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11話許嫁

清二と薫の関係が深まる一方で、薫の父・修蔵は薫の将来について密かに考えを巡らせていた。ある日、修蔵は古くからの友人である地元の有力者・藤田家の隆一を自宅に招いた。彼は薫の許嫁として隆一を考えており、娘の将来を安定させるためにその話を進めようとしていた。


その日、修蔵は薫を呼び出し、茶室で話をすることにした。薫は父親の厳しい表情を見て、何か重大な話があることを察した。


「薫、今日の茶会はどうだった?」修蔵は茶を点てながら問いかけた。


「お父様、おかげさまでお客様に喜んでいただけました。」薫は礼儀正しく答えた。


「そうか。それは良かった。」修蔵は一息ついてから、本題に入る。「実は、今日は大事な話がある。お前の将来についてだ。」


薫は心臓が高鳴るのを感じた。「将来、ですか?」


修蔵は頷き、続けた。「ああ、お前ももう十八歳だ。そろそろ結婚のことを考えなければならない。実は、藤田家の隆一君と話を進めている。彼は地元でも評判が良く、信頼できる男だ。」


薫の顔色が変わった。「お父様、それは突然すぎます。私にはまだ、結婚について考える余裕がありません。」


「薫、これはお前のためだ。隆一君はお前にふさわしい相手だと思う。お前の幸せを考えた上でのことだ。」修蔵の声には厳しさがこもっていた。


薫は何も言えず、ただうつむくしかなかった。心の中では清二のことが頭をよぎる。彼との時間が楽しく、彼に対する特別な感情が日に日に増していた。しかし、父親の決定を覆すのは簡単なことではなかった。


その夜、薫は一人で庭園を歩きながら、心の中で葛藤していた。月明かりが庭を照らし、静寂の中で自分の気持ちと向き合わざるを得なかった。


「どうすればいいの?」薫は心の中で問いかけた。「清二さんにこのことを話すべきか。それとも、お父様の期待に応えるべきか。」


その時、ふと背後から声が聞こえた。「薫さん、大丈夫ですか?」


振り返ると、そこには清二が立っていた。彼の表情は心配そうで、薫の様子に気づいたことが伺えた。


「清二さん…」薫は言葉に詰まった。


清二は一歩近づき、優しく問いかけた。「何かあったのですか?あなたの顔色が良くないように見えます。」


薫はしばらく沈黙した後、決心して話すことにした。「実は…お父様が、私の結婚の話を進めているのです。藤田隆一さんという方との見合い話です。」


清二の顔が一瞬険しくなったが、すぐに冷静さを取り戻した。「薫さん、それは突然の話ですね。あなたはどう思っていますか?」


薫は涙を堪えながら答えた。「私はまだ、清二さんとの時間が大切で…でも、お父様の期待も裏切れません。」


清二は薫の手をそっと握りしめ、「薫さん、あなたの気持ちを大切にしてください。僕はあなたが幸せになることを一番に願っています。」と言った。


薫はその言葉に心が救われる思いだった。「ありがとう、清二さん。あなたの言葉が、私の支えになります。」


二人はその夜、庭園で静かに話し合い、互いの気持ちを確かめ合った。薫の心は清二に強く惹かれつつも、父親の期待との間で揺れ動いていた。彼女にとって、これからの選択が大きな意味を持つことを感じながら、夜が更けていった。

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