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ゆりデビュー 5

 大嫌いな梅干しおにぎりを苦労して飲み込んで、お口直しに、お茶を一杯。

 ほっと一息ついて、ワイワイ盛り上がってる女の子たちから視線を外す。

 教室の中は、3分の1ほど席が埋まっているだけで、ほとんどガラガラ。

 私たちお弁当組以外は、購買部でパンを買ったり、食堂でランチしたりしているみたい。購買組も、いちいち教室にもどってきたりしないで、食堂や中庭のベンチで食べている。

 教室の中、グルっと視線をめぐらすと、何人かの男の子は、慌ててそっぽを向く。で、私の視線が通り過ぎた頃、恐る恐る私に視線を戻すんだよねぇ~。

 ホント、うっとうしぃ~

 そんなに、私のことを見つめても、あなたたちでは、私の恋人役として力不足なのよ。

 視線が教室を半周すると、廊下側の席で、中川っていうテニス部の男の子が、私の視線を避けたりせずに、しっかりと受け止める。彫りの深い、男くさい顔立ちの男の子。女装させたら相当な美少女になりそうな繊細な顔立ちの学君とは、好対照。いかにも、女の子になれた、プレーボーイ的な雰囲気。実際、何人か、彼にぞっこんの女の子がいるし。

 中川君、目が合った途端、軽く手を振ってくる。いかにも女の子慣れした仕草。様になっていて、格好イイかも。

 それに対して、私の方からは、必殺エンジェルスマイルが炸裂。

 勝負はあっけなくついちゃった。

 彼、手に持っている箸をポロリと取り落す・・・・・・

 私の圧勝ね。

 で、その中川君と一緒に男子同士でむさくるしくお弁当を食べているのが、副学級委員長の佐野君。

 でも、なんか感じ悪い!

 私が、エンジェルスマイルで中川君のハートをがっちり虜にしたのをみて、薄笑い浮かべてる。顔の表情は緩んではいるけど、目は鋭いまま。冷静に、私たちのことを観察している。なんのつもりなんだろう?

えい! こうなったら、佐野君もエンジェルスマイルで悩殺だ!

 そんなときに限って、気の利かない女子って邪魔してくれるんだよねぇ~。

「ねぇねぇ。つかさちゃんのポテトサラダ、おいしそう。私のきんぴらとトレードしよ」

 ポテトサラダ対きんぴら。圧倒的に、私の方が損してるような気が・・・・・

 ともかく、無事交換がすんで、再び廊下の方をみると、佐野君、私に背を向けて、他の男子とお話中。

 運のいいヤツめ! 今日のところは見逃してやる! 次回は、必ず、この美と愛の女神つかさ様のエンジェルスマイルで、かなわぬ恋に身を焦がさせてやるんだから!


 女子だけのお昼が終わった頃、教室にもどってきたのは、学君たち。

 入ってくるのを見つけた私、早速学君に声をかけた。

「学君、今日もいい? 放課後、二人なんだけど?」

「ああ、了解」

 指二本を細い眉毛に当てて、格好をつけて、ウィンク。それを見てた、周りの女子たち、わぁ~だとか、きゃぁ~だとか黄色い声を上げたりして。

 でも、その中に、一人だけ、うへっだなんて、いやそうな変な声。ありさちゃん、顔までしかめちゃって・・・・・・

 そんなありさちゃんの様子をチラ見しながら、学君、少し離れた自分の席へもどっていっちゃった。ちょっと複雑な表情を浮かべて。

 で、女子たち早速島崎君のことなんか忘れて、学君を話題におしゃべり開始。

「ねぇねぇ、つかさちゃんとまなピーって、どういう関係?」

 女子たちの視線がまた私に・・・・・・

「いとこ同士だっけ? つきあってるの?」

「いとこだけど、つきあってはいない」

 私は事実をいうだけ。それでも、目を輝かせて、根掘り葉掘りききだそうとするのが、女の子。

「えぇぇ! でも、いつも一緒じゃん!」

「そうそう、学校来るときも、毎朝二人して、抱き合ってるし!」

「ほんと、怪しいよねぇ~」

「って、私、だれとも抱き合ってません! あいつが勝手に、くっついてくるだけよ!」

「ほら、まなピーのことになると、すぐにムキになる」

「なってないわよ!」

「ほら、なってるよねぇ~?」

 ったく! なんだかしつこい女が一匹いるような・・・・・・

「それに昨日も、放課後、学君と体育倉庫の裏へ入っていかなかった?」

「えぇ~~二人、そんな仲だったの!」

「たのしそうに、おしゃべりしてさぁ~ あそこ、滅多に人がこないところだよねぇ~」

「えぇ~!! すご~い! 二人、そんな関係だったんだぁ~!」

 って、どんな関係だってぇの!

 ハァ~ 私ひとつため息。

「私たちが、体育倉庫の裏へ入っていくのを見たんなら、二人っきりじゃなかったのも、見えたでしょ?」

「え!? 気づかなかった・・・・・・」

 ったく! この子も目は節穴なの?

 あ、そうか、他の人もいたんだぁ~ とかなんとか、つぶやいてるし。おや、一瞬、顔がほころんだような・・・・・・

 もしかして、この子、学君のことが・・・・・・?

「だいたい、学君って、いとこだし、近所に住んでたし、子供のときからも知ってるしで、仲のよい幼馴染みだけど、いまさら彼氏とかって感じじゃないんだよねぇ。なんていうか、最初から圏外っていうかぁ。男性として見れないというか。そう、あれよ! あれ! 兄弟。私の弟って感じ?」

 それに、学君がすきなのは、私じゃなく、そこで我関せずって感じで、鏡のぞいてる女なんだし・・・・・・

「学君も、私のこと女兄妹ぐらいにしか、思ってないみたいだしね」

「そ、かぁ~ そうなんだぁ~」

 妙に安心したような表情を浮かべて、ひとりうなずいているさっきの女が一匹。なんか、楽しげな未来を思い浮かべていそうな様子だけど、私、あなたが不快なほどしつこかったこと、忘れてたりなんてしないのよ! 妙な夢を思い描いて、幸せな妄想にひたっている今こそチャンス! ここで、切り札を一枚切って、その夢をずたぼろに引き裂いてあげるわ! そう、さっきのお返しよ!!

「それに、小さいときから、一緒にお風呂とかに入ってたから、お互いのこと全部知りすぎてて、全然意識できないんだよねぇ」

 なんて、指に前髪をくるくる巻きつけたりして・・・・・・

 とたん、目の前のその女、視線を落として、自分の膝を見つめた。ふふ、唇をかんでるよ。ざまぁ、みろ!

 って、学君、そんなとこで、のみかけのコーヒー牛乳を全部噴き出しちゃって、どうしたの?

 それに、なんだか、クラスの男の子たち、学君のこと、すごい目でにらんでる!



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