断罪されて、鉱山送りになった不良貴族のその後
「ち、また、来やがった。不良貴族め」
俺は、鉱山主任のエコーだ。ふん、国め。また、何かやらかした貴族を寄越しやがった。
何人目だよ。お前、何やったの?
「はい、愛人の間の子を優遇して、嫡子を迫害しました・・」
「それで、断罪されたわけか、鉱山って何をやる所だと思ってやがる」
「ヒィ、坑道にはいって、暗い中で・・」
「バカモノ!」と俺は不良貴族を殴った。
「お前如き新米未満を坑道に入れたら危なくて仕方ねえよ!」
そりゃ、大昔は、奴隷に、毒になる鉱山の廃水を、足で水車を回させて排水し、仕事を始めてからの平均寿命が5年未満って仕事あったけど、それは、大昔だ。戦争で奴隷がバンバン入ってきた時代の話だ。
たまに入る不良貴族では足りねえよ。
それに、今は魔法がある。危険なところは魔法使いさんを使ってやっとるわ。ボケ。
「お前は、いくつよ!」
「42歳です」
「はん、見習いにしては年行き過ぎ。一体どうすれば、あのな。お前ら貴族は文字の読み書きや計算が出来るのが唯一の救いみたいだけどな。お前を事務方にすると、それは、うちらでも必死に勉強して事務方になりたがっている青年の夢を潰す行為になるのよ。それに事務も力仕事だ。お前らに出来るのか?そうだな。良し」
俺は、不行跡で鉱山行きになった不良貴族どもを集めて、奴らを教師にした。
最低、文字の読み書きは出来るだろう。計算も出来るだろうと、近所のガキや従業員の子息達に教えさせた。
数年後
「ねえ、ダーリン、私のお父様は今頃、鉱山でぬっ殺されているかしら・・」
「ハニー、行ってみよう」
「ええ」
☆☆☆鉱山学校
「先生―計算なんて、鉱夫に必要ないよ!」
「・・・わしもな。そう思った。いや鉱夫ではないが、前の仕事で、計算なんて、やらなくても良い。教養程度と思ったものだ。
しかし、人生は計算だ。やってはいけないことと自分の欲望に折り合いを付けなくてはいけない。欲望の結果に起きることと、満足感が見合うものか計算しなければならない。
それも計算だ。分かるかね?」
「分からないよ」
「そうか、それなら、こう考えなさい。後5分でガスが充満する。仲間を助けにいかなくてはいけない。行き返りに2分15秒掛かるとして、どれくらいの時間、捜索できるかを瞬時に計算して、活動してこそ、鉱夫だ」
「うん。何となく分かった。時計の読み方教えて~~」
「よ~し、よ~し」
窓でジッと見ていた。嫡子とそのダーリン。
「改心しても、今更もう遅いのよ・・」
「ハニー」
寂しげな後ろ姿で去って行ったと云う。
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