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名門・さく女生徒会! 6

 部屋の中には、長机が何台か設置さされていて、職員室で見かけるような、キャスター付の椅子がいくつも並んでいる。

 熊坂さん(姉)、黒板の前の椅子に座り込んで、私に隣の席に着くように合図した。

「あなたが神宮寺つかささんね?」

「はい・・・・・・」

「噂は光から、いろいろ聞いているわ。うん、たしかに、美人ね」

「それはどうも・・・・・・」

「でも、胸は・・・・・・」

 ちょっとそこで、なんで胸の大きさなんて話が出てくるのよ!

 そこの関係ない上級生、ふふふって、ヘンな忍び笑いしない!

 少なくとも、あなたなんかより、大きいんだから!

「そんなことは、まあいいわ」

 って、自分から話題ふっといて、『そんなこと』ってどんなことだよ!

「神宮寺さん、あなたは、3月の入試のとき、さく女に合格したんですってね?」

「え、ええ・・・・・・」

「ふふ、優秀ね」

「それはどうも・・・・・・」

「それはそうと、なぜ、さく女に入りたかったのかしら? よかったら、理由を聞かせてもらえるかしら?」

 え、えーと・・・・・・ 彼女は、何を言いたいんだろう? なんだか、いまいち話が読めない・・・・・・

 ともかく、正直にここは答えた方がいいのかな?

「えっと、あの、その・・・・・・ さく女の制服がかわいいなって・・・・・・そ、それと、男子がいない学校の方が、その、私的には、いいかなっていうか・・・・・・」

 私の答えをきいて、熊坂さん(姉)笑い出した。

「あははははは!」

 目の端に涙まで浮かべて・・・・・・ なにも、そんなに笑わなくても・・・・・・

 よくみると、周りの女生徒たちも、くくくと笑っているようだ。

「えっ、なに!? なんなんですか?」

 笑っていないのは、私一人だった。ん? でもないか、部屋の隅で、『本当にあった怖い話』なんて本を抱えた大崎先輩に、耳元で読み聞かせされているありさちゃんは笑ってなんかいなかったし・・・・・・

「幽霊なんていない、お化けなんて存在しない! 幽霊なんていない、お化けなんて存在しない! 幽霊なんていない、お化けなんて存在しない! ・・・・・・・・」


「いいわ、分かった。じゃ、今日から、あなた、私たちに協力しなさい!」

 ようやく笑いをおさめた熊坂さん(姉)、ビシッと私を指差す。

「きょ、協力・・・・・・?」

「そ、私たち、旧さくらヶ丘女子生徒会に協力して、さく女の伝統を守るのよ!」

「・・・・・・え!?」

 その一言で、気がついた。いまさらながら・・・・・・

 この高校、神宮寺高校はこの春さくらヶ丘女子高校を吸収合併した学校。生徒会っていったって元々あった神宮寺高校の生徒会が、旧さくらヶ丘の生徒たちも仕切るのが筋だし、こちらに生徒会も、生徒会のための生徒会室もあるはずないんだった。

 じゃ、じゃあ、この人たち、生徒会って名乗っているけど、非公認の組織?

 私の疑問に答えをくれる人はだれもおらず、熊坂さん(姉)は力を込めて言いつのる。

「いい、さくらヶ丘女子は、今年で創立117年の歴史をほこる県下でも一番の伝統校なのよ! しかも、偏差値で65以上ないと入学できないような進学校。つまり、我々のさく女は名門校なの」

 うん、確かにそう。中3のときに、もらった資料だと、県下でもトップクラスの進学実績をもち、卒業生の中に、何人も全国的に有名な女性文化人がいた。

 おかげで、中3の一年間、来る日も来る日もありさちゃんと一緒に猛勉強したっけ。

「なのに、なんで、神宮寺なのよ! よりによって、あのおバカ神宮寺と合併なわけ?」

 神宮寺高校、入試の資料では、偏差値が40にも届かない学校・・・・・・

 課外活動では、いくつか見るべきものがあるけど、こと進学実績で言うと、悲惨としかいいようがない。って、卒業生の半分は就職して、残り半分は専門学校へ通うってだけなんだけど。開校して以来23年、その間に、大学に進学したのは、課外活動が認められて推薦で入学した者だけなんだとか。

