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桜色のしずく 3

 何度も未練がましく、私の机の上のラブレターの山を何度もチラ見していた。

 そのたびに、熊坂さん、『大丈夫! ダイジョーブ!!』って、本当に大丈夫なのかなぁ~?

 今日は、私と熊坂さん、委員長の他に、ありさちゃんと名も無き女子4人組も一緒。全8人の大所帯でのランチ。

 女の子たち、委員長のお弁当をのぞきこんで、「わぁ~ カラフルでかわいい!」なんて、口々に褒めちゃって。

 でも、そのお弁当は、私たちみたいに、毎朝ママに作ってもらうのではなく、委員長が手作りしてきたなんて、聞いた途端、すごーい! って尊敬のまなざしで委員長を見たりして。

 驚いたことに、熊坂さんのお弁当も、熊坂さんお手製・・・・・・

「お姉ちゃんの分も作るから、ついでに私の分も」

 だなんて・・・・・・ ま、負けた・・・・・・

 やがて・・・・・・

「そろそろ、かな?」

 なんて、熊坂さん、一人でうなずき始めた。

 そのつぶやきが合図でもあったかのように、教室の前、黒板の上のスピーカーが、ガーガーなり始め、最近よく聞く声が・・・・・・

『神宮寺高校生徒会より、生徒会連絡』

 熊坂会長の声だ。この場合、神宮寺高校生徒会だから、熊坂副会長の方がいいのかな?

『生徒会連絡。関連各位、関係者に連絡事項。神宮寺つかさ関連』

 教室中の全員の視線が私に集まる。

「え!? 私!?」

 そんな中、スピーカーを通して、手元の紙がカサカサなるような音がして、メモが読み上げられ始めた。

『各位からの手紙等、ありがたく拝読させていただきましたが、こちら諸般の事情により、お申し出の件、お受けいたしかねます。 だそうだ。さて、みんな、ご愁傷様』

 って、えぇ~!! なにこれ!? えぇぇ~~!!

『今日、彼女の下駄箱に大量の手紙が入れられていた。彼女、優しいから、その大量の手紙に全部目を通して、返事を書くつもりだったみたいだけど、さすがに、量が多すぎて、物理的、時間的に不可能なので、こちらの方で制止した。手紙を読むだけでも相当な負担がともない、彼女の身が持ちそうになかったのでね。ともかく、彼女の意志としては、今はだれとも付き合うつもりはないそうだ。それは各自理解しておいてもらいたい。なお、この放送をもって、すべての手紙への返事とする』

 たちまち、さくらヶ丘のあちこちから、男子生徒たちのうめき声が・・・・・・

 それどころか、麓の神宮寺の方でも、校舎中に悲嘆にくれる嘆きが満ちたという・・・・・・

『みんなの自分の気持ちを伝えたいという純粋な想いは尊いものだと思うし、それが分かっているので、彼女も一生懸命それに応えようと努力はしてくれたのだが、さすがに、限度というものが・・・・・・ 彼女の時間や体力を大幅に削ってまで、そうするのはコクである。なので、今回、想いが通じなかった諸君、自分の一方的な想いを押し付けようとするのではなく、相手のことも慮って、相手に過度な負担をかけないということも学んでもらいたい。そして、この経験を糧に次の恋に邁進していってもらいたい!』

「・・・・・・」

「・・・・・・なに、あれ?」

「・・・・・・?」

 様々な疑問があるけど、でも、これで確かに私、あのラブレターの山から解放されたかも?

 これで、よかったのよね? 間違いじゃないよね?

 ハァ~~~


 で、スピーカーからの熊坂会長の声、まだまだつづいて・・・・・・

『次も、生徒会連絡』

 え? また? また、なにか私に関して?

 でも違った。

『うちのOより、Tへ。了解しました。今度の土曜日楽しみにしています。だそうだ。T君、おめでとう!』

 その途端、スピーカーの向こうで、誰かが慌てて、駆け寄ってくる気配が・・・・・・

『ち、ちょ、ちょ、ちょっと!』

『こら! いま放送中だぞ! 静かに!』

『か、会長~~~』

 ありさちゃん、真っ青になっちゃったし、私と熊坂さん、委員長、思わず、お互いを見交わしちゃった・・・・・・

 大崎先輩・・・・・・

 その放送の直後、多くの同級生たちが悲嘆にくれている中、神宮寺の2年生教室の片隅で、ひとりガッツポーズをしている田中という少年がいたとかいう。

 なにはともあれ、以降、神宮寺高校で長く受け継がれていくことになった、『愛の生徒会連絡』のこれが一番最初の放送だったのである。



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