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22話 レベル上げ


「……でだ、それを踏まえて。私から提案なのだが、君が仲間になる代わりに、私が君のレベル上げに協力する……というのはどうだ?」


 ガウェイールさんは改めて話を仕切りなおす。

 テーブルに置かれたグラスは、既に空になっていた。

 難しい話に、リコは少し退屈そうな顔をしている。


「レベル上げ……ですか」


「私は今、レベル88だ。それに戦ったからわかるだろうが、君より強い。まあ、君が魔王の力を使えば別だが……」


 確かに、ガウェイールさんはめちゃくちゃ強かった。

 それに、一国の騎士団の団長だというのだから、レベル88というのも本当だろう。

 そんな人にレベル上げを手伝ってもらって、しかも剣の技術も磨いてもらえるのなら……!


「たしかに、それは僕にもメリットのある話ですね……」


「だろう? それにだ、君の状態は、一刻を争うぞ? さっさとレベル上げをしてしまわないと、魔王にその身体を乗っ取られることになる。()()()()()では、短期間でのレベル上げは困難だろう」


 まあ、僕には経験値5倍があるから、なんとかはなりそうだけど……。

 普通にレベル上げをするのは、たしかにリスクも大きい。

 いくら僕に死に戻りの能力があるとはいえ、一度魔王に乗っ取られたら、それも意味がなくなるだろうし……。

 なるべく早くレベルを上げたほうがいいのはその通りだ。


「それに、君は今後、さまざまな主義主張の団体や、その力を狙う魔族などに襲われることになるだろう。理由は様々だろうがな。だからこそこの砦に、君を連れてきたんだ。ここなら魔力探知防止の結界も張ってあるから、君を見つけるのに時間がかかるし、なにより我々が護ってやることもできる。この砦は防衛には最適だぞ?」


 なんだか上手く口説かれてしまってる感じがするけど……。

 でも、それが最適な案に思える。

 他に行く当てがないのも事実だ。


「わかりました。仲間になります、それで、お願いします。いいよね、リコ?」


「うん……私は、トンについてくだけだから」


 ということで、僕たちはこの砦に引きこもって、レベル上げをすることになった。


「よし! そうとなればさっそくレベル上げだ。演習場にいこう」


 ガウェイールさんは興奮して立ち上がり、僕の腕を引っ張る。

 あ、これ……たぶん滅茶苦茶キツイことやらされる予感しかしない……。







 僕の予想は当たっていた。


 ――キン、キン!


「どうしたトンくん! そんなものか!?」


「ちょ、ちょっと……休ませてくださいよ…………!」


 ガウェイールさんと僕で、模擬試合を繰り返しているのだが……。

 さっきからガウェイールさんはまったく隙を見せないし、つかれたようすもない。

 僕はといえば、もう剣を振るのですら精一杯だった。

 なにせ、ガウェイールさんの剣は一撃一撃がすごく重い。

 これでも手加減をしているそうだけど……。


「だめだ! 時間はないんだぞ! 魔族などを倒す経験値に比べて、人間同士の模擬試合で得られる経験値は少ないんだ! 休んでる暇はない!」


 実際に敵を撃破することで得られる経験値に比べて、こういった命の駆け引きのない戦闘では、得られる経験値が少なくなる。

 それでも、ガウェイールさんとのレベル差を考えれば、森の魔物を倒すよりは効率がいい。

 実際、さっきから5ほどレベルが上がった。


 それに、これはただレベルを上げるだけでなく、剣の技術向上にもなっているのだ。

 これから先、僕はいろんな連中に命を狙われるそうだから、剣は扱えるに越したことない。


「も、もうムリですぅ~」


「だらしがないなあ……まあ、いいだろう。初日はこのくらいで」


 僕はものすごい疲労感とともに、砦の中へと戻った。

 砦は四角形で、その中央が吹き抜けの演習場になっている。


 演習場を出た僕は、大浴場へと向かった。

 今日一日の汗を、流すためだ。

 大浴場は兵士みんなが入れるように、ものすごい広さで作られている。


 なにせこの砦は、4万もの兵士が常駐して籠城できるように作られているんだとか。

 ここなら、僕の身も安全だそうだ。

 まったく、やっかいな力を持ったもんだ……。

 村を出たと思ったら、いきなり拉致られ「君は世界中から狙われている!」だなんて……。


「ふぅ……生き返る……」


 それでも、お湯につかればそんな心配事はきれいさっぱりに忘れられる。

 僕が使わせてもらっているのは、兵士たちが使う第一浴場とは別の、少し小さめの第二浴場だそうだ。

 それでも、かなり広いけどね……。

 僕は村の小さな湯船しかしらないし。


 第二浴場を使えるのは、ガウェイールさんに許可された一部の人間だけらしい。

 だから、今ここには僕しかおらず、貸し切り状態だ。

 基本的には、ガウェイールさん専用風呂となっていたと聞いた。

 やっぱり、すごく強くてエライひとなんだなぁ……。

 そんな人に守ってもらえて、稽古もつけてもらえるなんて……。


「ひょっとして僕って、けっこうラッキーなのかな……?」


 まあ死に戻りの能力のおかげも大きいけど。

 それだって、ラッキーだった。

 このスキルだってそうだ。

 まあ、生まれながらにして魔王の器に選ばれたのは、ラッキーとは言えないかもしれないけど。


 そんなことを考えながら、湯船に浸かっていると……。

 僕しかしないはずの風呂場に、声が響いた。


「よっと……」


「…………?」


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