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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第二章:恋のはじまり?(六連星始動準備期間)
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21.憧れの戦闘服

 六連星(プレアデス)として活動継続が決まり、訓練に忙しい日々を過ごしていた頃。

 

 朝、六人でのミーティングの際に、少し遅れて部屋に入ってきた陽太さんは何やら浮かれていた。


「あれ? 陽太さん、何か良いことでもありました?」


 ご機嫌な様子の陽太さんは、足取り軽くテーブルについた。


「あぁ。遅れてすまない。実は、ちょうど今そこで総務部長と話をしていたんだ。今期の六連星の戦闘服が完成したからと、今から持ってきて貰えるそうだ! これから各々試着して、不備がないか確かめてくれ。問題があれば、来月24日の本格始動前に最終調整を行って欲しい!」


 陽太さんは白い歯を見せながら、拳を天井に向かって突き出す。

 

「きたー! 六連星専用衣装! 今代の13代目が鳥で、その前は猛獣がモチーフでした。果たして私たちは一体どんな姿に⋯⋯」


「やっぱりヒーローと言えば戦闘服! その姿から放たれるのは、場の空気を征する圧倒的存在感や!」

 

 大興奮の私に負けないくらい、光輝くんも興奮したご様子。

 それに対して、冬夜さん、樹くん、海星くんは通常時と変わらぬ表情で拍手している。


 どうやら、私と陽太さんと光輝くんが、このチームのお祭り担当らしいと察した瞬間だ。


「ほら、防衛隊の戦闘服って、コスプレ利用禁止じゃないですか? だから、戦闘服柄のハンカチとかで手を拭いて、この気持ちを抑え込んでいたんですけど、どんなに手を伸ばしても届かなかった光が、今、目の前に⋯⋯」


 偽物の防衛隊員が現れると危険だからと、戦闘服のデザインを模した服の製作および着用は禁止されている。

 そのルールを破ると罰金を課されるケースもあるのだとか。

 

 無数のヒーローグッズを展開している防衛隊は、衣装の代わりに、戦闘服柄の巾着やエコバッグ、腕時計なんかを販売してくれていたのだ。


「めっちゃ分かる! 俺はスニーカー持っとった〜!」


「そうなんですか!? うらやましい! あれって販売数が少ないのか、うちの近所では売り切れで⋯⋯」


 光輝くんと騒いでいる内に、総務部の方々が段ボール乗った台車を押しながら、続々と入ってこられた。


「こちらがレッドです。こちらはブラックですね」


 透明なビニール袋に包まれた戦闘服を一人一人に手渡してくださる。


「こちらがピンクです。不備があったらご連絡くださいね」


 総務部の女性はニコッと微笑んだあと、部屋を出ていった。


 さてさて。私の戦闘服。

 憧れの六連星になった証。

 これから三年間、この服を着てヒーロー活動をするんだ。


「やばー! かっこよすぎぃ〜! 俺、似合いすぎぃ〜!」


「まぁ、思ってたよりもいい感じかも」


「例年とデザインの傾向が違うな」


「⋯⋯⋯⋯あり」


「みんな! よく似合っているぞ!」


 男性用更衣室からは光輝くんの声を皮切りに、みんなが興奮している声が聞こえてくる。

 


「ちょっと! 私も見たいです! みんなのも見たいし、自分のも見たい!」

 

 戦闘服が包まれた袋には、六連星のロゴが印刷されているから、これは絶対に記念に取っておきたい。

 破らないように丁寧にテープを剥がすのに、手間取り中だ。

 

 もたもたとしている内に、五人が更衣室から出てきた。


「どう〜? めっちゃかっこよくない?」


 ぞろぞろと出てきた五人の姿。

 その余りの眩しさに、キラーンと輝くお星さまのエフェクトが見えたような、そうではないような。

 とにかくそれはもう、目を開けて居られないくらいと言うことだ。


 第14代目六連星の戦闘服のモチーフは、ずばり西洋の騎士服。 


 白のスラックスに、金色で縁取られた濃紺のジャケット、足元は黒いブーツ。

 胸の部分に縫い付けられた、六連星のエンブレムが輝いていて、首元のネクタイや、肩に羽織ったアシンメトリーなマントに、メンバーカラーが使われている。

 

 これがあの特殊なジャージ素材で作られているというのだから、なんとも不思議だ。


「かっこよすぎて、言葉が出てきません⋯⋯今までは白ってNGカラーなの? ってくらい、ダークカラーとメンバーカラーの組み合わせが多かったイメージですけど、なんというか、とっても爽やかです。あと皆さんイケメンですね。眼福でございます⋯⋯」

 

 止まらない賛辞に、ドヤ顔の光輝くんに、照れる陽太さん。


「他人事みたいに言ってないで、早く着替えて来なよ。やったげるから、貸して」

 

 樹くんは、私がもたついている理由を察してくれたのか、代わりに丁寧にテープを剥がしてくれた。


「ありがとう! しばしの間、失礼いたします!」 


 戦闘服を抱えて、女性用更衣室に入る。


 黒のブーツと濃紺のジャケットはみんなと同じっぽい。

 私の場合は白のキュロットスカートだ。

 スカートの下には黒いタイツのようなものを履いている。


 特殊なジャージ素材は、伸縮性・通気性に優れていて、戦闘時も快適に動けそう。


 あと、男性陣はどうなのか知らないけど、下着も一緒に入ってるんだよね。

 採寸の時、あちこち測られたけど、こんなものまで支給されるとは。


 黒いレースのブラジャーを付け、あとはジャケットのファスナーを上まで上げてっと。


 ⋯⋯⋯⋯あれ?

 ファスナーが壊れているのか、布が噛んでいるのか、途中で止まってしまって、最後まで上がりきらない。


「どうした、小春くん。まだ完了しないか?」


 心配そうな陽太さんの声が聞こえてくる。

 こんなにもたついていたのでは、出動時に支障が生じる。


「すみません! ファスナーがおかしくなっちゃって! 最後まで上がらないんです!」


「なんだって? それは総務部に連絡しないといけないな。状態を見せてくれ!」


「そうですね。力づくでもびくともしなくって。こんな感じなんですけど⋯⋯」


 更衣室を出ると、心配そうな陽太さんが立っていた。


「どれどれ。確かにこれは硬いな。僕たちはすんなりと上がったんだが⋯⋯」


 すぐにファスナーの具合を確かめてくれた陽太さん。

 あっちの方向やこっちの方向に生地を引っ張りながらファスナーを動かそうとする。


「何をそんなに手間取っているんだ」


 やれやれと言った様子で冬夜さんが助けに来てくれた。


「だって、これ以上動かないんですもん。こんな中途半端な所で止まってしまって」


 陽太さんと交代し、今度は冬夜さんがファスナーを上げようと引っ張ってくれる。

 それでも一向に動かないファスナーを見つめながら、冬夜さんは、はたと動きを止めた。


「小春、これは壊れているんじゃない。これ以上、上がらないようになっているんだ」


 冬夜さんの言葉に私と陽太さんの頭の上にはハテナマークが浮かぶ。


「それってどういうことですか?」


「だから、そもそもファスナーのレールの部分がここで終わってるんだ」


 あごを引いて、冬夜さんが指さす部分を観察すると、確かにレールがそこで終わっていた。


「え? こんな中途半端な所で終わりってことですか? だって、ほら、手を離したらこんな風に⋯⋯」


 と言いながら、再び自分の胸元を確認すると、そこには恐ろしい光景が広がっていた。

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