名門・さく女生徒会! 5
遅れて、私とありさちゃんがその部屋の前までやってきた。
旧館のどこにでもある普通のドア。
委員長は、全員がそろっているのを、今一度確認すると、ドアをノックした。
とたんに、ドアが開き、中から、女生徒が一人出てきた。そして、その後から、もう一人、さらに、もう一人、また、もう一人、まだまだ、もう一人・・・・・・
ドアから、次から次へと、女生徒が廊下に飛び出し、私たちの横へ、後ろへ、前へ整列していく。
って、それって、私たちを取り囲むってことじゃ!
そう気づいた頃には、もう囲みは完成していた。すでに、私たちの逃げ場はどこにもなかった。
最後に、ドアからゆっくりと登場してきたのが・・・・・・
「お姉ちゃん、つかさちゃん、連れてきたよ」
隣のマイペース娘が、周囲の状況をちっとも気にせず、最後に現れた髪の長い胸の大きな上級生に、そう声をかけたのだった。
しかし、この女生徒集団、ちょっとヘン!
全員、薄い桜色の上着に、モスグリーンのスカート・・・・・・
今は亡きさくらヶ丘女子の制服姿。私の憧れていたかわいい制服たち・・・・・・
熊坂さんの姉・熊坂瞳さんは、私たちを見回し、私を見て、ほうっと感歎の声を上げ、それから、私を守るようにして、身構えているありさちゃんに、にこっと笑いかけた。
芝居がかった仕草で、ポケットから、一枚の写真を取り出し、ありさちゃんに渡す。
「あなたが、斉藤さんね? この写真見てちょうだい」
ありさちゃんの背後からクビを伸ばしてみてみると、何の変哲も無い海辺のアベックの写真。
浜辺で男性と女性がカメラに向かって、並んで両手でVサインをしている。
「ほら、その写真の女性の右肩の方、手が見えるでしょう?」
確かに、女性の肩を抱くようにして、男性の右手が・・・・・・
「さあ、問題です! その写真、全部で手は何本あるでしょうか?」
思わず、目で手の数を数えてしまった。
「5本・・・・・・」
「正解! では、人間の数は?」
「・・・・・・」
その途端、ありさちゃん、顔の色が真っ青になり、貧血を起こしたかのように、その場にしゃがみこんだ・・・・・・
「幽霊なんていない、お化けなんて存在しない! 幽霊なんていない、お化けなんて存在しない! 幽霊なんていない、お化けなんて存在しない! ・・・・・・」
そうブツブツ唱え、ありさちゃん、両耳を押さえ、膝を抱えて、ガタガタ震えながら、おびえてる。
あ、ありさちゃん・・・・・・
な、なんで、ありさちゃんの唯一(って、まだあったような気もするけど・・・・・・)の弱点がこの人たちに知られているの?
と、視界の端で、誰かが手を振っている・・・・・・
えっ、えっ、えっ、大崎先輩!?
私たちより、ひとつ年上で、同じ中学に通っていた大崎先輩。たしか、中学のときの部活もありさちゃんと同じだったはず・・・・・・
大崎先輩、ごめんねって感じで、私に両手を合わせた。ど、どおりで・・・・・・
でも、こんな手でありさちゃんを戦闘不能にして、どうするつもりなんだろう?
私、正面に向き直った。
熊坂さん(姉)、ありさちゃんのおびえている様子を、ふっと鼻で笑い。私の方を見た。
なんか、感じワル・・・・・・
私に、ついてらっしゃいと合図して、部屋の中へ。
やれやれ、こういう状況では、ついていかないといけなさそう。逃げ出そうにも、まわりをぐるりと取り囲まれているし・・・・・・
これから、部屋の中で、私に、私たちに、何があるのかしら。
強い不安感を覚えながら、部屋の中へ足を踏み入れた。