表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/47

お花見しましょ? 3

 私たちが部室(旧生徒会室)に入ると、部屋の中は、もうすでに女生徒たちでいっぱいだった。

 部屋の前方、黒板を背に、熊坂会長がなにやら演説をぶっている。

「・・・・・・・・であるから、今年も、さく女の諸先輩方をお招きする観桜会、しっかりと我々、さく女生徒会が取り仕切り成功させましょう。みんな、しっかり自分の持ち場をまもり、粗相のないように、がんばりましょうね!」

 部屋中が拍手で埋まった。

 がんばりましょうね。今年も、がんばろう。などと周りの上級生たちは口々に言い合ってもいる。

「ん? なにかするのかなぁ? イベントかなにか?」

「うん。今度の週末、さく女のOGたちや近所の人、生徒の家族なんかを招いて、裏山で、伝統の観桜会、つまりお花見ね、するの」

「へぇ~ お花見かぁ~」

「そ、今日はそのお花見のためのミーティングをこれからするのよ」

 入部したばかりで、何も分かっていない私に、委員長があれこれと、説明してくれる。

「お、神宮寺、来たな。あんたには、当日受付を勤めてもらうから、そのつもりでな」

 早速、私を見つけた熊坂会長、相変わらずのうむをいわせない命令口調。

 私の週末の予定なんて、関係ないみたい。って、予定なんてなんにもないけど。私が当日参加するのは当然だと思っているのかな・・・・・・

 熊坂会長、急に目を細め、針のような視線を私に。

「それより、神宮寺、今日は遅かったな? 初日から遅刻なんてするなよ。それとも、先生にでもよばれて、居残り勉強か?」

「い、いえ」

 ちょっと、だれが居残りなのよ! 私、そんなに頭悪くない。っていうか、クラスで委員長の次ぐらいに入学試験の成績がよかったはずなのよ!

「ちょっと、友達に呼び出されて」

「ほお。友達ね。そのわりに、男を連れて、あっちへいったり、こっちへいったりしていたみたいだけど・・・・・・」

 ひょいっと親指立てて、窓の外を差す。

 そういえば、さっき学君と何度かこの窓の下を通ったっけ・・・・・・ ちょっと頬が赤くなる。

「おさかんなのはいいけど、さく女の品位を汚す行動だけはしてくれるな! いいな、神宮寺」

「は、はぁ・・・・・・」

 って、おさかんってどういう意味よ! ったく、このいけず女がぁ~!

 私が遅刻したのって、私のせいじゃないっていうの!

 そういう文句なら、私に呼び出しをかけてきた男子や女子たちに言ってよね!

