ゆりデビュー 1
私、私立神宮寺高校1年、神宮寺つかさ。
自分で言うのもなんだけど、美少女! それも、とびっきり!
毎朝、身支度をするときに、鏡を覗き込むんだけど、そのたびに、うっとり見とれちゃう。
つかさちゃん、今日もカンペキ! かわいい!
つかさちゃんが姿を現すだけで、街の男どもは、今日も私の前にひれふしちゃうわ!
ふっ、私って、罪な女。
私立の神宮寺高校で、名字が神宮寺だから、まるで、私、理事長の娘かなにかみたいだけど、全然そんなことはない。
パパは、普通のサラリーマンだし、ママもパートで働いているけど普通の主婦。
もちろん、神宮寺高校の理事長も、名字が神宮寺で、私と同じ。神宮寺って全国的には、珍しい名字らしいけど、私の住んでるこの市では、結構ありふれてるんだよねぇ。
もともと神宮寺っていう、由緒あるお寺の住職の名字なんだけど、何代も何代も分家が独立したんで、市の100軒に1軒ぐらいの割合で、みんな神宮寺。
大体、私のお友達にも、神宮寺なんて名字の子、いっぱいいるし・・・・
そもそも私が通っている神宮寺高校って、この冬、入学試験を受けたときは、私立さくらヶ丘女子高等 学校っていう、もっとずっとかわいらしい、お嬢様学校って感じの高校だった。
なのに、なのに・・・・・・
最近の金融危機のせいで、学校の運営母体の財団が破綻したとかで、近くの私立高校に吸収合併されちゃって、今の最悪な名前の高校になっちゃった。
ほんと、ヤになっちゃう!
さく女のあのミニスカートの制服、すごく、かわいかったのに・・・・・・・
あぁ~ぁ
今じゃ、こんなクリーム色と紫のヤボったい制服!
あぁ、ヤダヤダ!
今日も、私、最悪な制服つつまれ、憂鬱な気分で、通学路を歩いていた。
入学式から、もう1週間。
私の家から、学校まで、徒歩10分。住宅街を抜けると、国道を横断して、両側に桜並木がつづく坂道を上りきった先に学校がある。
元さくらヶ丘女子高校のあった現神宮寺高校第二キャンパス。今は私たち神宮寺高校の一年生だけが通っていて、上級生たちは、麓の神宮寺高校第一キャンパスへ通っている。
国道をまたぐ歩道橋の階段をトントンと上る。
今日も、国道は朝のラッシュで大渋滞。動けない車が撒き散らす排ガスで空気がわるい!
息を止めながら、歩道橋の上を走り、反対側の階段を駆け下りた。そして、歩道橋の下の学校へつづく横道に飛び込み・・・・・・
「おっす! つかさ!」
最初の交差点の角で待っていた同じA組の同級生が手を振ってくる。
同じ中学からさく女へ通うはずだった、ありさちゃん。斉藤ありさ。私より、美人度では、かなり劣るけど、世間様的には、美少女で通用するんじゃないのかな? 背が高くて、引き締まった体のスレンダー系モデル体型の美少女。これでも、剣道3段、柔道4段、合気道5段の格闘好き。
「ありさちゃん、おはよう」
美少女にふさわしく、かわいらしい笑顔を浮かべて、さわやかに挨拶をかえす。ついでに、ちょっと胸の前で手を振って見せたりとか。
「きゃぁ・・・・・」
ちょうどタイミングよく、風が吹いて、私の肩までの髪をそよがせ、両脇の満開の桜から、花びらがふりそそぐ。慌てたふりで、髪を押さえて、ゴミが目に入らないように、風下へ顔をむけ、ぎゅっと目をつむってみせる。
そして、ゆっくりとはにかんだような微笑を浮かべながら、まぶたを開いてみせると・・・・・
うふふ、今一瞬、眼があったそこの君、瞬間的に、恋に落ちたわね。
ほんと、私って、罪な女。
それも仕方ないことなのよ。だって、神宮寺高一と噂される美の女神、つかさ様なんだもん!
もともとブログで掲載している作品です。
加筆・訂正の上で、こちらへ移植します。
くまのすけの小説ブログ『恋とか、愛とか、その他もろもろ・・・・・・』: http://loveetc.seesaa.net/
作品ページ『さくらヶ丘恋物語1 ≪桜≫ 目次』:http://loveetc.seesaa.net/article/130104736.html