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お花見しましょ? 2

 いつものように、玄関で上履きにはきかえる。

 昨日、そういえば、保健室で寝ているとき、熊坂さんがあやまってくれて、特に実害がなかったから、寛大な心持ちになって、許してあげたんだけど・・・・・・

 失敗だった。

 校舎に入った途端、いきなり実害が・・・・・・

 玄関であった同じクラスの女生徒・時田さん、おはようって、挨拶したら、いきなりかけてきて、私の胸にラブレターを押し付けていっちゃった。

 それに、下駄箱の中、いつも以上にラブレターと恋の呼び出し状が・・・・・・

 半分が1年生各組の男子から、残り半分、女子から。

 こ、これからは、男子のラブレターに『あなたとは付き合えません、でも、いつまでもよいお友達でいてね』的な返事を書かないといけないだけでなく、女子の手紙にも返事を書かないといけないのね・・・・・・

 はぁ~ つ、つかれそう。

 ありさちゃんの方はというと、また、島崎君、再チャレンジするつもりで、入り口で待っていたみたいだけど、ありさちゃんの今朝の様子を見て、ビックリして声をかけられなかったみたい。そして、その島崎君を学級委員長が柱の影からじっと見ていたことに、私は気づいていた。

 ほんと、いじらしいというか、なんというか・・・・・・

 世の男どもも、はずかしいって感情をもっとしっかりともって、委員長みたいに、私を柱の影から眺めるだけにしてくれるといいのに・・・・・・

 勇気なんて、振り絞らなくてもいいのにね。


 で、今日の一日の授業は、まったりと流れて、放課後。

 今日は役に立ちそうにないありさちゃんを早々にあきらめて、用心棒役に学君を連れて、キャンパス中のあちこちへ駆け回り、『あなたの気持ちはうれしいけど、ごめんなさい。付き合えません』って言って回って、教室へ。

 結構、時間がかかった。なにしろ、いつもの2倍だし・・・・・・

 教室にもどると、学級委員長と熊坂さんが待っていた。

「あ、つかさちゃん、どこいってたの?」

 熊坂さん、私に手をふって、駆け寄ってきた。そして、ジャンプ。クビにかじりつくようにして、抱きつこうとしてきたんだけど・・・・・・

 さっと、私を後ろにかばい、身を挺して、熊坂さんを止めたのは、学君。

「ちょ、ちょ、ちょっと、なにするのよ! なんで、アンタがここにいるのよ! なんで、私の邪魔をするのよ!」

「フン! つかさにヘンなことすんじゃねぇ! つかさが迷惑がっているだろうが!」

「だれも、ヘンなことなんかしてないでしょうが! 私とつかさちゃんの愛のスキンシップの邪魔しないでくれる。このストーカー野郎!」

 あ、愛のスキンシップって・・・・・・

「はいはい、愛があるなんて思ってるのは、お前だけだろう? つかさは迷惑してんだよ! 自分の教室へもどりな!」

 学君、乱暴に熊坂さんの体の向きを変え、つよく肩を押す。押された勢いで、熊坂さん、廊下にはじきだされた。

「きゃっ!」なんて、悲鳴を上げて。

 四、五歩たたらをふみ、何とか踏みとどまって、憤然ともどってくる。

「ちょっと、なんなのよ! アンタ、何様のつもり! たかが、おバカ神宮寺のくせに!」

 その目と鼻の先で、ドアをぴしゃりと閉じて見せるし・・・・・・

 ドスン!

 なんか、いまドアに思いっきりぶつかった音が聞こえたんですけど・・・・・・

 思わず、学級委員長と一緒に目をぎゅっとつむって、体を縮めた。

 い、いたそう~

 おそるおそるまぶたを開いた私たち、目が合って、思わず、苦笑がこぼれた。

「ね、神宮寺さん、そろそろいきましょうか?」

「うん」

 学君にバイバイって手をふって、カバンをさげ、後ろのドアから廊下へ。

 前のドアでは、相変わらず、学君と熊坂さんの騒々しい争いが行われていた。


 旧館二階一番奥の部屋。

『さくらヶ丘歴史伝統研究会』

 私が昨日強制的に入部させられたのは、そういう名前の部活だった。

 本当は、旧さくらヶ丘女子高等学校生徒会なんだけど、さすがに、それでは神宮寺高校当局に認可されるわけもなく。やむなく、『さくらヶ丘歴史伝統研究会』なんてものを名乗っているらしい。

 もちろん、熊坂会長としては、いつか近いうちに、生徒会に名称をもどすつもりみたいだけど・・・・・・

 公式には、神宮寺高校生徒会なるものが麓の二・三年生キャンパスにあり、生徒たちを取り仕切っている。

 だけど、さくらヶ丘出身者の方が頭がよいのは動かし難い事実。そのせいか、ほとんどのクラスでは、さくらヶ丘出身の女生徒たちが学級委員長をつとめ、神宮寺出身の男子生徒が副委員長を勤めている。そして、それらさくらヶ丘系の学級委員長たちは、大抵、去年も学級委員長なり副委員長なりをやっていたし、さくらヶ丘女子の生徒会に属していた。

 だから、神宮寺高校生徒会といっても、半数はさくらヶ丘出身の女生徒でしめられていた。

 もちろん、それ以外の残り半分、現生徒会長を含め、神宮寺高校出身。熊坂会長はそれが気に入らないみたい。

 自身は、副会長を務めているんだけどね。

 ほんと、なにが不満なんだろう?

 副会長も会長も大した差がないような気がするのだけど。いや、むしろ、会長は生徒会の顔で、あれこれと派手で目立つ役職だけど、特にだれがなっても、大過なくこなせるような気がするな。それより、副会長は会長を支え、実務面を一手に取り仕切り、生徒会を支障なく動くためには、なくてはならない職種。はっきり言って、副会長の方が能力の必要な重要なポストのような気がするのだけどなぁ~。

 でも、熊坂会長は、生徒会長の方がいいみたいで・・・・・・

 去年は、さくらヶ丘女子の副生徒会長として、立派に会長をもり立て、すばらしい指導力を発揮していたらしいのに。

 う~ん・・・・・・ よくわかんない。



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