名門・さく女生徒会! 1
次の日、私はいつものように、ありさちゃんと連れ立って、桜並木の坂道を登っていった。
「ねぇ、聞いた?」
「ん? なに?」
「昨日、夕方、商店街でテロがあったんだってぇ~」
「え!?」
ビックリだ!
あっ、どおりで、昨日のカラオケからの帰り道、ヘリコプターが空を飛びまわったり、人が多く集まったりしてたわけだ。
「なんでも、どこからか高周波攻撃があって、何百人も被害にあったんだってぇ~」
「へぇ、こんな静かで平和な街でも、そんな悪いことする人いるんだねぇ。日本政府の治安対策って、どうなってるんだか・・・・・・・」
「ほんと、心配だよねぇ~」
なんて、言い合いながら、バス停までくる。
私もありさちゃんもさりげなく身構えて、あいつが飛び出てくるのを待つんだけど・・・・・・
ほら、きた! ショートカットの小柄な・・・・・・
「・・・・・・・・・!?」
スカートはいたアイツが、飛び出してきた!
「つかさちゃん、おはよう! 昨日は、お友達になってくれて、ありがとう! これからもよろしくね?」
思わぬ攻撃に、一瞬で固まってしまった私に、ソイツは昨日のように、頬へ口付けしていった。
「ひっ、ひぃぃぃ~~~!!!」
そいつ、熊坂光は、くるっと私に背を向けると、足早に坂道をかけて上っていく。そして、10メートルほど離れたところで、振り返り・・・・・
「つかさちゃん、また、学校でね」
バイバイってちいさく手を振って、去っていった。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
ありさちゃんと目が合った。
「あのヘンタイ男いつから女に・・・・・・」
「ぎゃぁぁ~~~!!!」
朝のホームルーム、担任が言うには、朝一に家族から連絡があり、学君は、昨日、学校の帰り道、不幸な事故にあって、今日はお休みらしい。
なにがあったんだろう? ほんと心配。あの丈夫なだけがとりえの学君なのに・・・・・
けれど、学君になにがあったのか知らないかって、私に後で訊いてきたのは、数人の女子だけ。男子のほとんどは、なんだか、当然の報いだ! とか 天罰じゃ! とかなんとか、口々に言い合ってる。
あれ? 学君って、こんなに他の男の子たちから嫌われていたっけ?
それよりも問題なのは、私が校舎に入ったときから、みんなの様子が、なんだかヘン。
男子も女子も、こそこそ私を指差して、ひそひそと噂話をしている。
美少女に生まれついた私としては、学校であれこれと噂になるのには、慣れているけど。でも、今日のはいつもと違う。
いつもは、私をうっとりと見て、いいなぁ~とか、かわいいなぁ~とか、口々に言い合っているのに、今日は、えぇ~! だとか、うっそ~! だとか、驚きの表情で、私を見つめてる。
ち、ちょっと、なんなのよ! もう! 私に、言いたいことがあるのなら、はっきりいいなさいよ!
でも、噂話をしている同級生たちに視線を向けると、気まずげな表情で、慌てて視線を避けようとするし・・・・・・
そんな何がなんだか分からない、居心地の悪い私に、みんなの噂の内容を教えてくれたのは、やっぱりありさちゃんだった。
ほんと、頼りがいのあるいい子。清貴さんとのこと以外なら、すごく大好き!
でも、ありさちゃんの第一声は・・・・・・
「つかさ、あんた、レズなんだってぇ?」
「はぁ~!?」
一時間目が終わって、短い休憩時間。ざわつき始めた教室が一斉にしずかになった。
おい、おーい!
そんなことを教室の真ん中で明るく大声で言うか普通・・・・・
なんでも、昨日と今朝、私が熊坂さんに襲われている現場を目撃していた人たちがいて、その噂が学校中に流れたらしい。
そういえば、昨日、バイトを探していた男どもがふたりいたような・・・・・・
今朝も、登校途中で、何人か近くにいたし・・・・・・・
な、な、なんてこったい!
午前中の授業、同級生たちはもちろん、先生たちまでも、いつもと違う。
私が見ていないところで、こそこそと私を観察しているくせに、その視線に気づいて、そちらを向くと、みんな慌てて視線をそらす。そして、私がまた前を向くと、みんな隠れて私を見てるし・・・・・
なんか、うっとうしい~
気の小さい男の子たちが、そういう風にして、私を眺め満足しているのなら、いつものことだし、慣れっこだから、別に気にもしないんだけど。教室中の男子はもちろん、女子たちまで、同じようにされると、気が散って気が散って、授業の内容が全然頭に入ってこないよ!
それに、あなたたちだって、そんなに私の方ばかり気にしてたら、勉強にならないでしょうに・・・・・
もう、ほんと、うっとうしいんだから!
でも、そんな風に授業に身が入らず、上の空なのは、私たち生徒ばかりでもなくて、先生たちも、やっぱりそう。なにか言いたそうに、私を見ているくせに、私と目が合った途端、狼狽して、教卓からチョークを落としちゃったり、黒板消しを取り損ねたり・・・・・
一体、なんだっていうのかしら?
私に関して、事実無根のヘンな噂が流れているからって、それが、あなたたちに何のかかわりがあるっていうのだろう?
すごく、ヘン!
うざい! うざい! うざい!