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告白



「マリー

俺、ちょっと出掛けてきてもいいかな?

帰りは…遅くなるかもしれないけど」


ジョセフおじいちゃんとトマスが帰った後、考え込んでいた誠司さんは、突然、出掛けると言い出した。


「え?今から?

予定は無かったよね?」


「…予定は無かったけど、ちょっと体を動かしたくなって……」


何とも歯切れが悪い。


(ん?出掛けたくなった?

夜遅くなるほどは、ちょっとではないよ?)


誠司さんは、たまにふらりと出掛けることがある。もちろん、私の護衛があるのでハクに断りを入れてからみたいだけど。

でも、2、30分程で戻ってくるので特に理由も聞かずにいたのだが、今回は私に伝える程長時間の外出。ここに来てからは初めてだ。


「もうすぐ夕方だし、そんなに慌てなくてもゆっくり明日朝からではダメなの?」


「……でもなぁ…」


(珍しい。誠司さんがはっきり言わないなんて。

……まさか!)


「…もしかして、トマスが何か気に触る事言った?」


「…… 当たらずと雖も遠からず…かな」


「そうなの…

トマスがごめんね、普段は人当たり良いんだけどなぁ…」


「どうしてマリーが謝るの?」


誠司さんは、眉間に皺を寄せて何だか怒ってるような声で聞く。


「えっ…?

だって…小さい頃から知ってるし、身内…あ、兄のような人だから……」


「兄…か。

でも、昔からそうじゃなかったんだろう?」


そう言われ、小さい頃を思い出す。

確かにそうだった。

でも…


「今は本当に兄のように思ってるよ。

よくあるでしょ?

小さい子が、お父さんやお兄ちゃんが好きで結婚するーって言っちゃうやつ。

そんな感じよ」


そう、そんな感じ。

同じくらいの遊び相手がいなかった私は、トマスが遊びに来ると、遊ぶのもご飯を食べるのもお昼寝するのもずっと一緒。

本当にあの頃は優しいトマスにべったりだった。


「マリーはそうでも、トマスは今でもマリーが好きだから…結婚の話が出たんじゃないの?」


「まさかー、ないない。

その話は、ジョセフおじいちゃんが指名したって……」


「でも、実際、俺はトマスから横槍を入れるな。軽い気持ちなら手を引けと言われたよ」


「……えっ?

どうしてトマスがそんなこと…」


「マリーは、トマスとの結婚の話は断ってこれ以上は何も無いと思ってるみたいだけど、トマスはきっとまだ諦めていない。

だから、俺は……




まだ、解呪の準備段階で伝えるべきでは無いことはわかってはいるけれど、…でも、何もしないまま後悔もしたくない。


俺、マリーのことが好きなんだ」




(え……?)


心臓がドクンドクンと誠司さんに聞こえるのではないかと思うほど脈打ち、手が震える。


何か言わないとと思うけど、その度に誠司さんの言葉を反芻してしまい、顔の熱が増して思考が停止するを繰り返してしまう。


誠司さんは、そんな私の手をそっと包んで、困ったように微笑んだ。


「マリー、落ち着いて。

そんなに動揺してくれるなんて思ってなくて…ごめん。


でも、少しは望みあるかな…っていいように解釈しちゃいそうだ」


(何か答えなきゃ…答えなきゃ…)


「…私、自分の気持ちがまだよくわからなくて…何て言ったらいいか……」


ようやく絞り出して何とか答えると、何だか申し訳なくてぽろりと涙がこぼれた。


「謝らないで。泣かないで…マリー

君を困らせたい訳ではないんだ…


俺が君を好きなだけ…

ただ、それを知ってて欲しいだけで答えを貰えるとも思っていない。マリーは何も謝ることなんてないんだ。逆に俺が謝らなきゃいけない…

ごめんな、俺のわがままで君の心を乱してしまって…


やっぱり、今から出掛けてくる。

今、無防備なマリーの側にいると、俺の気持ちを()()()()()で表しちゃいそうだから頭を冷やしてくるよ」


冗談混じりでそう言うと、出掛けて行った。



入れ替わりで来たハクに抱きつく。


「ハク…

私、どうしたらいいの?」


『それは、マリーが考えるしかない。

その答えが、セージにとっていい答えでも悪い答えでもな。



…人間は大変だな。

己のつがいが誰なのかわからないのだから』









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