


 光輝くんは謝ってくれた。

 辛そうに何度も何度も⋯⋯


 震える声や手の冷たさ、腕に込められた力の強さから、彼の気持ちは痛いほど伝わってきた。

 それでも、今みたいな曖昧な説明のままでは、受け止める事は到底できない。

 

 私は両手で光輝くんの胸を押し返し、その腕から逃れた。


「え⋯⋯小春ちゃん⋯⋯」


 傷ついたように表情を歪め、その場で固まる光輝くん。

 そのあまりにも辛そうな反応に、罪悪感が湧く。


「ごめんなさい。でも、今のままじゃもう、光輝くんのこと男性として見れません。誕生日に理由もなく私を一人ぼっちにする人と、恋なんてしたくない。ブレスレットも受け取れません」

 

 カバンからジュエリーボックスを取り出して、彼の胸に押し当てると、彼の表情はますます歪んだ。

 でも、ここではっきり伝えておかないと、ズルズルと引きずり込まれてしまうから。

 

「一昨日、光輝くんが会ってたのって、小倉先輩じゃないですよね? 私、本当は着信画面が見えちゃったんです」


 もう隠しきれないと悟ったのか、光輝くんは覚悟を決めたように語り始めた。

 

「あの日、電話の相手は一華やった。昼間、嫌なことがあったから、大量に薬を飲んだっていう連絡やった。助けに来てくれないなら、手首も切るって」


 昼間あった嫌なことって、もしかして、私と話したこと?

 それで辛くなって、自ら薬を飲んで、光輝くんに助けを求めたの?


「病院には? 一緒に行ったの?」


「いや。結局、薬飲んだっていうのも嘘やったって。だから病院にも行かずに、ずっと泣きつかれて、慰めてた感じ。俺さえそばにいれば、アイツは落ち着くから。けど、実際に薬を飲んでたことも過去にあるから、突き放せんくて」

  

 光輝くんは恩人である一華さんを必死に支えている。

 自分だってダメージを受けているのに。


「俺のディア能力が一時期下がったんは、正直一華の影響やと思ってる。けど、小春ちゃんがいてくれたから持ち直せた。六連星を続けられた」


 一華さんの支えが光輝くんであるように、光輝くんの支えもまた私なんだ。

 だとしたら、私はどうしたらいいのか⋯⋯


「光輝くん、一華さんを救う方法を一緒に考えましょう。私に出来ることがあれば何でもしますから」


 光輝くんの手を握ると、彼は驚いたように私の顔を見た。


「絶対にもう終わりやと思ってた。ありがとう、小春ちゃん」


 心細そうだった光輝くんの表情が、安心したように和らぐ。


 ただし、一旦、私たち二人の関係は、友達以上ではなく、友達に戻ることにした。

 恐らくそれが一華さんの一番の望みだし、私も今は前に進みたくなかったから。

 

 とは言え、休みの日は引き続き二人で過ごすことが多かった。

 そして、休みの日に限って、光輝くんの携帯には一華さんからの連絡が入る。


 訓練中や任務中には連絡してこない辺り、光輝くんが対応できるギリギリの範囲を分かってるんだ。


「『来てくれないなら飛び降りる』って」


 一華さんの心が辛いと叫んでいるのは理解できる。

 でもそれは同時に、優しい光輝くんへの強烈な脅しでもあった。


「一華さんのお父さんお母さんは?」


「電源は入ってるけど、繋がらん」


「警察に連絡するのは?」


「うわさにでもなって、モデル生命が絶たれたら、完全に居場所が無くなるやろうから⋯⋯」


 じゃあ、結局、光輝くんが行くしかない――ってなるんだ。

 

「またかよって思う時もあるけど、今度は嘘じゃないかもって思ったら⋯⋯」


「そうだよね。行ってあげて。⋯⋯って、私が言うのも変ですけど」


 光輝くんは急いで一華さんの元へと向かった。

 私と光輝くん。

 対エイリアンのヒーローである私たちだけど、所詮はただの高校生。

 一華さんの救い方は、手探りで考える他なかった。

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