桜色のしずく 5
反省会も終わり、解散になった。
私と委員長、熊坂さんは、並んで、玄関へと向かって歩いていく。
と、途中にある、視聴覚室から、ぞろぞろと男の子たちが出てきた。みんな帰り支度をしてはいるけど、サッカー部の部員たちばかり。今日は外が大雨になっちゃったので、サッカー部の練習お休みになって、ビデオを見ながらの戦術講義とかになったんだねぇ。
もちろん、サッカー部の部員なので、その中には・・・・・・
「島崎、帰りに駅前でカラオケしていかない?」
なんて、同じ部員に誘われている男子が。そして、私の隣には、思いがけないときにその男子の姿を目にしてしまって、耳まで真っ赤になってうつむいている女子が・・・・・・
「わりぃ! 俺、ちょっと教室に忘れ物してきたから、一旦、取りにもどるわ! また、今度な!」
なんて、私たちに気づきもせず、さっさと教室の方へもどっていっちゃった。
私の隣で、委員長、ちょっぴり落胆気味。
最後に視聴覚室から出てきたのは、サッカー部の顧問の先生。廊下の先に、玄関へ歩いていく部員たちの姿を見つけて・・・・・・
「おーい、お前ら、島崎見なかったか? あいつ、傘忘れていってるぞ!」
だなんて・・・・・・
でも、サッカー部の部員たち、自分たちのおしゃべりに夢中で、そんな顧問の先生に気づきもせず、廊下を曲がっていっちゃった。
ヤレヤレ、って感じで首を振りながら、ヒョイと振り返ると、視線の先には、私たち。
「あ、神宮寺か、今、帰りか。気をつけて帰るんだぞ! あ、そうだ、お前ら、島崎と同じクラスだったな?」
「はい」
「じゃ、あいつに傘届けてやってもらえるか?」
「あ、はい、いいですよ」
というわけで、私の手元に島崎君の傘が・・・・・・
これは・・・・・・ この状況って、何かに利用できないのかな?
なかなか想いを伝えられない女の子、その女の子に気づいてあげられない、鈍感な男の子。そして、その男の子の傘が手元にあり、外は傘なしじゃいられないような大雨。
それから、私考え続けながら、玄関まで移動した。杖を突きながら歩いていたせいばかりでなく、考え事をしながらだったので、さらにさらに、ゆっくりとしか歩くことができなかった。
玄関に着くと、熊坂さんは、D組女子の下駄箱コーナーへ。私と委員長はA組女子の下駄箱コーナーへ。
まあ、玄関でしばらく待っていれば、島崎君がやってきて、傘を渡せるだろうって思っていたのだけど、玄関の外を見てみると、すでに、ひさしの陰、ギリギリ濡れない場所に当の島崎君が立っていた。
島崎君、傘を持っていないので、恨めしそうに空を見上げている。傘をどこで忘れたのか、気づいてないのかなぁ?
きっと、島崎君のことを見ているって女の子がだれなのか、考えるのに夢中で、傘をどこで忘れたかなんて、思い出せないのかも・・・・・・
ともあれ、島崎君、小降りになった頃を見計らって、カバンでも頭に掲げて、走るつもりでいるみたい。さかんに空の様子を気にしてる。
その瞬間、私、ピンと来た。
そうだ! これなら・・・・・・
そして、それを実行した。




