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桜色の雲に浮かんで・・・・・・ 1

 そして、週末の土曜日。

 いよいよ観桜会の一日目の始まり。

 私たちは、いつもより早めに家を出て、学校へ集合していた。

 旧さく女生徒会メンバー一同と旧さく女系部活の代表者たち。グラウンドの朝礼台の前は人であふれていた。

「あ、つかさちゃん、おはよう!」

「おはよう! ほら、委員長、お天気晴れたでしょ」

 この時期、春霞がかかって、晴れたとしてもうすぼんやりとした天気にしかならない。なのに、今日は快晴。雲ひとつない、抜けるような青空!

 これは、気をつけないと、今日だけでも日焼けで真っ黒になっちゃいそう。

「うん、本当だね。つかさちゃんすごいねぇ~」

「へへへ。でしょう」

 胸をはって、Vサイン♪ 委員長、律儀にほめたたえて拍手してくれてたりして。

 でも、なんかまわりから人が半歩ぐらい離れていったような気もしないではない。


 今日は委員長も私も、神宮寺高校のださださ制服を脱いで、この春の入学のため準備していたさく女の制服を着ている。

 あんな急な合併さえなければ、毎日私、この制服をきて、学校へ通っていたはずなのに・・・・・・

 あぁ~~~

 まだちょっぴり防虫剤の匂いが残っている薄い桜色の制服を、残念そうに見下ろした。

 憧れだったのに・・・・・・

「わぁ~ つかさちゃん、かわいい。ホント、なに着ても似合っちゃうねぇ~」

 そんな私の憂いを帯びた思念に関係なく登場するのは、いつものマイペース女・熊坂光。

 いつものように、私に飛びついてきて、頬へキス。

 はぁ~

 毎日毎日、うっとうしいんだから・・・・・・

「ひかりん、今日はなにするの?」

 私たちと違って、熊坂さん、神宮寺のジャージ姿。ってことは、裏方組に配属になっているはずなんだけど・・・・・・

 なにするのだろう?

 私、手元の資料を引っ張り出して、確認してみた。

 えっと・・・・・・小間使い係?

 ん? んん!? 何するのだろう?

「えっとね。常時、生徒会室に詰めていて、みんなのお世話をあれこれする係らいしいけど、よくわかんなーい」

 う~ん・・・・・・本人もよく分かっていないみたいだし。

 なんか、いまいちどういう役なのか想像できないや。

 結局なんなのだろうね?


 私たち3人が、しきりに首を振って、どんな役なのだろうって考えている間に、会長がグラウンドへ現れた。

 胸を張って、あたりに威厳を撒き散らしながら、朝礼台へ上がっていく。

「みんな、おはよう!」

 グラウンドに集まった女生徒たちは、口々におはようという返事する。

「今日は、いよいよさくらヶ丘女子高校伝統の観桜会、初日です。昨日までの天気予報では、今週末雨が断続的に降り続くという予報でしたが、幸い、その予報が外れたみたいで、今日はまさに、日本晴れのよい天気となりました」

 私、委員長とにっこり微笑み交わした。

「まさにお花見日和、観桜会日和です。今日いらっしゃるゲストのみなさまには、心地よくお花見を楽しんでいただけるように、我々、気を抜くことなく、精一杯がんばりましょう。これぞ、さく女のもてなしというところを存分に味わっていただきましょう!」

 生徒たちは、それぞれにうなずきあっている。折角、OGや外部の人たちを招いて、イベントを開くのだ。来てよかったと思ってもらえるような、そんなイベントにしたいよね。

「そして、伝統あるさく女に恥じない観桜会にいたしましょう! 神宮寺には到底真似できないようなすばらしい成功を成し遂げましょう!」

 って、会長、その台の隣に立っている男子って、神宮寺の生徒会長でないの? 入学式のとき見かけたし・・・・・・

 神宮寺の生徒会長、思いっきり苦笑を浮かべてる。

「みんな、力を合わせて、がんばろう!」

 そんな生徒会長を完全に無視して、熊坂会長、こぶしを固めて・・・・・・

「エイッ! エイッ! オー! 打倒、神宮寺!!」

 聴衆の女生徒も、エイエイオー! なんて。ちょっと悪乗りでないの?

 そして、パラパラと拍手。そのまま、みんな、開会の挨拶も終わったって感じで、それぞれの持ち場へ散ろうとし始めちゃった。

 神宮寺の会長かわいそうに、自分もなにか話すつもりだったのだろうけど、台を熊坂会長が独り占めして、譲ってくれないものだから、全然口を開く機会を与えられなかった。

 あらら。しょんぼりしちゃって。

 なんだか、かわいそう。

 ほんと、熊坂会長も大人げないんだから。って、高校3年生じゃ、まだ大人げもなにもないのかな?

 ともあれ、朝礼台の上の熊坂会長、神宮寺の生徒会長がしょんぼりしているのを、ニヤニヤしながら見下ろすのだけは、やめたほうがいいと思うよ。

 悪人顔だし、老けて見えるから。



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