ゆりデビュー 3
校門の前で、ありさちゃんに追いつき、グランドの脇を通って、玄関へ。
顔見知りの同級生たちと『おはよう』って言い合って、華やかな笑顔をあたりに振りまいて、私たちはガラス戸が全開になっている玄関の中へ。
A組女子の下駄箱ゾーンへ歩いていく私たちを、追いかけてくる足音が・・・・・・
「さ、斉藤、神宮寺、おはよう」
サッカー部の島崎君。麓の神宮寺高校へスポーツ推薦で入学した一年生。ボールは友達! 噂では、お風呂のとき以外、常に足元にサッカーボールがあるらしい。
「島崎君、おはよう」
「おはよう、島崎」
私たちは、島崎君の方を振り返って、にっこりと微笑んであげた。
「さ、斉藤、今日、放課後ヒマ? 映画のチケットが手に入ったんだけど、一緒に見に行かない?」
ったく! デートの誘いか。まただよ・・・・・・
ごめんね、島崎君、私、好きな人が・・・・・・ って、え? えぇぇ!?
さ、さいとう・・・・・? 斉藤・・・・・? ありさちゃん? なんじゃそりゃ!? 私じゃないの?
ありさちゃんなんかより、私の方が、何倍も可愛いんだぞ! 絶対、ありさちゃんでなく、私、神宮寺つかさ様をデートに誘うべきじゃないの!
島崎、お前の目は節穴か? その目ん玉は、腐り果ててるのか?
さあ、まだ遅くはない! 私の前に虫けらのようにはいつくばって、神をあがめるように、そのチケットをささげもて! そして、私に、そのチケットを貢ぎなさい!
私の抗議の視線に気づくことなく、虫けら・島崎は期待を込めて、ありさちゃんを見つめている。
っと、そのとき下駄箱の奥のほうから、誰かがポツリとつぶやくのが聞こえた。
「・・・・・・・島崎君・・・・・・」
私は、その声の方をチラッと見た。しょんぼりと背を丸めた少女がひとり校舎へと入っていく。あの後姿は・・・・・・
めがね巨乳の学級委員長。
そっか、そうなんだぁ~
よそ見をしている私の横で、ありさちゃん、困ったような声で、
「あ、ごめん。今日はつかさと、ショッピングに行く約束をしてたんだぁ~ ごめんねぇ~ また、今度誘ってねぇ~」
とかなんとか・・・・・・
あらら、断られてやんの。ふん! 美の女神つかさ様を無視したりなんかするからよ!
それから、ったく! ありさちゃんも、勝手に私の名前もちださないでよ!
ありさちゃんは、話が終わったとでもいう感じで、軽く手を振って、とっとと自分の下駄箱へ歩いていくし、当然、美少女つかさちゃんとしては、その後をフォローするように、島崎君に笑顔を振りまいて、ありさちゃんの後を追った。
「そっかぁ~ じゃ、また、今度、誘うから!」
島崎君のめげない声を背にして・・・・・・