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桜色の雲に浮かんで・・・・・・ 6

「ねっ、つかさちゃん。ねってば!」

 思わず、考え込んじゃった私。目の前で、誰かが手をひらひらと振っていた。

「え!? あ、ごめんなさい。考え事してた」

「ふふふふふ、つかさちゃん、ボーっとしちゃって、何、考え込んでいたの?」

「こら、ひかりん、そんなこと聞いちゃダメだよ! あんなヘンな女の人の話で、つかさちゃん混乱してるんだから」

「えっ? えっ?」

 私、目の前の委員長と熊坂さん(妹)を交互に見ていた。

「ああ、つかさちゃんをお嫁さんにほしいって話?」

「そう。ヘンな人だよねぇ~ 息子さんの話なのに、母親がでしゃばってくるなんて・・・・・・」

「ふふふ。ヘンといえばヘンだよねぇ~ でも、今日は、あの人だけじゃなかったんだよ」

「え? あ、そういえば、熊坂会長が4人目とか・・・・・・」

「そう、朝から、OGの人とか、近所の人とかやってきて、お姉ちゃんにつかさちゃん紹介しろ、連絡先を教えろって、大変だったんだから」

「そ、そうだったんだぁ~」

「お姉ちゃん、それを全部断るので、疲れ果てて、ほら、あんな状態なんだよ」

 熊坂さん(妹) 、あごで、机に突っ伏して寝ている会長を示した。お弁当を食べ終え、どっと疲れが出たのか、休憩中。

「こんなの初めてだって。こんなことするために、さくらヶ丘に入ったのじゃないぞって、さっきまでブーブー言いまくってたんだよ。おねえちゃん、機嫌が悪かったから、たいへんだったんだから」

 まあ、私のせいで、余計な仕事が増え、気の毒には思うけど、でも、私の美貌を買って、受付に回すって決定したのは、会長自身なわけだし・・・・・・

 それに、周囲からこんなに好かれる、見初められるのは、私自身がどうこうじゃなくて、私の外見がなせるわざ。私が何かしたわけでもない。

 同情はするけど、申し訳ないなんて、絶対に思ってあげないんだから!


 私たちは、ようやく重い腰を上げ、署名用紙の整理に取り掛かった。

 もちろん、熊坂さん(妹)も手伝ってくれている。思ったよりも作業がサクサクと進めているのは、熊坂さん(妹)のおかげ。やっぱり、あの会長の妹なんだねぇ~ 手際がいいし、パソコンの入力作業も、ブラインドタッチ。私たちが人差し指一本で、ポチポチ打ち込んでいる間に、彼女の指がキーボードの上をすごい勢いで跳ね回り、踊りまわって、あっという間に一件分の入力が済んでしまう。ちょっと尊敬しちゃうかも・・・・・・

「えっと、この人は、ご近所の人だね。そういえば、さっきも同じ名字の人があったけど、もしかして、家族なのかな?」

「え? ちょっと待って、さがして・・・・・・あった、えーと、そうだね、同じ住所になってる」

「こういう場合は、どうすればいいの? さっきの人のところへ、書き足すの?」

「うん、えっと・・・・・・ どうするのだろう? ねぇ、お姉ちゃん、家族の人が別々に署名してある場合、記録するときは、どうするの?」

 熊坂さん(妹)、背後で、まだグターとなってる会長に訊いた。会長ピクリともしないけど、声だけは聞こえた。

「あぁ、一緒にしておいても、しなくても、どちらでもいいぞ。どうせ、後で、重複とか確認して、整理しなおすわけだし」

「だって、つかさちゃん」

「りょうかーい」

 ビシッと、敬礼。これで、入力作業、一件分、楽になった。

 私たちの隣のPCでも、委員長悪戦苦闘中だけど、これは私みたいに、PCに不慣れだからじゃなくて、署名用紙に書かれた文字が癖字だから。

「ひかりん、これ、なんて読む?」

「えっと、・・・・・・帯水?」

「でも、近所に帯水町なんていう地名あったかしら?」

 委員長、眉毛をハの字に寄せて、考え込んじゃってるよ。

「それって、帚木町じゃないのか?」

 私たちの背後から、会長が間髪いれず、突っ込んでくる。

「あ、なるほど。いわれてみれば確かに、帚木町だぁ~ ありがとうございます」

 ようやく、委員長納得がいったみたい。眉毛を開いて、入力作業再開。その隣で、手を休めることなく、熊坂さん(妹)、

「ほうき町? 箒がたくさんある町なのかなぁ~」

「ばか! 昔、箒をたくさん作っていた町だから、帚木町。自分が住んでいるところの隣近所の町ぐらい、由来とか、覚えておけよ!」

 あらら、熊坂さん(妹)怒られちゃって・・・・・・

 って、隣町の名前の由来まで覚えておくのって、常識だったの? 私、私の住んでいる町の由来すら知らないんだけど・・・・・・


 私たちが署名用紙と格闘している間に、寄付の受付担当だった先輩の方は、早くも寄付額の集計や、寄付者の名簿作り終了したみたい。

 まあ、私たちの方とは違って、名前だけだし、PCへの入力作業はしなくていいわけだから、ラクといえばラクなのかな? あとは、手提げ金庫の中のお金を数えれば終了だし。

「会長、初日の午前中の分の寄付金額です」

 寄付の方の先輩、お金の入った金庫と、それを集計した帳簿、名簿などを置く。

「あ、ご苦労様。どうだった、今年は、たくさん集まった?」

 会長、ようやく机から顔を上げた。やっぱり、お金の絡む話なだけに、いい加減な態度で聞くってわけにもいかないんだねぇ~

 で、寄付金担当の先輩、泣き笑いの表情を浮かべて・・・・・・

「ま、まあ・・・・・・ その、なんというか・・・・・・」

 帳簿を開いて、会長に今日の集計額を指し示す。

 会長、指し示された集計額の金額をみて、目をパチパチさせた。

「なに、この数字! 数え間違いでない?」

「いえ、ほら、金庫の中のお金を見てもらえれば・・・・・・」

「うっ・・・・・・すごい・・・・・・」

 今年の寄付金額、初日のそれも午前中だけだというのに、去年一年間で、集めた寄付金額を軽く超えてしまっていたらしい。去年一年間、観桜会だけでなく、文化祭や音楽会、その他、もろもろの行事での寄付金額すべて合計しても、この数字には届かない・・・・・・

「な、なんてこと・・・・・・ 今年は一体どうなってるのよ!」

 寄付担当の先輩も、ただオロオロするだけだった。



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