 ともかく、熊坂会長に解放され、私、委員長の隣の席へ座り込んだ。

「ふぅ~ やれやれだわ」

「怒られちゃったね」

「うん。でも、遅刻したのは私のせいじゃないんだけどなぁ~」

「そうなの?」

 隣の席の人から、資料の束が渡された。一部とって、委員長へ渡す・・・・・・

 ハッと、その隣の人を確認しなおした。大崎先輩だった。

「神宮寺、さっき一緒に歩いてた男子だれ? 彼氏?」

「え、いや、その・・・・・・」

「すごく仲良さそうに、話しながら、下通っていったからさ」

「学君は、彼氏とかそういうのじゃなくて」

「へぇ~ マナブっていうんだ。繊細で優しげなルックスしてて、男にしておくのがもったいない格好イイ男子じゃん」

 なんか、目がハートになっている気が・・・・・・

「女装させたら、かわいいだろうなぁ~」

 う~ん・・・・・・

 うっとりとあさっての方を見つめてる。もしかして、やっぱり、この人も熊坂さん(妹)と同類? なんか、頭痛くなりそう。

「で、二人はどこまでいってんの? 告白された? キスした? それとも・・・・・・」

 私、思いっきり胸の前で手を振って、

「ち、違います! 私たちそんな関係じゃ。学君と私、いとこ同士なだけで、特に恋愛感情とかそんなことは・・・・・・」

「え~!? そうなの? でも、向こうの滅多に人が来ない倉庫の裏へ、二人してコソコソ入っていったじゃん」

 もうバレてるんだぞって感じで、ウィンクをひとつ。

 あ、見られてたんだ・・・・・・

 よく見たら、私たちの周りの上級生たち、みんなニヤニヤして、私たちの会話を聞いているし・・・・・・

 本当に、頭痛くなりそう。

「私たち、本当に、何でもないんです」

「ほら、隠してないで、もうみんなバレてるのだし、ちゃっちゃと白状しちゃいなさい! で、どこまで進んでるの?」

「だ・か・ら~ 本当に何もないんですってば!」

 大崎先輩、私に向き直り、肩に手を置いてきた。

「まあまあ、そう恥ずかしがらずに、洗いざらい、ここにいるお姉さま方にしゃべってご覧。きっと、すっきりして、モヤモヤした気分がふっとぶわよ」

 う、うう・・・・・・

 この人たち、まったく聞く耳持ってない。

「と、ともかく、私、学君なんかとは、付き合ったりとかしてませんから」

 う~ん・・・・・・

 ここは、一発、ガツンとショックを与えてあげた方がよさそうね。

 私は美の女神つかさちゃんで、あなたたち下賤な人たちとは、違うのよって。

 そしたら、少しはこのしつこい邪推、マシになるかな?

「はぁ~ 今日倉庫の裏へいったのは、C組の男子に呼び出されたので、告白を聞いてあげてただけです」

 たちまち、きゃぁぁぁ~~~!! って周りの上級生たち黄色い声を上げる。

「え、神宮寺、告白されちゃったの? それでそれで、どんな子だったの? 神宮寺はなんて答えたの?」

 大崎先輩、興奮して迫ってくるし。目がランランと輝いている。

「確か、うちの野球部の浅黒くて背の高い人。でも、私、付き合う気がなかったから『ごめんなさい、私、他に好きな人いるので、付き合えません。でも、いいお友達でいましょうね』って」

 えぇぇぇ!? 振っちゃったの?

 周りの上級生から一斉に声が上がった。

 う~ん・・・・・・ボリュームがあがって、うるさい! まあ、どうひいき目に見ても彼女たちには絶対に縁のないような話だろうから、信じられないんだろうなぁ~

 告白された上に、即座に、その相手を振るなんて・・・・・・

「ええ、だって、付き合う気がなかったから」

 私はさも当然って顔でしらっと答えるだけ。実際に、このところ毎日の日課になっていることをしただけだし。

「もちろん、今日もそれだけじゃなくて、その後も、他の場所で、何人かの告白を聞いてあげて、お付き合いを断っていたので、今日は遅くなったんですぅ」

 仕上げにうふっと笑ってみせる。

 周りの上級生たち、呆然と私を見つめるだけ。なんて、もったいないことをって表情。

「たぶんこれからも、私、告白を聞かされに呼び出されたりするので、遅くなると思いますよ」

 そして、エンジェル・スマイル♪ カンペキな勝利の笑顔!

 どう、私は、あなたたちとは違う人種なの。わかった?


 急にしずかになった上級生たち。なにかそれぞれの物思いにふけり始めた。

 それぞれに、胸に秘めた人のこと思っているのかな?

 それとも、比較的仲のいい男子たちのこと。

 そんな男子たちが、ある日、彼女たちを呼び出して・・・・・・

 なんか、上級生たち、一斉に頬を染めてるし・・・・・・

 彼女たちをほって置いて、私、優雅に、手元の資料に覗き込む。

 今度の週末、開催される観桜会(お花見)のプログラムや、当日のメンバーの配置表。

 私たち、旧さくらヶ丘女子生徒会だけが参加するのじゃなくて、旧さく女系の様々な部活も日ごろの練習の成果を発揮し、発表を行うみたい。

 ちょっとした文化祭って感じかな?

 会場も、裏山だけでなく、グランドや校舎内などいろんな場所に分散している。

 で、それらの会場の設営や案内板の設置などなどを、私たちが手分けして金曜日にまとめて行うと。

 当日のメンバーの配置を確認してみると、『受付』の欄に、私の名前。その隣・・・・・・

「あ、委員長も一緒なんだぁ」

 うれしげな声と笑顔で、話しかける。

「うん、よろしくね」

「私、初めてで、よく分からないから、いろいろ教えてね? って、委員長も初めてか」

「ふふふ、今度の週末楽しみだね」

「うん、機会があったら、いろいろ見てまわりたいね」

「晴れるといいなぁ~」

「大丈夫、きっと土日は晴れるよ」

「え? どうして?」

「だって、私、晴れ女だし」

 そう、私、晴れ女。私が家の外へ出れば、たちまち雨が上がって、太陽の光が燦々と。

 小学校のときから、私が参加した遠足、運動会、工場見学は全部快晴だった。でも、風邪で寝込んだ小3の遠足。天気予報では、とびきりの快晴だったのに、現地は、大嵐。遭難騒ぎまでおきちゃった。

 ホント、美の女神だけでなく、天気の神様にまで愛されちゃってる美少女つかさちゃん、なんかすごい!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