76話 師弟 3/15
──── サァーーー…………
現れたのは、光の帯だった。
そこからすべては始まった。
光の帯は、ウッジの目の前に現れ、驚いたウッジがしりもちをついた。
その光の帯から、アレハンドラの声がしたのだ。
深層意識では、頼りに思っているアレハンドラに助けを求めていたものの、あれやこれやで現在に至るウッジは、アレハンドラを避けている…… というそ齟齬があるかもしれないが、【とても怖い先生】くらいに思っているのだ。
声が聞こえた瞬間、ウッジは傍から見ていてもおかしい位に、両手をバタバタしたりキョロキョロしたりして慌てた。
「な、ななななななな、なんでぇぇぇ?!」
アタフタと、落ち着かない。
そこに、アレハンドラの【先生として】の喝。
背筋を伸ばしたウッジが「すみません」と謝る一連の定食が終わった。
『……本当に。あなたにはいつも驚かされます。』
「…………。」
『では、こういう事ですね? 無意識下でわたくしを呼び出した、という事ですか?』
「……そのようです、」
光の帯からため息が聞こえた。
『それで、何をそんなに追い込まれているのですか?』
「ウ、ウチが、十六夜を守る為の結界を張るように言われて……ウチなら出来るからって……。でも、そんなのやったことないし絶対、無理なんです! 」
また、光の帯からため息が聞こえた。
アレハンドラを知っているメイシアとストローには、アレハンドラが眉間にしわを寄せて指を添え、首を振っている姿が見えるようだった。
『……ウッジ。それは、そこにいる能力者の方に、あなたなら出来ると言われたのでしょう? 』
「……はぃ、」
『声が小さいですよ。』
「はいっ!」
『では、なにも問題はありません。あなたになら出来るのです。もっと自分の可能性を信じなさい。』
「でも、」
『あなたもですか! でも・だっては禁止だと、エドァルドにも言っていましたよね?』
「……ふぁぃ、」
ウッジは涙目になっていた。
『ウッジ。あなたには、わたくしが認めた力があります。あなたはまだそれに気が付いていないかもしれませんが、とても強い力です。十六夜の能力者の方も、それにお気づきになられたのでしょう。』
それを聞いていたカマディは頷くと、ウッジのところへ歩み寄り、光の帯を挟むようにウッジと向かい座った。
「そうさぁ。それはワシが保証する。ネーネーだったら、絶対出来るさぁ。厚かましいお願いだという事は百も承知している。
ヤシガ、今十六夜を救う方法はそれしかない。
ネーネーが、ここで結界を張り、ワシが急ぎ神降まで移動し、神降の御嶽から結界を張る。
ワシらくらいの力が無ければ、壊れてしまった御嶽からは結界を張れない。
無理を承知でお願いをしています。どうか……、やって給り。」
まっすぐに見つめるカマディの瞳はゆるが無かった。
「うぅ……、ウチに、出来るの……でしょうか、」
「出来るさぁ。もうネーネーが御嶽の岩の前に立った時から、ネーネーの力は感じていたさぁ。」
「それは、ワーも太鼓判を押すさぁ!」
と、ユウナが相づちを入れた。
「ユウナさんまで……。あ!でも、ほら、それだったら、ナギィさんが適任なんじゃ…… さっき、強いって話だったし…… 」
ウッジがナギィに助けを求めるような目線を送ったが、ナギィは「え?ワー?」となぜ自分に白羽の矢が?という顔をしただけだった。
「ナギィは、出来ない事も無いヤシガ、ちょっと力の種類が違うからよ……。それに、ナギィにはナギィにしかできない役目があるからよ。ワシが神降に行って、出来ない仕事もしてもらわないといけないさぁ。」
「う……、」
絶たれた希望に、ウッジの頭の上にもじゃもじゃが見えるようだった。
『話に割り込んでしまい、申し訳ございません。あなたさまは…… 』
アレハンドラが、カマディに声をかけた。
「この島を術により守る事を天加那志より仰せつかっている、カマディという者です。」
『ご紹介ありがとうございます。わたくしは、ペンタクルに祀られる太陽の神の神官、アレハンドラです。ウッジが、お世話になっております。』
「いやいや、ワシの方がお世話になっております。なかなか立派な力を持っているイナグングヮ。ワシの力も吹っ飛ばされそうになったさぁ。何より何より。」
ウッジにとっては、何とも言えない気持ちの時間になってしまった。
喉元も頭も掻き毟りたい、そんな気分だ。
『今のお話なのですが……、皆さまがいらっしゃる場所と、とある離れた場所で力を飛ばし合い、その力をぶつけて結界にする。という解釈でよろしいですか?』
「アレハンドラさん、さすが、呑み込みが早い……」
と、メイシアが驚き呟いた。
自分はナギィに作ってもらった黒糖のジオラマで説明してもらって、やっと理解したことだったからだ。
「端的に説明するとそういうことやっさぁ。」
『なるほど。……もし、ですが、カマディさまがそのカミウリのウタキという場所に行かなくて済むなら、状況はもっと好転するのでしょうか?」
「そうさやー……、ワシもメイシアやナギィと行動してやれるさぁ。まだ二人は知らないことが多いから……、ヤシガそれは、」
『承知いたしました。あぁ、お話を遮ってしまって申し訳ございません。わたくしも、焦ってしまい……。』
その場にいる全員が、アレハンドラの言葉で、頭の上にクエスチョンマークを出現させた。
『異国のわたくしが、ずうずうしく差出てしまい、非情に心苦しいのですが、そのカミウリという場所から結界を張る役目、わたしくに引き受けさせてください。』
アレハンドラは、いつもの滑舌の良いはっきりとした口調で言った。
しかし、そこにいる者がその言葉を理解するのに、時間を要した。
数秒の時間経過を待ち、理解が追いついた者たちから声が発せられた。
「えーーーーーーーーーーっ?!」




