伝統を守る! 3
結局、それから私たち4人、校門前まで急ぐハメになっちゃった。
熊坂会長を先頭に、梅田前会長、熊坂さん(妹)の肩を借りながら、私が校舎の中を駆けていく。
でも、こんな足じゃ、そんなに早く走れない。
見る見る私たち、会長たちに置いていかれちゃった。
私がなんとか校門脇の受付まで到着したときには、すでに、熊坂会長、受付の長机に乗り、ハンドスピーカー片手に、がなりたてていた。
『みなさん、お静かに! ここは、さくらヶ丘女子高校の敷地内です。これ以上、騒動をつづけられる場合には、強制的に退去していただきます!』
でも、暴徒寸前の男たちには、その程度の怒鳴り声なんか、耳に入らないみたいで、相変わらず、『昨日の美人を出せ! 美人を出せ!』なんて、口々に・・・・・・
熊坂会長、さらに金切り声を振り上げて!
『ちょっと、みなさん、聞いて! 騒がないでください! 近隣の迷惑です。静かにしてください!』
でも、まったく効果はなかった。
「ったく! なんだっての!
見事に、男どもを抑えるのに失敗した熊坂会長。
それからも、力なく、『騒がないでください!』とか『静かにしてください!』とか言っていたけど、まったく効果なし。
でも突然、熊坂会長の隣で、長机に上った者がいた。その人、会長から、無理やりハンドスピーカーを取り上げると、大きく息をすって・・・・・・
『しゃらっっっぷっっ!!!』
耳がキンキンする!!!
一瞬で、その場が静まり返った。全員が、その大声を上げた人物を見た。
神宮寺高校生徒会会長、今野翔吾だった。そう、昨日、熊坂会長に無視され、開会の挨拶をすることができなかった、あのかわいそうな生徒会長だった。
『みなさん、ここは神宮寺高校の施設内です。教育施設内ですので、騒がず、お静かにお願いいたします』
落ち着いた、染み渡るような声だった。
仕事が終わったという感じで、スピーカーを熊坂会長へ渡し、自分はさっさと長机から下りる。
熊坂会長、顔を上気させ、唇を強くかんでいる。必死で、自分を抑えている。
目まで血走らせて、ちょっと怖いよ・・・・・・
と、今野会長が去っていくのをあっけにとられて見ていた何人かの男性の目が、隅に立っている私を見ているのに、気がついた。
あ、見られてる・・・・・・
ついつい、私、いつもの・・・・・・エンジェルスマイル。
とたん、何人かの男性の目がハート型になった気がした。そして、その周りでは、私を指差し、まだ気がついていない隣の男の袖を引く。
しずかな、驚きの声が、その場所から周囲へ広がっていった。
その場にいた全員の視線が、私に集まるのに、時間は必要なかった。
そして、私・・・・・・
いやん! そんなに見つめないで! はずかしい~
手を軽く握り、口の前へ持っていって、視線を右斜め下45度へ・・・・・・
計算しつくしたタイミングで、ときどきチラリと男たちを眺めてみせる。
可憐な恥ずかしがり屋さんのポーズ。
そう、これでまとめて、男たちはいちころのはず!
その上で、さらに、そよ風なんか吹いて、私の髪を軽くそよがせたりなんかしたら・・・・・・
って、すごいタイミング。私の思っていたとおりの風が、桜の花びらを舞い散らせながら吹き抜けた。
声にならないどよめき。
それが、その場を支配した唯一のモノだった。




