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81話 師弟 8/15

 カマディは続ける。

 「心に傷を負わせた御殿の者たちにも、憎まれ役をさせてしまったキジムナーにも、本当に悪い事をしてしまった。だがそのおかげで、トイフェルを信用させることができたのも事実。あの子たちは、今も遠くからユイ加那志ガナシを守ってくれているんだよ。」


 「祝女ノロさま……、私はこれからどうしたらよいのでしょうか……、」


 マタラが、小さな声でつぶやいた。

 マタラは真実を知ってなお、カマディを慕っている。その事はカマディ本人も痛いほど、わかっている事だった。


 「まだ祝女と呼んでくれるのか……。マタラ、お前の好きにしなさい。人は皆、楽をしては楽しく生きられない。もうそれが分かっているお前は、自分で歩く力を持っているさぁ。」


 マタラには、二つ道がある。

 力のあるユタ……清明シーミーは稀有な存在であることは明らかだ。だから人は、今まで通りスイの清明としてのマタラを望むのだろう。

 しかし、もうそんなことは知らないと、やめてしまう選択も無いわけはない。


 自分を苦しめ続けたあのトラウマの元凶が、悪意では無かったとは言え、事もあろうに尊敬するカマディであったことは、拭い去れない記憶として脳に書き込まれてしまった。

 同じ清明として生きていく辛さが、この先どのように変貌するかわからない。

 しかしこれまでの間、清明としての立場を使命だと受け入れ誇りにも思ってきた。ここで投げ出す事もまた苦なのだ。


 どちらが楽しく生きられる【苦】なのか。


 「……承知しました。私がやるべきことを……、楽しく過ごせるように、やるべきことを探します。」

 それ以上の答えをマタラは口にしなかった。


 しかし、マタラの体から消えた震えはすべてを物語っていた。


 そしてすぐにその時はやって来た。

 マタラの答えは【自分のするべきこと】を成すことで示されたのだ。

 だから、マタラはチャルカと共に神降かみうりに旅立っていった。




 メイシアは考える。

 自分がするべきこととは…… と。


 それはカップ村をあの日のまま、復活させること。


 旅立ちの日、欲しい物は虹の国にさえ行くことができれば、ロードにさえ会う事ができれば、全ては叶うと思っていた。

 そこにさえ到達できれば手に入ると、誰に保証されたわけでもないのに信じていたのだ。

 まだその答えは保留だ。しかし、どうしてそう揺るぎなく信じていたのだろうと、今は思う。


 浜で泣いた夜。カマディに、自分たちがオズ会ったのは、ロードではないと聞かされた。

 あの時は、とてもショックだったが、同時に心のどこかでホッとしていた。


 そのことに、後になって気が付いたのだ。

 「まだ私は、【そこ】へは辿り着いていない。」と。


 何かはわからない、正体不明の【何か】がメイシアの中で芽生え始めていたことは確かなのだが、メイシアには、その【何か】を捕まえることができない。


 ただ今は、するべきことを成すために、一度【そこ】へ行ってみないと始まらない。そんな気持ちだった。



 メイシアは、ハッとした。

(そういえば、まだ、あのオズの宮殿で会った方がロードさまじゃないって、ストローたちは知らないんだよね……。話しても大丈夫かな?)



 ふと、馬を走らせているストローを見た。


 ストローは、いつもいろんな事に気が付き、考え、知恵を絞ってくれる。

 あの時本当に出会えてよかったと、メイシアは心から思っている。


 もしストローと出会えていなかったのなら、ロードに会いに行く、なんて事は口をついて出なかっただろう。

 そして、もし一人で旅を始めたとしても、きっと途中で挫折をしていただろう。


 勿論、途中で加わったウッジもチャルカも。そして、メリーにも会えてよかったと思っている。


 カマディに【あの人】はロードではないと聞かされた時、とてつもなくショックだった。

 しかし御嶽ウタキでストローに言われた「家族」という言葉。


 その言葉でショックにより開いた心の穴が、埋められていくように思うのだ。

 皆がいたらきっと何とかなる、と思える。


 視線に気が付き、ストローがメイシアを見た。

 ストローが何かあった?と言わんばかりの、目くばせをした。


 メイシアは、にっこり笑って首を横に振った。


 「メイシア、まだまだ遠いけど、体は大丈夫?」

 自分も馬を走らせることに必至なのに、ストローが何とか近寄り声をかけてきた。


 「うん、大丈夫。頑張ろうね。」

 「ウッジとチャルカも頑張っているもんね。」


 四頭の馬は速度を緩めることに無く、街道を走り続けた。

 スイの御殿までは、まだしばらくはかかりそうだ。




  *** *** ***




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