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世界がキミに夢見ている!〜この星を守るピンクレンジャーの不器用な恋〜  作者: 水地翼
第二章:恋のはじまり?(六連星始動準備期間)
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19.温かい心

 お母さんに防衛隊を辞めろと叱られた私は、ゴミ捨て場でヒーローグッズが詰め込まれた袋を回収し、基地に戻った。


 六連星(プレアデス)の作戦会議室には、もう誰もいなかったので、今夜は休憩室に泊まることにした。

 ソファに横になり、毛布を被って目をつぶる。


 お母さんとの会話を思い出すと、自然と涙が溢れてくる。

 お母さんは私の事が心配だから、あんなに怒っているんだというのは分かる。

 でも、あんな一方的に暴力を振るわれて、力と脅しでねじ伏せようとされたって、正直反感しか湧かない。


 お母さんはいつもそうだ。

 私の希望なんて聞いてくれない。

 聞いてるフリ、歩み寄るフリはしてるけど、結局はお母さんが許容出来る範囲外には出させてもらえない。


 家出したなんてバレたら、ますます逆鱗に触れるのは明白だ。

 ここでのお給料があれば、高校の学費を自分で払いながら生活する事はできる。

 でも、親の同意書がなければ防衛隊は除隊になってしまうから、そうすると夢も、安定した暮らしも全て手放す事になる。


 これからどうしたら良いんだろう。

 今日はもう一日中頑張って疲れたんだよ。


 私、今日は誰かの役に立てたんだよ? 

 お母さんの言う普通の人生では、こんな経験出来ないんだよ?

 私の力は特別なんだって。

 だったら、私は自分の責任と役割を果たしたい。

 子供の頃からの夢を叶えたい。



「⋯⋯⋯⋯顔⋯⋯⋯⋯腫れてる」 

 

 突然、天井の方から声がしたかと思ったら、冷たいものがピタッと左頬に触れた。


「ぎゃー! おばけ!?」


 ソファを転がり落ちるようにして着地し、部屋の隅まで後退する。


「え? ⋯⋯⋯⋯海星くん?」


 暗闇の中目を凝らすと、ソファの側に立っていたのは、キョトン顔の海星くんだった。


「どうしたの? 忘れ物?」


 もう電車は動いていない時間だけど、海星くんは寮生活だから、基地内にいてもなんら不思議ではない。


「⋯⋯⋯⋯違う⋯⋯⋯⋯小春が⋯⋯⋯⋯泣いてたから」


 海星くんは首を振りながら答えた。


「え? やっぱり海星くんって、エスパーなの? その能力、私も欲しい! 最高にヒーローっぽい!」


 お化けかと思って十分にとった距離を徐々に縮めながら拍手を贈ると、海星くんは一瞬ニコッと微笑んだ。

 無表情キャラが見せる可愛らしい表情に、一瞬胸がときめく。


「⋯⋯⋯⋯痛い?」


 海星くんは私の左頬に右手を伸ばし、手の平で包むように優しく触れた。

 さっきの冷たい何かは彼の手の平だったらしい。


「痛いけど大丈夫。心配してくれてありがとうね。それよりも海星くんはこんなに手が冷たくて大丈夫なの? 冷え性?」


 海星くんは私の問いかけに二度頷いた。


「そうなんだ。ヒーローホットカイロとかあるけどいる? それよりも部屋でお風呂に浸かった方が効くかなぁ」


 先ほどお母さんに捨てられていたゴミ袋の中をガサゴソと漁る。

 うん。適当に部屋にあったものを放り込んであるだけで、概ね無事みたい。


「⋯⋯⋯⋯いらない⋯⋯⋯⋯冷やせない」


 海星くんは再び私の頬に冷たい手を当ててくれた。

 どうやら冷え性な手で処置をしてくれるつもりらしい。


「ありがとう。でももう大丈夫! 手が冷たい人は心が温かいって本当みたいだね! おかげで涙は引っ込みました! じゃあ、あまり身体を冷やしすぎないようにね!」


 お礼の印にと、未開封のヒーローホットカイロを海星くんの手に握らせる。


「⋯⋯⋯⋯うん⋯⋯⋯⋯ありがとう」


 海星くんはカイロを眺めて少し嬉しそうに口角を上げたあと、それをポケットにしまって、部屋を出ていった。



 海星くんが部屋を出ていったあと、気分が落ち着いたからか、すんなりと眠りにつくことが出来た。

 


 翌朝。

 みんなが出勤してくる前には起きて、身支度を整えた。

 そして、陽太さんに今回の事を相談する事にした。 


「そうか。やはりお母様の反対に遭ったか。確かにあの局面を動画で見たとなると、娘が心配になるのも無理はないな」


 陽太さんはアゴに手を当てながら真剣に話を聞いてくれた。


「それで、小春くんの気持ちはどうなんだ? お母様の反応を見て、心境の変化はないか?」


「そうですね。正直、心はかなり揺れています。秋人のことがあって元々母は不安定な所がありますが、あそこまで激昂されると、親に心配をかけている罪悪感があります。でも、私はずっと六連星に憧れていて、ここ最近は、毎日が充実していて⋯⋯それに、せっかく認めて頂いたこの能力を無駄にしたくはありません。このままヒーロー活動を続けて行きたいです。だから、陽太さん、お力を貸して頂けないでしょうか?」


 椅子から立ち上がり、深々と頭を下げる。

 今の私に出来ることは、味方になってくれる人を見つける事と、実績を証明する事。


「そうか。小春くんの気持ちが変わらないのなら、僕の答えだって変わらない。一緒にお母様を説得しに行こう。冬夜くんにも相談してみる。あとは、飯島本部長だな」


 陽太さんは励ますように私の肩をポンとたたいてくれた。

 そしてすぐに、冬夜さんと飯島本部長に話を通してくれ、お父さんとも連絡を取ってもらい、三日後に一緒に家に訪問してもらえることとなった。

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