伝統を守る! 6
まあ、梅田前会長の言うことにも一理ある。
いつまでも、さく女、さく女ってこだわっていても、もうすでに、そのさく女自体が存在しないわけだし・・・・・・
私たちは、これから神宮時高校の生徒として、生きるのだから、さく女にこだわるより、新しい歴史を作っていかなければいけないし、作らなければいけない立場。
でも、だからといって、感情面、特に、受験のさいの偏差値の差からくるさく女のエリート感情、神宮寺への侮蔑まで、簡単に乗り越えられるはずなんてない・・・・・・
大体、私たちは、さく女に入るために、中三の一年間、どれだけがんばったことか・・・・・・
最初から、神宮寺高校に入るのだったら、はっきり行って、勉強なんて、適当でよかった。毎日、遊んでばかりでも十分に合格点とれたんだよなぁ~
いまさら神宮寺なんて・・・・・・
私の、あの努力を積み重ね、我慢に我慢をしつづけた一年間を返せ! あらためて、私はそういいたい。
私が複雑な感情のまま、会長たちを眺めていると、私の携帯に電話が。
今はやりの明るい曲調の着メロが部屋いっぱいに流れた。
すごく場違い・・・・・・
ありさちゃんからだった。
本当なら、さっさと立ち上がって、廊下に出て、出るべきなのだろうけど、私は今足を捻挫中。その場で送話口を手で隠すようにして、出た。
『あ、つかさ、足怪我したんだって? 大丈夫?』
「うん、大丈夫。ありがと」
『今、剣道部の先輩たちに頼まれてたもの届けに来たら、受付で委員長が教えてくれたんだ』
「あ、そうなんだぁ~」
ってことは、今校門前にいるってことだね。
『帰りに、見舞いに行くよ。それまで今日は、家でおとなしくしてなよ』
「うん。あっ、でも、今、学校にいるんだよ」
『エッ? つかさ怪我してたんじゃないの?』
「うん、捻挫だって、10日ぐらいかかるって」
『結構、おっきいじゃん。そんなので、歩き回っても大丈夫なの?』
「うん、たぶん。それに、これから帰るところだから」
『そっか、じゃ、一緒に帰ってあげようか?』
「うん、そうね。裏門の駐車場へパパに迎えに来てもらうから、一緒に帰ろ?」
『OK、じゃ、玄関で待ってて』
「はーい」
パタンと携帯を閉じた。そして、会長たちへ挨拶。
「それじゃ、私、帰ります。全然、お役に立てなくて、申し訳ありませんでした」
「ああ・・・・・・ 気をつけて・・・・・・」
「いいえ。役に立ってないってことはなかったわ! 神宮寺さんがいてくれたおかげで、どれだけ助かったか・・・・・・」
梅田前会長が言いたいことは、なんとなく分からないわけじゃないけど。
でも、まあ、そうだろうね。私のおかげで、今年は寄付金がたくさん集まったわけだし・・・・・・
それに、昨日今日の快晴といい、私目当ての人出といい、みんなにどんなに感謝されても、されたりないぐらいの貢献をしたのは確か。
美少女戦士つかさちゃんって、ホントすごい! エッヘン!
そういうのをすべてのみこみ、私、二人に最高の笑顔をプレゼント。二人とも、なんかまぶしげに目を細めちゃって・・・・・・
「では、帰ります。失礼します」
私が去ったドアの後ろから、梅田前会長のうめき声が聞こえてきた。
「しっかし、ホントすごい娘ねぇ~」