「今まで、さく女に通ってるってだけでも、周りから尊敬の目で見られていたのに・・・・・・それが、神宮寺だなんて、だれにも言えないし、恥ずかしくて外も歩けないわ!」

 なんか、ひどい言われよう。同じ名前をもつものとして、ちょっと複雑な気分。

「それに、それに、なんで、私が、アイツの下なのよ!」

 熊坂さん(姉)、心底いやそうに吐き捨てた。

 えっ、アイツ? アイツって?

 タンッと大きな音を立てて、熊坂さん(姉)私に迫ってくる。

「あなたも、そうでしょ? いまさら、神宮寺だなんて、絶対にイヤでしょ? さく女に入学するために一生懸命勉強したのに、あんなバカ学校のやつらと一緒にされるなんて、最悪でしょ?」

「・・・・・・え、ええ・・・・・・」

 熊坂さん(姉)の迫力に押されてしまって、思わず同意してしまった。

「でしょ。でしょ。だから、私たち、旧さくらヶ丘女子生徒会、決意したの。さくらヶ丘の伝統を守るって。たとえ、さくらヶ丘女子高校の名前が消えたとしても、神宮寺のやつらになんかにいいようにはさせない! って」

 周りのさく女制服の女生徒たち、パチパチと手を叩いて、賛同のしるしにさかんにうなずいているし・・・・・・

「だから、神宮寺つかささん。あなたも私たちに、協力しなさい! いいわね?」

 完全に、命令口調・・・・・・ うむは言わせないって感じ。

 え、えーと・・・・・・

 私がすぐにうなずかなかったのをどう見たのか、ビシッと、部屋の隅のありさちゃんを指差す。

「さもないと、あの子、斉藤さん、どうなってもしらないわよ!」

 思わず、指差された方をみると、ありさちゃん、もうそろそろ限界みたい。

 怖い話をたっぷりと聞かされ、今にも失神しそうな、真っ青な血の気のない表情で、うつろな目をして、幽霊はいない。お化けなんて存在しないって呪文を・・・・・・あれ?

「幽霊はいる。お化けだって存在する・・・・・・」

 これは、相当やばいかも・・・・・・

 一瞬、私、考えてしまった。このまま、ありさちゃんが廃人同然になってしまえば、清貴さんをめぐるライバルが、一人いなくなるってことに・・・・・・

 ありさちゃんが、脱落すれば、私と清貴さんとの間に、何の障害も・・・・・・ って、まだまだあるんだけど・・・・・・

 でも、すごく魅力的な考え。

「それに、私たちの力、甘く見ない方がいいわよ。こちらのキャンパスはもちろん、来年から、あなたが通う麓の神宮寺の方にも、私たちの同士がたくさんいるのだから」

 周りの女子たちも、それを肯定するかのように、うなずいている。

「私たちに逆らったら、どうなるか・・・・・・」

 熊坂さん(姉)、ニヤッと悪代官よろしく笑ってくれるし・・・・・・

 脳裏に、ドブ川に浮かぶ私の服の画像が、血だらけになった私の足が、光を受けてきらりとひかる画鋲の針が・・・・・・

 ブルルと震えた。おびえが目に浮かんだと思う。

「わかってくれたみたいね。なら、これにサインしなさい」

 熊坂さん(姉)が机の上に取り出したのは、入部届けだった。

 よく確かめもせずに、熊坂さん(姉)が指し示した箇所に、1-Aと私の名前を書き込んだ。

「OK じゃ、これから、あなたも、私たちの仲間よ。よろしくね」

 とうとう、私は、旧さくらヶ丘女子生徒会に入会させられた。名門さく女の伝統を守るために、おバカ神宮寺の悪しき影響を排除するために。そして、アイツさんから、熊坂さん(姉)を守るために(?)

 でも、しかし、熊坂さん(姉)のいうアイツってだれなんだろう?

 う~ん・・・・・・ナゾだ。


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