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契約と秘密



「セージ様、私達魔女薬師が特別な薬を作ることができるのは何故だかご存じですか?」


「……調薬の時に魔力を使うから…ですよね?」


そう質問すると、少し考えて答える。


「ええ。一般的には、そのように言われていますね。

でも、その答えでは半分だけ正解です。

()()の魔女薬師の薬は、あと半分の方が重要。

それは、()()()がいることなんです」


彼は、よくわからないようで首を傾げる。


「一般的に販売されている魔女薬師の薬は、もちろん調薬時に魔力を注いで作られていますので効能は当然高いです。ですが、同じ薬でももっと効果が高い薬を作ることができます。

その条件が、()()()であり、“依頼人の()()()()”なんですよ。

しかし、普通、どんなに強い願いだったとしても願い自体には何の力もありませんよね?

それを、私たち魔女薬師の魔力に変換することができるのが〔契約〕なんです。


この〔契約〕は、対等な互助関係を成り立たせるためのものです。

つまり、“依頼者の強い願い”の恩恵を受けたけれど、依頼を遂行できなければペナルティが発生します。


今回の〔契約〕は……

“依頼人との状態共有”と出ています」


「私の状態共有…って…

…つまり、一緒に呪いを受けるってことですか?!


そ、そんな…

そんなこと、私の本意ではありませんっ!!」


彼も考えてもいなかった状況だろう。

驚きと困惑の色が濃い。


「しかし、私が遂行できなければセージ様の生死に関わります。

ですから、正当なペナルティです。


でも、裏を返せばそれだけ“大きな力を得ることができる”ということです!


私もまだ後継者がいませんから当然無茶な依頼は受けるつもりもありませんし、〔契約〕ももちろん持ち掛けません。

しかし、今のセージ様の状態などを考慮して…遂行確率は、今のところ…70%といったところでしょう」


「…その確率は、…高いのでしょうか?

それとも低いのでしょうか?」


「初依頼としては、非常に高いです」


そう伝えると少しほっとした顔になった。


(初対面の時点で全てを任せると、それも面と向かって言われたのは初めてだった。最初は、多かれ少なかれ疑いがあるのが普通なのだもの)


「ペナルティーに恐れが無いとは言えませんが全力で解呪致します。

私に任せていただけないでしょうか?」


そう手を差し出すと少し考えた後、

「わかりました。

どうぞよろしくお願いします!」


両手でしっかりと握手を返された。




彼も納得できたようだし、早速、契約書の作成にかかる。


契約の基本魔法陣を描いている専用の紙を引き出しから取り出し、魔力をインクに変換することのできる“薬師のペン”で契約内容を書き足していく。



魔法使いには()()()()と言われるように魔女薬師には“()()()()()”が必須魔道具だ。

契約書・薬のレシピ・護符書きなど書き残すことが多いためペン型になったと言われている。


色・形は様々で、師匠から核となる魔石とペンとなる精霊樹の枝を貰い、使い手の魔力を馴染ませてから自らペンへと成形する。

使いやすいように何度も形成し直しながら一生をかけて自分専用のペンに育てるのだ。


魔力調節の補助や魔力切れ予防など目的別でチャームをつけることも多くて種類は様々。

まだなりたての魔女薬師は、チャームを沢山つけている。熟練度が上がるにつれて少なくしていくのだ。

因みに、私のチャームは紛失防止とお守り代わりの軽い魔力封じと、とても実用的…



私のオパールのペンでさらさらと書き足されるたびに淡い赤色の光の文字が紙へと吸い込まれていく。

そして仕様が全て変わり、緑に光ったのを確認してペンを簪のように髪へと挿す。


「お待たせしました。

これが〔契約書〕です。

この魔法陣の構成は、基本は初めに話した依頼者の強い願いを私の魔力に変換するもの。

そして、新しく書き足したところが遂行出来なかった場合のペナルティーです。


ここの空いているスペースにセージ様の本来の名前を書き、契約書の右端辺りに血を1滴垂らすと契約が完了します」


そう伝えると、契約用の針の付いたペンとインク瓶を差し出した。


彼は深く頷き、契約書に名前を書いて血を1滴垂らす。

契約完了の契約印が私とセージ様の手の甲に光って現れてスーと消えていった。



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